Blog

  • そもそもなんでロンドン

    そもそもなんでロンドン

    「What brings you to London?」とたくさん聞かれる。直訳すると「何があなたをロンドンに連れてきたの?」みたいになるんだけど、素直に「どうしてロンドンに来たの?」と訳すと、自分の中に答えがある感じになるのに、英語そのままの意味だと、目的が自分の外側にあって、それに導かれた。みたいな印象があって、ちょっと好きなフレーズ。

    たぶん「そもそも」を10回くらい用いらないと語りきれないほどだけど、はじめて海外に行ったのは18歳の頃のニューヨークで、その時はマジで衝動で行ったので荷物検査の時に初めて、あれ、飛行機乗るの初めてだし、海外も初めてで一人旅ってヤバくない?!と、号泣したのを覚えています。でもその後はケロッと、ダンスのレッスンを受けたり、ミュージカルを観たり、現地の公園でパフォーマンスをしたりした時に「あれ、ここで生きていけるな」と感じて、じゃあここにはいつでも戻ってくればいいから日本で頑張ろう。と、謎の自信をつけて帰ってきました。

    尊敬している友人がロンドンの大学に通っていたので遊びに行った10年前が初めての英国。ちょうどその頃もポンドが高かったのもあって、何するのも高いし、ニューヨークほどオープンじゃない感じがして、実はロンドン自体に強い思入れはありませんでした。そこでみたPunch Drunkの「The Drowned Man」に心を奪われたり、なんとなく人との距離に一線がある雰囲気の居心地の良さは覚えています。


    コロナ禍あたりから、漠然と海外でも活動してみたいなと思って、YMS(ロンドンのワーホリビザ)やDiversity Visa(アメリカのグリーンカード)に応募しては外れたり、ちまちまと英語を学んだりしていました。端的に言えば、そのYMSがナウミュの制作でくそ忙しい2023年1月20日に当選しちゃったから、ここにいます。英語の勉強もしたいし来年が良かった…とか思っても、次いつ当たるか分からないので(2024年から先着順になりましたが)、大急ぎで事務所に相談したり、英語を勉強したりして準備を進めました。

    こうやって振り返ると、後から理由をつけているかも。2022年くらいからガッツリと人生の新たな章が始まったなという感覚があって、それについてゆっくり考えたいこと、ロンドンの演劇界が割と好きだから、その近くで流れも含めて学びたいなという気持ち、あと、こんな冒険はそろそろしづらくなってくるだろうなという勘もあります。え、結局、勘じゃん。だって1994年4月20日11時52分生まれの牡羊座で月星座は獅子座のENFJなんだもん~~!(各自、占いよろしくお願いします)

    さてさて、もう4カ月も経ったので今度は「お休みの日は何してるの?」と聞かれるように。劇場か、バイト(Survival jobというフレーズも好き)か、家で読書、友達と話す。ほぼそれだけ。往復1万円でスペインとか行けるのにロンドンから出てもないし、大英博物館すら行ってない。パンデミック前は毎日どこかに出かけないと気が済まない人だったのに、今では一日引きこもれる日は小躍りしちゃう。超贅沢って思う。

    この日々が、休息になるのか、成長になるのか、進歩になるのか、まあそれは振り返った時に好きに選べばいいと思うけど、多分「ロンドンに来たから」だけじゃない自由と、ちょっとタブララサな精神を噛み締めています。

    これが1そもそも。です。

    じゃあ、あなたは何に導かれてここに?

  • 今更見た「WICKED」の話

    今更見た「WICKED」の話

    いや、本当にごめんなさい。日本でも見れるんだし、観ておけよ。っていう必修科目なのは知ってたんですが、観たこと無かったんです。ウィキッド。2003年の初演から今なお愛され続けている、2000年代を代表するようなミュージカルの1つで、今年の11月には映画化もされます。先日予告映像が公開され、また話題になりました。

    アリアナグランデよりなにより、Fire Islandのボウエン・ヤンが出てるのに喚起してます。

    大枠は分かっていても細かいストーリーも知らなかったので、え、そうなるの~~!!と、今や珍しい側の観客として楽しみました。オズの魔法使いという著名な物語の裏話。という取っ掛かりも見事。絶対トニー賞(ミュージカル有名な賞がある)で作品賞受賞しているでしょう。と思ったら、その年は「Avenue Q」というパペットによるミュージカルが受賞しているんですね。流石にプロデューサーたちも驚いただろうな…。そして、作家も音楽家も意外とこの後活躍していないのが興味深い。

