ロンドン演劇修行:New Earth Academy

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無料で受講できる演技WSに選抜され、ショーケースに出演しました。New Earthは、UK在住の東・東南アジアの舞台人たちを支え、活動を発展させることを目的とし、My Neighbor TotoroのAssociate Directorを務めたAilin Conantが新しい芸術監督になるなど、注目を集める団体です。

演劇人はもちろん、アジア人表象の一つの形としても、色んな方に興味を持っていただけたらと、WSの様子を紹介します。

ワークショップの概要

僕が受けたのは「Performers Academy Plus London」というコースで、他にも、照明や舞台監督などのクリエイティブ向けの「Off Stage Academy Plus」、脚本家向けの「Writers Academy Plus」などのコースがあります。

まずセルフテープを提出する必要があり、今年は食に関する一人芝居が課題でした。Veganの友達ができたときに、あれ、海藻ってOKだったか、と調べたことを思い出し、短いシーンを作りました。

実際のセルフテープ(日本語字幕もあります)

パフォーマー向けのコースは、一週間のAcademyと、二週間のPlusがあり、前者は経験に関係なく誰でも参加でき、後者は演劇学校卒業後や、これからキャリアを伸ばしていきたい人向けのコースとされています。Plusの場合は、セルフテープ専攻の後にWSオーディションがあり、そこでも選出される必要があります。

WSオーディションは、自己紹介やムーブメントワーク(空間が均等になるように歩き周ったり、ペアになって押し引きするような馴染みのあるもの)と事前に渡された戯曲を使ってのシーンワークがあり、もっといろんなトライがしたいなと思える気持ちの良いWSでした。

‘familiarize yourself with the material(戯曲に慣れておいてください)’とメールに書いてあって、「でも別に暗記はしなくていいってことだよね…?」みたいな会話を始まる前にしました。何度か読みつつ、分からない意味とかは調べて、手持ち台本でのアクティングに支障がない程度に。という雰囲気でしたが、場所によって違うんだろうな。

スケジュールと内容

9 – 10 AM:Warm-up

ムーブメントのAmi Nagano(Photos: Zhiyue Hu)

今日の気分をムーブメントで表わしたり、呼吸ベースのストレッチなど

10 – 11 AM:Actor’s Movement

身体の構造から発想を得て動いたり、ペアでのムーブメントなど。魅せるためのものというよりは、身体感覚と表現を繋げるようなインプロのワークが多め。Laban Effortの「重い・軽い(heavy-light)」「突然・継続(sudden-sustain)」「意図的・非意図的(direct-indirect)」を用いた動きの発掘。

11 – 12 AM:Voice

戯曲を読むときの発声法。というよりは、いかにリラックスして声を出すか、どうやってウォーミングアップをするか、身体と声を繋げる練習やシアターゲームなど。

ボトルにお水を入れて喉に負担を掛けずにストローでボコボコするウォームアップがお気に入りに。

これは進研ゼミでやったやつ!って再確認だけど、絶対的な演出家がいるというよりはクリエイティブチームも分業して、自分の仕事じゃないところには手を出さないという基礎があるのは、やはり日本と異なる。

12 – 1 PM:Lunch Time Talk

インティマシーと俳優の安全についての講義(Photos: Zhiyue Hu)

業界の方や俳優として活動しながらも創作活動もしている人たちなどによる講義。「俳優一本で活動する」という目標すらあまり聞かないこともあって、セカンドキャリアについて語る方が多かった。

自己紹介の時に自分の代名詞を言うのが当たり前になったように、インティマシーコーディネーターによる講義以降、ペアワークをするときに「ここはYES、ここはNO」と言い合う習慣が確立されて、安心だし便利だなと感じた。

1 – 2 PM:Lunch Break

そろそろお気づきかもしれないが、とにかく持っている服が少ない。

よくテラスに集まってランチをしてました。WSについての詳細メールに、NEW EARTHがサステイナビリティを如何に重要視しているかの記載があって、水筒やランチの持参や、できる限りリユースできる素材の利用が推奨されていたことが印象的。そして同意。

2 – 3 PM:Acting and Attention

Photos: Zhiyue Hu

今回のテーマの一つが「アンサンブルワーク」だったので、演技と言えど身体表現ベース。自分の意識や重心を身体のどのパーツに置くかによって、歩き方や感情が変化することを捉えようとしたり、ペアの相手による動きを真似して覚えて、ペアが舞台上から消えても真似し続けるワークなど。

