食べる側でいさせて

ピザとお味噌汁 Blog

ロンドンでのアルバイト先では、ウエイターやフロントスタッフの誰かが、朝ごはんを作るルーティンがある。先日、僕の番が回ってきて13人分の朝ご飯を作った。慣れていないキッチンで、それぞれの食の好みも分からず何とかこしらえた「ベーコン・パン・ゆで卵・ブロッコリーとアボカドのサラダ(ヴィーガン用にそれぞれ分けて提供)」を目の前にしたとき、僕は料理を提供するという事を恐れ、気が遠くなるほどのストレスを感じるんだと知った。

10年ほど料理を続けてきた。
冷蔵庫の中身やお店の特売から献立を考えることができるし、予算を抑えつつ栄養があり、満足感のある食事を作ることができる。ルームシェアが長かったので、手料理をふるまうことも多かったし、友達を招いてタコライスパーティーをしたこともある。けれど僕は未だに、スケールや計量カップを使って「レシピ通りに」作らないと安心できない。美味しくないものが出来上がって食べ物を粗末にしてしまう可能性、食べた人が気に入らなかったら…と考えると、震えてしまう。

僕の作る料理は、お洒落ではなくとも「おいしい」の部類に入ると思うし、なんなら「料理は得意」と言ったこともある。でもあの朝ごはんを作った時に、料理はとても苦手な作業なんだと気が付いた。

すごく良かったと思う。僕は割りと色々なことを「できる」と過信して、実際できるところまで努力をしてしまうから、苦手なんだ。と諦められたのは良かった。自分の信条にそんなに関係もないし。ちょっと得意だとすら思っていたから、エキサイティングさとか、彩りの良さとか、応用レベルまで手を出していたけど、これから人に料理を作る機会があったら、食べられるだろう料理くらいしか作れませんよ、と前置きしよう。

自分一人のために作るロンドンごはんは、選択肢が少ない分、楽ちん。レタスやらトマトやらほうれん草やらで、サラダを作って、オートミールに冷凍フルーツと牛乳をぶち込むか、全粒粉のパンにフィラデルフィアのクリームチーズ(こっちでは安い)を塗って食べる。朝ごはんみたいなご飯をいつでも。日本食が恋しくなったら、お味噌汁か、何かを醤油の炒めもの、時間があればパスタや簡単な煮込み料理を作る。何ならこないだピザにお味噌汁を合わせた。なーんだ。僕にはこれでいいのか。てかそもそも手作業全般が苦手じゃん

まんべんなくいろんな献立を考えたり、美味しそうに写真を撮るのは、僕の責務ではなかったみたい。
とても肩の力が抜けた。しかも、10年間必死に向き合ってきたので、料理してくれる人への感謝と、味への造詣の深さ、そしてそれを表現する術は整っている。

ということで、反応の薄い人や、食事を残す人に作るのに飽きた、そこのあなた。
僕に食べさせてください。とても辛いものと、スイカとメロン以外は大体好きです。それに、美味しく食べるために間食は我慢しますよん。