    ※ここから先はネタバレを含みます。あと僕は今、ミュージカル演出への素養を観に着けるために舞台を観ているところがあるので、基本的に「ここをこうしたらもっと良くなるんじゃ…」みたいな批判的な視点多くなります。でも作品が完成されているからこそ言えることというのは重々承知してます。

    ファーストインプレッション

    多分この作品を13歳くらいの頃に観ていたら「私のミュージカルの原点はこれ!」ってなったんだと思うのですが、その頃はRENTやCHICAGOにお熱だったし、影響を受けて羽ばたいていった作品たちも観た後だったので、よくできた作品だなと思ったけど、僕の人生の中では宝物になる作品というほどではありませんでした。

    とはいえやっぱり、女性二人がメインロールの作品って少ないし、あらゆる世代が一緒に楽しみやすい作品だとは思いました。ただ僕はもう少し内向的な物語展開が好みなので、かかしやライオンたちの前日譚とかは入れ込むとしても、オズは舞台上に出さないで噂や伝聞だけで話を動かしてもらい、ヤギの先生ディラモンド教授とエルファバとか、グリンダとエルファバの対話とかに焦点当たらないかな~と感じました。あと、アンサンブルの俳優たちは素晴らしかったけど(王様と私にも出演されていたYuki Abeさんもいらして勝手に嬉しかった)ステージングや役割という点では、割と凡庸な演出をされているなと思った。なんだろう。

    確実にWickedから影響を受けたであろうアナ雪の舞台を観たときに、エルサとアナがすごいイチャイチャしてて、映画より二人の愛が強調されたなと喜んでいたのですが、この作品でもお邪魔虫フィエロという恋のお相手が登場するものの、今回僕が観た限りでは彼との恋模様はわりとあっさりしていて、多分時代と共に雰囲気が変わっていった演出なんだろうなと想像。

    気になった点

    かなり気になったのは、エルファバの妹・ネッサローズの描き方。2004年時点でもDisability Studies Quarterlyにて、障害者のステレオタイプ化を増長させてると批判されていたが「歩けない障害が治ることがドラマチックに演出される」ことは、マジでどうなんだろうと見つめていた。せめて歩くシーンが無ければ、The Little Big Thingsのように車椅子を使う俳優の活躍の場にもなったな。とも考えたけど、20年も前ですから、特に当時は大きな意義もあったと思う。でもネッサローズが姉から離れて自立したい心とか、もっと丁寧に描かれるシーンも欲しかったなとかなんとか…もしくはもっとカリスマ性のあるヴィランに振り切るか…いや、カリスマ性があるかどうかは、僕の好みの問題もあるな…

    このPopularで、エルファバの髪がちょっとベタベタするという演出が大好きだったんだけど、ありませんでした。パーティーだからいっぱいオイル塗っちゃったのかなみたいな可愛さが好き。

    ロングランで上演しつづけること

    それはそうと、Defying Gravityでエルファバが飛ばなかったり(ほんとに何故。なんかここ一週間くらい飛んで無いらしい。でも冒頭のグリンダは飛んでるから不思議)喋りながら観る人とか、ガサガサポテチ食べる人とか、盗撮しちゃう人とか(流石に注意されてた)いて、めちゃくちゃ治安が悪いのも興味深かったです。二階席だったのもあると思うけど。ロングランはいいこともたくさんあるけど、果たして同じ舞台を上演し続けることが、俳優やクリエイティブチームにとって本当に健康かはちょっと疑問が残る(パンデミック明けから舞台でのマナーが更に悪化したと言う専門家もいる。統計ではないけど)

    とはいえ、映画もあるし、あと2~3年は続くでしょう。映画版のアレンジも楽しみです。プロジェクションマッピングを大胆に使って壮大になったブラジル版も気になってる。絶対not for meだけど。本当にバランスの良い作品だなと思うので、キャストの演じ方とかに注目して何度も観てみれば、より味わい深いだろうなと思う。

  • 性別移行する登場人物の一人称をどのように翻訳するか

    性別移行する登場人物の一人称をどのように翻訳するか

     「I」や「我」といった統一された一人称を用いる言語から、「私」「僕」「俺」など、複数の選択肢が存在する言語に翻訳をするのは、大きな壁があると実感した。「家族の配列」は、父の訃報を受けて葬儀に参列した三姉弟が、異母姉妹と初めて出会い、交流を重ねる中で、家族や愛とは何かを、現代台湾の日常を通じて映し出す第19回台北文学賞優等賞受賞作品だ。