普段かかとから足をついている歩き方を、つま先からつく歩き方に変えるだけで、身体からパーソナリティが変化したりするので、普段の演技にも取り入れたいなと思いつつ、パフォーマンス用の美しい型もあるから、実際の現場では忘れがち。逆に演出家の指示として面白いのかも。

3 – 5 PM:Acting and Text

後述のムーブと台詞のワーク Photos: Zhiyue Hu

ジャック・ルコックのSEVEN TENSION(最小限のエネルギー~興味津々~爆発的~硬直)を用いた即興や、Statusというそれぞれに階級が振り分けられてのシーン作りなど。

戯曲の途中から即興に移り、もう一度戯曲に戻ってくるというワークがあり、英語で即興なんてできるのかと恐る恐る試してみたけど、出てくる言葉がどんなにシンプルだったとしても、間や言い方、表情や身体表現、相手との関係性などで、いくらでも密度の濃いもの出来るんだと実感。とはいえ、アクセントなどによってバックグラウンドやカルチャーを語るのも特に英語圏では大事なスキルなので、課題は山積み。

ペアでムーブメントを作る課題があり、完成したら、「この二人用の台詞を、ムーブメントをつづけながら言ってください」という指示があって、これまでの試みとは全く異なるシーンが出来上がった。その後もそれを応用して、コンタクト(身体の接触)があったムーブを、距離を置いて行うことによって、空虚な感覚を生み出すなど、コンテンポラリーではあるが、観客の想像力が広がって感覚的に何かを掴めるようなシーンに。創作の過程含めて面白い。みたいな表現をどうやったら観客と共有できるのかは、最近の課題。

何故か演出家みたいな立ち位置にいる

ここまでは一週目のスケジュールで、ショーケース用の脚本が完成し、役が振り分けられた二週目はウォームアップは残りつつ、ガッツリとシーン稽古とリハーサルに。自分が出演していないシーンは別に見学する必要もなく、なんならボイスコーチとムーブメントコーチによる30分の個人レッスンなんていう贅沢な時間も。発音矯正や第二言語での演技に慣れる練習を実施。

ショーケース「cousins」

Photo: Harry Elletson

アンサンブルシーンもあったので正直かなり切羽詰まった本番でしたが、UKに来てから1年経つ前に舞台に出演できたことが感慨深かったです。ナウミュに出演した時に、正直これが最後の舞台出演になるかもと覚悟を決めていましたが、5歳のころから毎年1作品はステージに出演し続けている、恵まれたライフワークが途切れなかったのは、素直に嬉しかったです。

ショーケースは、NEW EARTHのメンバーでありドラマターグを務めたYuyu Wangによる書き下ろし戯曲「cousins(いとこたち)」で、食にまつわる物語で繋がる一時間のオムニバス。本当の家族ではないけど、どこか君たちを「cousins」だと思っているよ。という東南アジア・東アジアのコミュニティを祝福するものでもありました。僕は「アジア人なのに魚嫌い」を言い出せないクィアな子や、母を亡くしてから暫く会っていなかった父と再会する息子の役を演じました。

Photo: Harry Elletson

ゲネプロの際に舞台写真を撮影してもらったんですが、写真家がガンガン舞台上に入ってきて超至近距離で撮影したりするので、驚きました。UKの舞台写真好きなんですが、確かにこうやらないと撮れない画角あるもんな…と納得。

感想

Photo: Harry Elletson

演出家の一人であるRebeca Pereira-Gonzalezと、打ち上げで演劇語りをしてたら、「ミュージカルで活躍できる身体表現を持っているのは分かるけど、繊細な芝居や素直な身体性が素晴らしいから、そういう活動もして欲しい。本当に魅力的な俳優だと思う。ただの個人的な意見だから何の責任も持てないけど」と言われ、励みになりました。自己肯定感は高いのですが、それはそうと力不足やチャンス獲得の難しさも実感していたので、とても。

毎年、変化し続けていますし、オリジナル脚本で上演したのは今回が初めてとのことなので、あくまで一つの参考に…という経験談ですが、こんなに充実したコースを無料で受けられることなんて滅多にないと思うので、気になった方は是非NEW EARTHの情報を調べてみてください。来年にもまた募集を予定しているそうです。

また、こんなところから出会いがあったり、俳優が学んだり、何かの作品が生まれたりするんですよ。と、ご紹介できていたら幸いです。

さて。これで堂々と「ロンドンでの舞台出演経験のある俳優」と経歴に書けるぞー。やったね。

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