父が十万くれた。

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あまり家族の話はしてこなかったし、意図的に避けていた。
僕にとって「家族」という価値観がよくわからなくて。別に自分の家のことだけじゃなくて。だけど、無条件で愛したい人たちもいるから、気分を害したくないなと思っていたのもある。でもちょっと話したいことができた。

実家はかなり貧乏だった。
とはいえ一人っ子だし共働きだから、ありがたいことに、ダンスを習ったり、映画や芝居を見る機会は得られた。ただ、ちょっと浮き世離れした人たちだし、お金を稼ぐことにプライオリティを置いていない人たちだったから、子どもの頃から貧乏を肌で感じていた。そしてそれは当時の僕には結構辛かった。ないものねだりでもあるかもしれないけど。

父は、木か人かで言うと、だいぶ木よりの存在。
あんまり父からとやかく言われたことも無いし、送り迎えとかたくさんお世話にはなったが、辞書に載っているような愛情を感じることは少なかった。それでも、適度な距離感が心地良かったし、面白い人だなと思っていた。

そんな父はあまり会社勤めや対人関係を深めることが得意ではなく、僕が生まれる前に会社を辞めてからは母の自営業の手伝いをしていた。だか、その商いも縮小し、今ではアルバイトをしている。
いくつかの怪我と病気が相まって、あまり遠出もできなくなったし、趣味だったバードウォッチングも写真のデータが事故で消えてしまったからはあまり行ってないらしい。
最近の空いている時間は、ずっとスプラトゥーンとポケモンGO、録画したアニメやドラマを見ている。老後のために運動とか脳トレしてよって思うけど、無責任に言えない。彼はもしかしたら、思っているよりも調子が悪いのかもしれない。

なんでこんな長々と彼を語っているかというと
私はなんでこの人が10万円をくれたかが理解できないのだ。
家も古いんだから、そのお金でお風呂を直したり、アイスが溶ける冷凍庫を買い直したりしてほしい。僕は、自分で手一杯なので仕送りもしていない。正直介護を考えると気が遠くなる。
父からプレゼントをもらったことは殆どないし、お小遣いをもらったこともなかった。そして彼にとって簡単に稼げるお金じゃないこともよく知っている。

なのになんで?

もしかして
この人もしかして、僕を応援していたのか?
彼なりに愛していたのか?
気にかけてくれていたのか?

まだ僕には理解できない。

親と子だから。みたいな事で済ませたくないし、木に尋ねても何も返ってこないだろう。
真意なんて特にないのかもしれない。
多分僕に何かを求めてるわけでもないと思う。

だから何。
この十万円はなんなんだ。
彼が働いた時間を分けてくれたこのお金は何なんだ。

僕にはまだわからない。