     今回のWS中に議論の場に上がったのは末っ子、佳華(ジアホア)の一人称。母方の姓を名乗る事にこだわり、姉とジェンダーアイデンティティを巡って口論し、マイヨガマットを持つ佳華に、どんな一人称を訳すのが適当だろうか。どのような演出で演じるか、そして周りがどう反応するかによっても言葉の意味は変化するが、戯曲での一人称付与は一つの重大なメッセージになり得る。

     本WS用の翻訳では、3場までは「自分」が、豊胸手術中のために不在の4場を挟み、5場からは「私」が用いられた。また、最初の頃は「弟」や「息子」と呼ばれていたが、5場では長女・佳恵(ジアホエ)が「ホワホワ(佳華のニックネーム)は自分を女の子だと思ってる。いや、ホワホワは自分を女だと認識している」と言い直すなど、周囲の接し方にも変化がある。既に最新稿では書き換えられているそうだが、1場に一箇所だけ「僕」と自分を呼称する台詞があり、そこを発端として一人称についての議論が広がった。手術をしてスカートを履くようになってから「私」と自分を呼べるようになることへの祝福、一人称を言い直す可能性などの意見が出た。

     時間経過が多い本戯曲の特性として、佳華が姉へカミングアウトしようとする場面から、姉たちに見守られながら手術を受け、葬儀に異母姉妹の母から送られた黒い洋装を着て参加するまでの間が描かれない。観客は行間を読み取りながら想像を膨らませることができるが、昨今のトランスジェンダーを取り巻く差別的発言の多さなどから、誤解を招く表象にならないかと私は懸念する。

     トランスジェンダーたちが経験する性別移行とは、戸籍や一人称の変更など「長い時間をかけて、たくさんの困難と向き合いながら生きてゆく性別を変えてゆく」 1とされる。ジェンダーアイデンティティを自覚し認めてゆく精神的な性別移行、髪型や衣服の変更(ト書きで明確になるのは5場)、家族へのカミングアウト(3場)や戸籍の変更(5場で言及される)の社会的な性別移行、そして医学的な性別移行(4場)と、本戯曲内でも多くの経緯が描かれる。5場から装いを著しく変化させたり、言葉遣いを変えたりすることによって、弟をサポートしようとする姉たちに囲まれて、ようやく「私」という一人称を使えるようになったと描写できる一方で、手術をしたから性別移行が完了したとするような演出になりかねないと私は考える。また、4場に出演しない佳華役の俳優は衣装替えやメイクアップをする時間が与えられている。

     トランスジェンダーが登場する戯曲とその翻訳において、当事者の実情を踏まえて、偏見に同調することを避けるなら、序盤から最後まで一人称を統一するか、「自分」「私」「僕」などの一人称を、話す相手や佳華の感情を鑑みて混ざり合わせるプランも提案したい。5場で容姿の変化が演出されたとしても、自身のジェンダーアイデンティティと向き合い揺らぐ様、もしくは意思をもった選択を描くことが期待できるからだ。性的マイノリティが登場する本戯曲の上演は、多かれ少なかれ社会での認識に影響を与えるからである。

     2024年現在の台湾では内政部の布告に従い、性別要件の変更に生殖器の切除が求められている2。本戯曲が発表された2016年から現在までに、司法院最高行政裁判所(SAC)が、上記の布告は「身体的権利、医療的権利、人間の尊厳、および人格の権利を著しく侵害する」3と明言した、手術を伴わない戸籍変更を求めたトランス女性が裁判で勝訴する4などの進歩があるも、法整備には至っていない。戯曲執筆当時の2016年から月日が経っても、まだ法整備にはいたらないであろうという李屏瑤による予測は的中した。しかし、日本でも最高裁が性別変更の手術要件は憲法違反とした5ことも踏まえて、台湾・日本でトランスジェンダーの生活に寄り添った法整備が進むことを私は期待する。

     初読の際には、共感できない戯曲だと感じていたが、今回のWSを通じて、台湾の文化的背景や登場人物それぞれの異なる思惑、変化など、読み解くほどに新たな発見があり、心を揺さぶられた。この作品を上演するにあたり、どのように観客を引き込むのか、いかに作品が創り上げられるのか、とても興味深い。現代の台湾をそのまま描こうとするのか、さらに未来を予測して描くのか、戯曲の外側に広がる歴史や実情を踏まえた上で、佳華が描かれることを私は願う。

