今更見た「WICKED」の話

Blog

いや、本当にごめんなさい。日本でも見れるんだし、観ておけよ。っていう必修科目なのは知ってたんですが、観たこと無かったんです。ウィキッド。2003年の初演から今なお愛され続けている、2000年代を代表するようなミュージカルの1つで、今年の11月には映画化もされます。先日予告映像が公開され、また話題になりました。

アリアナグランデよりなにより、Fire Islandのボウエン・ヤンが出てるのに喚起してます。

大枠は分かっていても細かいストーリーも知らなかったので、え、そうなるの~~!!と、今や珍しい側の観客として楽しみました。オズの魔法使いという著名な物語の裏話。という取っ掛かりも見事。絶対トニー賞(ミュージカル有名な賞がある)で作品賞受賞しているでしょう。と思ったら、その年は「Avenue Q」というパペットによるミュージカルが受賞しているんですね。流石にプロデューサーたちも驚いただろうな…。そして、作家も音楽家も意外とこの後活躍していないのが興味深い。

※ここから先はネタバレを含みます。あと僕は今、ミュージカル演出への素養を観に着けるために舞台を観ているところがあるので、基本的に「ここをこうしたらもっと良くなるんじゃ…」みたいな批判的な視点多くなります。でも作品が完成されているからこそ言えることというのは重々承知してます。

多分この作品を13歳くらいの頃に観ていたら「私のミュージカルの原点はこれ!」ってなったんだと思うのですが、その頃はRENTやCHICAGOにお熱だったし、影響を受けて羽ばたいていった作品たちも観た後だったので、よくできた作品だなと思ったけど、僕の人生の中では宝物になる作品というほどではありませんでした。

とはいえやっぱり、女性二人がメインロールの作品って少ないし、あらゆる世代が一緒に楽しみやすい作品だとは思いました。ただ僕はもう少し内向的な物語展開が好みなので、かかしやライオンたちの前日譚とかは入れ込むとしても、オズは舞台上に出さないで噂や伝聞だけで話を動かしてもらい、ヤギの先生ディラモンド教授とエルファバとか、グリンダとエルファバの対話とかに焦点当たらないかな~と感じました。あと、アンサンブルの俳優たちは素晴らしかったけど(王様と私にも出演されていたYuki Abeさんもいらして勝手に嬉しかった)ステージングや役割という点では、割と凡庸な演出をされているなと思った。なんだろう。

確実にWickedから影響を受けたであろうアナ雪の舞台を観たときに、エルサとアナがすごいイチャイチャしてて、映画より二人の愛が強調されたなと喜んでいたのですが、この作品でもお邪魔虫フィエロという恋のお相手が登場するものの、今回僕が観た限りでは彼との恋模様はわりとあっさりしていて、多分時代と共に雰囲気が変わっていった演出なんだろうなと想像。

かなり気になったのは、エルファバの妹・ネッサローズの描き方。2004年時点でもDisability Studies Quarterlyにて、障害者のステレオタイプ化を増長させてると批判されていたが「歩けない障害が治ることがドラマチックに演出される」ことは、マジでどうなんだろうと見つめていた。せめて歩くシーンが無ければ、The Little Big Thingsのように車椅子を使う俳優の活躍の場にもなったな。とも考えたけど、20年も前ですから、特に当時は大きな意義もあったと思う。でもネッサローズが姉から離れて自立したい心とか、もっと丁寧に描かれるシーンも欲しかったなとかなんとか…もしくはもっとカリスマ性のあるヴィランに振り切るか…いや、カリスマ性があるかどうかは、僕の好みの問題もあるな…

このPopularで、エルファバの髪がちょっとベタベタするという演出が大好きだったんだけど、ありませんでした。パーティーだからいっぱいオイル塗っちゃったのかなみたいな可愛さが好き。

それはそうと、Defying Gravityでエルファバが飛ばなかったり(ほんとに何故。なんかここ一週間くらい飛んで無いらしい。でも冒頭のグリンダは飛んでるから不思議)喋りながら観る人とか、ガサガサポテチ食べる人とか、盗撮しちゃう人とか(流石に注意されてた)いて、めちゃくちゃ治安が悪いのも興味深かったです。二階席だったのもあると思うけど。ロングランはいいこともたくさんあるけど、果たして同じ舞台を上演し続けることが、俳優やクリエイティブチームにとって本当に健康かはちょっと疑問が残る(パンデミック明けから舞台でのマナーが更に悪化したと言う専門家もいる。統計ではないけど)

とはいえ、映画もあるし、あと2~3年は続くでしょう。映画版のアレンジも楽しみです。プロジェクションマッピングを大胆に使って壮大になったブラジル版も気になってる。絶対not for meだけど。本当にバランスの良い作品だなと思うので、キャストの演じ方とかに注目して何度も観てみれば、より味わい深いだろうなと思う。