1年経って

どれくらいロンドンに居るのと聞かれ ‘just over a year’ と答えるたびに、その割には目立った成果無くない?とか、英語下手だなって思われたらどうしよう。なんて脳裏によぎりつつ、まあ私は私の時間を生きているので…と心を落ち着かせています。1年前に渡英前に不安に感じていたことを記していたので、振り返りつつ答え合わせなんぞしようと思います。

東京で一緒に暮らしていた猫のうらと離れているのは、やっぱりきつくて一時帰国の時は再開に涙したし、ご飯あげる時の遊びを覚えててくれたのには泣いた、食意地が果てしないと言えばそれまでだけど。彼とはフィジカルな関係を築いているので、ビデオ通話などは成立しないし。たまにクッションを抱いて寝てます。でも、引っ越しが多かったこともあって、無理に連れてこなくて良かったなとは思っています。猫への愛で記事が終わってしまいそうだから、次、次。

不安なことは色々あったようだけど、今見返すと「慣れた」「趣向が変わった」ものが殆ど。そもそもあんまり物を買ったりレストランで食事をしようと思わないし、こっちのバイトをしているから、物価は高いなと思いつつ、なんとかなっている。移民としての、非ネイティブとしての生活はそりゃ大変だけど、それは自分の選択だし、その大変さこそが大きな経験だよなと感じています。

ランキングに無くて、てこずったのは家探し。生活の拠点が揺らぐのは相当なストレスだし、イギリスはテナントの権利が弱いので難易度が高い。ただこれは、日本において、海外から来た人や、会社勤めをしていない人、同性カップルが賃貸の審査に通りづらいという事実も噛み締めておきたい。

仕事を獲得しやすいのは日本だと思う。それはありがたいことに日本で色々活動を積めたから、そしてそれを評価してくれる環境がある特権でもある。例えば演劇団体の事務や、照明家のアシスタントとか、俳優や創作活動として演劇に関わり続けながら手に職を。というのは、こちらの俳優のロールモデルだし、羨ましいんだけど、確固たる経験もなければ、言語力も無いので、なかなか厳しそうでもある。というか、まず応募する勇気がちょっとでない。いや、そろそろ応募してみればいいのか。


そして聞かれるのは、この後、ロンドンに残りたいか東京に帰りたいか。現実的な指標で言えば、食べていけるだけの仕事があって、創作し続けられる国に住みたいけど、それがどちらなのかは分からない。確かに日本は政府による文化支出額がイギリスや韓国と比べると低いし、ミュージカルを育てるシステムがあるかと言われたら難しいなと思うけど、イギリスで助成金を得るのも、ユーモアのセンスを飛び越えて創作するのももちろん難しい。

安い席を選べば気軽に演劇に行けることや、ドラフトでもとりあえず発表する機会があることには、助かってる。でも、実は日本で創作する機会にお誘いいただいていたり、これを日本で創りたいなーと思っている(ただ思っている)作品もあったりするので、ロンドンで学んだことを活かして帰るのも楽しみ。なので超半々です。どっちも好きで、どっちも難しい。できたらどっちも。でもそれがVISA的に難しいのも分かってる。

もし日本に帰るとしたら、多少洒落臭くても、ロンドン帰りのブランドを掲げて、「あいつ変わってんな…でもイギリス帰りだからしかたないか。まあ悪い奴じゃないし」って思ってもらう作戦を練っています。なんかその、頑張って日本社会に馴染もうとしたりもしたんですが、それより分かりやすく社会からちょっと浮き出ておくことによって、余計なことはスルーしてもらい、仕事っぷりとかにフォーカスしてもらえたらなって。

こうやって思い返すと、随分地に足がついたなと思う。落ち込むことも苛つくこともあるけど、なるようにしかならないのを理解できたし、こっちでできた友達とのおしゃべりや、日本に住む友達とのビデオ通話にもたくさん助けられている。東京に帰ってもまたシェアハウスしたいな。そんな気持ちで10℃の街に繰り出します。

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