    参考文献

    1. 周司あきら, and 高井ゆと里. トランスジェンダー入門. 集英社, 2023. ↩︎
    2. Scherpe, Jens M., ed. The Legal Status of Transsexual and Transgender Persons. Intersentia, 2015. https://www.cambridge.org/core/books/legal-status-of-transsexual-and-transgender-persons/5002EE29EDCD4BEE8123FC899C17AA0D ↩︎
    3. 最高行政法院, ed. “最高行政法院110年度上字第558號上訴人OOO與被上訴人高雄市鳳山戶政事務所間有關戶籍變更登記事件新聞稿.” 司法院 Judicial Yuan, September 21, 2023. https://www.judicial.gov.tw/tw/cp-1888-947361-0afda-1.html. ↩︎
    4. 社運 發電機, ed. “【新聞稿】跨性別者小E 性別變更登記成功.” 公民行動 影音紀錄資料庫, November 19, 2021. https://https://www.civilmedia.tw/archives/106812www.judicial.gov.tw/tw/cp-1888-947361-0afda-1.html. ↩︎
    5. 東京新聞, ed. “性別変更の「手術要件」は違憲  最高裁が初判断 生殖能力なくす性同一性障害特例法の規定【裁判官一覧】.” 東京新聞 TOKYO Web, October 25, 2023. https://www.tokyo-np.co.jp/article/285891. ↩︎
  • なまえの移り変わり

    なまえの移り変わり

    「真実の名を教えてくれ」と問われたときに、どの名前を答えよう。

    子役時代から俳優を続けてきたことや、苗字の珍しさと個性(特によく羽ばたいていたダンサー期)との整合性がとれていたことから、俳優としても本名で活動していた。たとえ画数があんまりよくなくても。

    初めてあだ名を作ったのは6歳の頃に趣味のHPを作った時、ネットリテラシーがきちんとしていたので、”ハンドルネーム”を作り、なんかそれこそ「ゆあてゃ」みたいな日本語離れした音だったので、割と気に入って、高校時代もその名前で呼んでもらっていた。性別はおろか、人間かどうかも分からない「ぽよ」とした響きが気に入って。

    社会に出始めると「天羽くん」「天羽さん」「あもー」と呼ばれることが増えた。「しょうご」は被ることもあるけど「あもう」という音はなかなか被らないので、あだ名不要。この頃から、自分の本名がとてもパブリックなものだなと感じた。それこそ、何か事件を起こしたら本名=芸名だし、病院で「あれ、天羽さんって銀英伝出てました?!」って声をかけられたりして、俳優:天羽尚吾と社会における天羽尚吾は、世間から見たら同一なんだなと、ちょっとプレッシャーも。

    その頃から、僕のプライベートでの呼び名が乱立し始めた。本名をもじった愛称だったり、新設された名前だったり、バイトのために使う名前だったり。その名前で呼ばれると、ちょっと「天羽尚吾としての責任」からはフリーになった気がして楽しかった。

    久しぶりに会った友達に、昔のあだ名で呼ばれると、一瞬びっくりするけど、ゆあてゃ(ではないけど)だったころの記憶や感覚が蘇って、セーブしておいたデータをロードしたような感覚になる。今の自分が忘れていることを、その名前で呼んでくれる友人は覚えていたりする。ありがとうシナプス。

    ロンドンでは「Shogo」と呼ばれる。たまに「しょうぎ」や「しょうじょ」になるけど、それもそれで好き。これまで、天羽同志の集まりや、限られた人にしか「尚吾」と呼ばれてこなかったので、新たな自分のセーブポイントが増えた感覚。それにはどんな思い出が詰まるんだろう。

    台湾や中国系の友人は、いわゆる通称を持っている子も多くて「History」や「Art」みたいにカッコいいのから、春生まれだから「Spring」、シンプルに「Nancy」とか、なんかそれも羨ましい。もし作るならどんな名前にしようかな。あと「真実の名前」を聞かれたら、君が呼んでくれたら全部真実だよ。って答えるね。

  • イギリスのエージェントについてのお知らせ

    イギリスのエージェントについてのお知らせ

    イギリスでの活動をマネージメントしていただくエージェントが決定しました。

    NG PERSONAL MANAGEMENTというミュージカルや舞台へのキャスティングを中心とした事務所です。
    ありがたいことに、いくつかのエージェントからお誘いがあったのですが、代表のNatalieの協力的で、前向きな人柄に惹かれてマネージメントをお願いすることにしました。

