5月13日の火曜日、ロンドンにあるクィアなクラブ「THE DIVINE」にてドラァグクイーン・Showgirl(ショーガール)がデビューを果たしました。マジで?
僕自信が当初勘違いしてたので、念のためですが、「ドラァグクイーン」は「薬漬け女王(Drug Queen)」ではなく「引き摺るほどのドレスを着た女王(Drag Queen)」です(諸説あり)。日本では単に女装と呼ばれたりもしますが、ドラァグキングという男性的なドラァグもいたり。女性のドラァグもあったりするので、超多様です。
クラブに侵入するため、ルポールのイベントに行くため、メイクアップをしてドレスを着て出掛けたことはあるけど、どこでドラァグを始めればいいのか、お酒強いわけでもないし、そもそも日本で俳優活動するときにドラァグやってるって大丈夫なのか?みたいな懸念から(もちろん、ドリアンロロブリジータさんやエスムラルダさんがいらっしゃいますが、若手俳優界の一員としてはなかなか思い悩んだ)ドレスもメイク用品も箱に閉まったままだった。

とはいえ、ドラァグクイーンのような装いの魔津尾や、1月に出演したロンドンでの朗読公演では、オープンリーゲイの劇団フライングステージさんの戯曲「美女と野獣」のグロリアを演じる機会にも恵まれ、ドラァグのスキル磨いたり、パフォーマンスしたいなと思うように。
そんな中見つけたのが、ドラァグショー「The Molting Season」に出演できるオーディション。名前すら決めていなかったので、友達にアドバイスをもらいながら、名前を「Showgirl」にする。(尚吾を英語っぽく読むと…そう、駄洒落)「どんなパフォーマンスを考えていますか?深夜2時に考えついた生焼けのアイディアでもOK」と質問されたので、神田沙也加さんのマイ・フェア・レディの演技大好きだったなとか、イライザが英語の発音を磨かなきゃならないなら、僕なんてもっとでは?みたいなあたりから、「東京からロンドンに来たShowgirlが住む家を探しながら英語を勉強するMy Fair Ladyなミュージカルパフォーマンス」という概要をでっちあげたところ、チャンスを勝ち取る。
今後どれくらいドラァグをするか分からないし、お金もないから、つけまつげとスカート、ヒール、写真撮影用の着物(日本に戻ったらいくらでもあるのに…!)だけチャリティーショップやフリマアプリで購入して、ミシェル・ヴィサージュに怒られそうなウィッグ無しのドラァグの準備を進める。
台本を書くのがとにかく大変で、面白いかどうかの以前に、意味わかる?みたいな不安が募って、リハ前までは絶望。本番前日にリハーサルがあったので、全力で挑んだら思ったよりウケて、パフォーマンスのアドバイスをくれるメンターからは、「他の人にはびっしりメモを書いたけど、君のパフォーマンスはそういうことじゃないと思ってペンを置いて楽しんじゃった」と言ってもらい自信がつく。いや、アドバイスはくれ。
ロンドンに居ると、ほとんど誰も僕の経歴を知らないし、セリフの解釈や演技云々の以前の問題が山積みだし、チャンスもなかなか掴めないから、明確な自信は失って、漠然とした謎の自信だけで突き進んでいたんだけど、考えてみたら、ステージに立つ、観客の呼吸を掴む、パフォーマンスを完遂する。みたいなことは何十年もプロフェッショナルとしてやってきたんだよね。
当日は客席が驚くほど暖かく、よく笑ってもらえたし、「リップシンクだと思ったら生歌で何が起こってるの⁉︎ってなった!」とか移民を削減すると発表した政府への皮肉が、「最高のパンチラインだった」言ってもらえて、とにかく安心した。安心したので、もっと皮肉を効かせたいなとか、次にやるなら何のミュージカルかな。とか、考え始めた。

今はとにかくいろんな方向に種を蒔いている。ミュージカルの演出するぞ!!と心に決めつつ、俳優としても、ちみちみとミュージカルやドラマのオーディションは受け続け、先述した「美女と野獣」の公演を行うために翻訳家とプロデュースを進め、日本で公演するミュージカルの脚本も書いて、コラムやら何やら書かせてもらえないかなーとブログを執筆しつつ、今度はドラァグクイーンとしてのラインナップも増やせたら、が加わった。どれも安定した道じゃないし、何の保証もないけど、とにかくどうにか舞台と関わりながら、猫と共に食べていけるほどの収入を得られるようになれたらな。と願ってやまない日々。
とか言ってたら2回目のリーディング公演が決まりました。1枚スワイプしてね。
パフォーマンスは最高に楽しかったのに、ちょっと燃え尽きていた今日この頃。でも、この記事を書いているうちに、きついけど、アーティストの道なんて有史以来ずっときついんだから、それを当たり前と思って楽しもうと、思えてきた。よかったよかった。いつか日本でもドラァグパフォーマンスできますよーに!