    日本だと、事務所に所属する。と言いますが、こちらだと俳優がクライアントと呼ばれるという文化の違いを感じてます。
    もちろん、エージェントがいるからといって、仕事が決まったわけでも、生活が保障されるわけでもないですが、一緒に歩んでくれるパートナーが見つかったことが、とても嬉しいです。

    日本での俳優活動については、引き続きフォセット・コンシェルジュにお世話になっているので、ご用命がありましたら、いつでもご連絡ください。

    天羽尚吾

  • ミュージカル「NOW LOADING」チャリティー配信

    ミュージカル「NOW LOADING」チャリティー配信

    ミュージカル「NOW LOADING」舞台映像配信です。
    ※本配信は終了いたしました
    ご視聴いただいた皆さま、拡散にご協力いただいた皆さまありがとうございます。

    イントロダクション

    「ちょっと逃げ出さない?窓から抜け出して」

    休職中の”ジョニ“は、会社への恨みつらみを込めたマシンガントークで、うだつの上がらないゲーム配信をしている。突然ゲストが欠席し、参加者を募っていたところ、スポーツ一筋の”TAI“が、買いたてのゲーム機を手に参戦することに。優しく導こうとするジョニと、健気ながら地雷を踏みまくるTAIのやり取りは白熱してゆく。
    しかし彼には、胸の内に隠した”ある秘密”があった。

    丘田ミイ子による骨太な試演会レポートや、PR漫画、岡田育のレビューから、口コミに火が付き、多くのリピーターを魅了したミュージカル、待望のアーカイブ再配信決定!

    演出・プロデュース・作詞:天羽尚吾
    脚本:相馬光
    作曲:海老原恒和
    キャスト:天羽尚吾・海老原恒和

    チケット

    視聴チケット:2000円

    以前アーカイブ配信をご購入いただいた方は、配信期間中に同じURLでご視聴いただけます。URLが不明の場合は、チケット申し込み時のお名前と「購入完了のお知らせ」メールに記載の申込番号をご記入の上、こちらまでお問い合わせください。

    売り上げの50%を、パレスチナで緊急対応中の『国境なき医師団』および『UNHCRウクライナ募金』に寄付します。
    (例:チケット1枚ご購入の場合、500円を国境なき医師団、500円をUNHCRウクライナ募金へ振り込みをいたします)

    国境なき医師団「緊急チーム」
    パレスチナおよび、イスラエルとパレスチナにおける衝突の影響を受ける近隣諸国での緊急援助を行う。また、すべての紛争当事者に無差別攻撃の即時停止を求めている。
    UNHCRウクライナ募金
    UNHCRはウクライナ国内や近隣諸国に留まり、破壊された家屋の修理や寒さから身を守るための毛布や暖房器具を含む救援物資を届けるなど、緊急支援にあたる。

    寄付が現地に届けられるのかは、寄付が活動地に届くまでNHK「寄付は届くの?イスラエルとハマスの衝突から1か月」をご参照ください。

    寄付が完了した際には、公式サイト・各種SNSにてご報告いたします。

    アーカイブ再配信への想い

    舞台セットの机の上に乗っている、ボトル、薬、スマートフォン、PC、ゲームコントローラー

    絶対に演劇の道しかない。と、生きたことはありません。
    掴みたいと思ったチャンスを逃したり、生活に無理が生じたり、何千回と考え直しています。
    けれど、この作品を上演するにあたって、力を貸してくれた方たち、観劇してくれた方たち、あまつさえ、感想を寄せてくれたり、知人・友人におすすめをしてくれた方たちと出会えたことは「あ、がんばってよかったんだ」と、心の底から感じることができました。

    再配信の前に観返したのですが、かなり勇気が必要でした。文化祭マジックだったらどうしよう。みたいな。
    でもちょっと客観的になって観たからこそ、やっぱりこの作品がこの時代に生まれて良かった、もっといろんな方に観て欲しい。と思えたので、共同制作者である海老原恒和と相馬光に提案して、この企画が決まりました。ま、もちろん、今演出するなら…という欲は沢山ありますが、それすら、上演したから、感想をもらえたから、成長したからこそ思えることで。

    そして、みなさまにご覧いただく際に、この作品を通じて人道支援ができたらと願い、チャリティー企画として再配信をすることを決意しました。日本や世界中で起きている災害や戦争は数え切れないほどですが、社会の戦場から逃げ出そうと、傷つき藻掻く、ジョニとTAIを描いた物語を通じての支援であることを考え、国境なき医師団とUNHCRへ売り上げの50%を寄付いたします。僕がチャリティー企画を立ち上げるのはひよっこですが、寄付先はどちらも歴史と実績のある活動を続けてきた団体ですから、安心してお預けください。

    健康に生活ができていることは、たくさんの方たちと支えあい、助けてあっているからこそ成り立っていると、日々実感しています。現在僕が住むロンドンは、よくストライキで電車が止まるのですが、電車はただの便利な乗り物じゃなくて、多くの力によって動いていることを想像するきっかけにもなります。

    どうか、あなたにも、健やかで、誰かのやさしさに思いを馳せられるような、安らかな時間が訪れますように。

    天羽尚吾

    コメント

  • 節約なのか、ささやかなのか、生活

    節約なのか、ささやかなのか、生活

    最近Twitterでお金の話ばっかりしてない?
    ね。ほんとうにそう。

    特にナウミュの予算組や管理、そしてきちんと大赤字。からの渡英による出費、来たら来たで円安が進み送金したくなかったので、先月なんて家賃以外の生活費は£300=54,000円で過ごした。割と節約を強いた日々でした。

    日本の贅沢方法はたくさん知っているから、あそこの飲み屋行きたいなとか、好きな古着屋さん、交際費やらスーパー銭湯、舞台、節約をしているつもりでも、なんだかんだ誘惑が多かった。でも最近、割といろんなことを手放しても大丈夫だと気が付いた。

    僕はお洒落さんで通っている。(ということにして)
    だけど、お洋服の所有欲はあまりない。
    誰かにスタイリングしてもらって、作品を作るような「衣装」は好きだけど、普段のお洒落は着心地の良さと精鋭のルーティンで大丈夫だし、何よりロンドンにはほとんど持ってこられなかった&持って帰れない。前は定期的にトークイベントとかもあって、晴れ着が欲しかったりしたけど、イベント用にはリースでもいいかもと思っちゃうし。

    ロンドンは外食費がとにかく高いので基本的に手を出さないようにしているし、栄養を満たす料理は作れてるから、食事もどうにか。舞台は惜しみなく観に行っているけど、一番安い席なら£15=2,800円で観られるから、日本より安いかも。高いのは高いけど。あとすごいのは、UKの図書館で電子書籍も借りられること。audible的なオーディオ本まで。流石に完璧に理解はできないけど、だいたいの意味はわかるから最近は「サピエンス全史」を聴いている。語り口が鮮やかで面白いけど、かなり漠然と論を繋げていたり、査読が足りていないジャンクな所もある本なので、僕には流し聴きが丁度良い。でもこういったベストセラーに染色体で分かつ「性(sex)」と社会生活を送るための「性別(gender)」は異なる。と、明確に書かれているのは助かる。とまあ、流石にもう少し余裕のある生活をしたいけど、なんというか「文化的な生活」を送れているなと感じる。

    この間の贅沢

    そんな時に竹田ダニエルさんの記事「生産性」に回収されない、ヘルシーなセルフケアとは?を読んだ。あれ、もしかしたら今の僕は、節約というよりも無理をせず、自分を大切にするためのセルフケアの一部なのではと。

    今はロンドンで時給制のウエイターをしているから、もっと多く働けばお金は手に入る。だけど、その分自分の時間が無くなってしまうから、まず多くを求めないことによって、自分の時間を確保して、思考したり学んだり、体験したり、ゆっくり寝たりできている。竹田ダニエルさんと同じく、僕もかなり寝る時間が必要で、基本的に8時間は寝たい。何度もショートスリーパーになれないか挑戦したけど、体調が悪くなるだけだった。悔しいけど、折り合いをつけるしかない。

    ただ、これは、資本主義についてや、お金を稼ぐことについて学べば、もう少しましになって、今はただ社会のシステムに組み込まれている死くずなだけかもしれないし、割と時給の高いバイトを見つけられたラッキーと肉体労働できる体力があるという特権の上での話だし、老後の資金どうすんだみたいなのを全無視している最中なので、このライフスタイルを誰にお勧めするわけでも、ずっと続けようと思わないんだけど、なんとかささやかに生きています。
    目指せ、少しは募金できる生活。あと、人間ドッグにも行きたい…歌のレッスンとかを受けようと思うとゴリッとお金が減るし、プロデュース公演やろうと思うとそれはそれでまた…うう……あれ?

  • ロンドン・オーディション奮闘記

    ロンドン・オーディション奮闘記

    俳優として仕事を得るには、選ばれなくてはならない。

    仕事として続けてゆくにあたって、かなりの負担だと思います。日本でもたくさんの、そう、本当に、数多のオーディションを受けていました。ロンドンで僕は完全なる無名で、演劇学校すら出ていないので、初心に返って、オーディションに応募しまくっています。

    日本では事務所経由でオーディションを受けることが主流ですが、イギリスではSpotlight、アメリカではactors accessBackstageなどのオーディションサイトに登録して応募することも多いです。他にも、Facebookのオーディション情報グループ(定期的に「僕はLA在住で~映画出たくて~(自撮り)」みたいな、それで仕事貰えるなら、もうゲットできてるんじゃ…?みたいな投稿がある)や、Instagramでの#opencall タグを注視、各プロダクションのサイトや劇場の募集要項を確認みたいな方法もありますし、やっぱりエージェント(芸能事務所のこと)にしか知らされないオーディションもあります。そんな中で最近受けたオーディションの話を。

    クルーズのダンサー

    オーディション終わりで汗だくの人
    オーディション終わりで汗だくの人

    クルーズというのは豪華客船のことで、大抵船内にホールや劇場があり、船上にいるので家賃を払わず、ダンサーやシンガーとしての経験を積めるメジャーな登竜門です。何故か書類が通ったので、UK到着3日目、時差ボケに悩まされながら受けたオーディション。キャスティングプロデューサーから、プロデューサーや振付師のにこやかな紹介があって、すぐにダンスの審査へ。その時点で衝撃を受けたのは、30数名のダンサーの中で、僕だけがアジア人だったこと。恐らくラテン系のダンサーも1人しかいませんでした。あくまでも推測に過ぎないですし、外見的特徴から人種を判断するのは差別の一歩目だとも思っているのですが、ロンドンの広告やドラマには、多様性のあるキャスティングを多く見かけたので、これも一つの側面なのかと驚きました。振り付けは割と簡単だったのですが、正確に振付を踊るというよりパッションに重きを置いているようで、割とバラバラで個性的でした。僕自身もしばらく踊っていなかったので、立派にバラバラの一員を担っておりました。

    一通り踊ったら廊下で10分くらい待ち、その場で名前を呼ばれた者だけが次の審査に進めるのですが、私の名前は呼ばれませんでした。残った人をチェックしていましたが、ダンスの技術が抜きん出ていた人というよりは、背が高い”所謂(typicalと言いたい)ハンサム”ばかり残っていて、ちょっと腑に落ちないな。と思いつつ会場を後に。でも、久しぶりに踊れて気持ちよかった。

    船上のミュージカル

    ガンを乗り越え結婚式を挙げるゲイカップルの広告
    こんな広告はいくらでも見かける

    次に書類審査が通ったのは、大手クルーズで上演されるミュージカルのアンサンブル。今度はオーディションを受けに行く前に、ビデオ審査があったので、指定された振付2つと課題曲を撮影して送付。毎度思うのですが、撮影する時のスタジオ代とかってなんなんでしょう。「金銭的不安がない人しか俳優になれないの?」「そうだよ!」と返答されている気分。でも審査側からしたら会場代って大きいだろうし、じっくり判断できるし…でも撮影環境の違いにどうしてもバイアスが…と、アレコレ思いつつスタジオを予約し、ビデオを送ったら本選へ。

    1週間後にオーディション会場へ行ったら、溢れんばかりの人。会場には200人くらい居たと思います。え、もう少しビデオオーディションで絞ろうよ。オーディション会場までの交通費もあるんだしさ(電車で3時間かけて来てるみたいな話も聞きました)

    まずは、バレエのアクロスフロアをぞろぞろと踊る。ひとりひとり撮影されるのですが、ビデオがうまく回らなかったようで、僕だけ2回挑戦させてもらい、2回目はピルエットが調子よく4回転決まってラッキーでした。数じゃない…数じゃないんだけどさ。バレエって正解がシンプルで好き。その後60人に絞られて、コンテンポラリーダンス、ジャズダンスの審査に移る。そしてまた何故か、有色人種(People of Color)は、僕と、男性アンサンブル枠で受けていたイーストアジア系の方しか居ませんでした。たまたま偶然が重なっただけかもしれないので、早合点しないようにしていますが、豪華客船という中流~富裕層向けのショウビズであることなど、通念含めて何かしらの暗黙があるのかもしれない。でもHPにはインクルーシブな会社と大々的に宣伝していたりしたんだけどな…と、そんなことばかり考えていたので、居心地悪く感じたりもしていました。

    最後のダンス審査で、あー振付間違えたなとか思いつつ、なんと名前が呼ばれ、最終歌唱審査の20人に選抜。控室に戻ると、みんながいそいそとドレスアップを始める。歌える楽譜を持ってきてねという指示はあったのですが、どうやら歌の審査の時は、ダンスの時とは違う役の雰囲気に合った・自分の違う一面を見せることができる服。で受けるのが通例らしい。知らなかったし、寒いからジャージで来ちゃったよ!

    そしてみんな、得意な曲を4~5曲ファイリングしていて“16-Bar”と呼ばれる、一番歌唱力を表せる16小節を用意していました。これからもミュージカルのオーディションを受けていくなら、雰囲気や音域の異なる曲を準備して16-Bar対策するのが、こっちのオーディション文化か。と面白かったです。日本だと課題曲があるか、1番くらいは歌い切らせてくれることが多いイメージ。でも16小節も聞けば分かるもんな。

    生ピアノで歌える~とドキドキしながら、歌い切って終了。実はその後も候補に残ったのですが、契約が1年間と長かったことと、折角UKビザあるのに海の上に?舞台も見れなくなっちゃう?家賃は無料だけど船上のWi-Fi使用料金そんなに高いの?毎日ジムに行くのが条件で、定期的に体型を測定されるだと?みたいなことが今の自分とは噛み合わず辞退しました。いつかこれを後悔するかもしれないけど、このオーディションを通過できたのは、とても自信になりました。船はさ、好きだけど、やっぱり陸の仕事がいいな…!アリエルの気持ちが更に分かってしまった。

    遂に陸のミュージカル

    楽屋口の写真
    あこがれだったStage Door(楽屋口)案外すぐに入れてしまった

    一度キャッツの書類審査が通って以降(スケジュールが合わず参加できなかった)ミュージカルの書類が通らなかったのでおずおずと応募を続けていたのですが、遂にお呼びがかかる。しかも劇場内のリハーサルスタジオでのオーディション!楽屋口から入場できるじゃん!と、喜んで出掛けました。

    同じくプロデューサーの挨拶から始まったのですが、他のオーディションよりずっと、目の前にいる僕たちにコミットしてくれている気がしました。特に振付師の女性が、個人の良さを引き出せるように、振付中にもそれぞれにアドバイスをしていたり、本審査の時に僕含め全員が床が滑って転んでしまった回があったのですが、すぐに止めてモップ掛けをして、セカンドチャンスをくれたり。とても良い空気だった。5種類のダンス審査があり、振付を覚えるのがあまり得意ではない僕はなかなかに苦労しながら挑みましたが、最終ダンス審査で落選してしまいました。しかし、本当に周りのダンサーたちのダイナミクスさやパワフルさが素晴らしくて「いやいや、この役は君たちがやってくれよ。僕は観てたい!」とすら思っていたので割と満足。それこそ「この後ソワレの公演があって」みたいな人たちも居たので、肩を並べてオーディションを受けられたことも誇らしい。

    この作品は元々、アフリカ系やアジアン系のキャストを起用してきた歴史もあり、オーディション会場にも色んな国・ルーツのダンサーが集まっていました。キャスティングの多様性は、社会的なイメージを変える力があり、選択肢や野心、平等なチャンスを得るために大事だと思っています。もちろんそれが、僕が役をゲットできるかどうかの未来にも関わっているという実利的な希望も含めて。著名な映画の多様性を調査した統計では「スクリーンに登場するアジア系の割合は、 2007年の3.4%から、2022年には15.9%へと上昇した」という研究結果もあり、少なくともハリウッドは変化しつつあり、ステレオタイプな性別描写の一部はイギリスの広告基準協議会によって禁止されています。だからこそ、流石にその基準があるであろうカンパニーのオーディションに参加できたのは幸せでした。

    選ぶ側

    本当に、ミュージカルの役をゲットしたいなら、ダンスや英語での歌唱にもっと打ち込んで、死ぬ気で一つ一つのチャンスを取りに行ってやっとスタートラインに立てるくらいだと思うのですが、どうしても今は「こんなに素晴らしいダンサーがいるなら、彼らを演出できるようになりたい」という思いも強くて、ちょっと宙ぶらりんです。いや勿論、仕事をゲットできたら素晴らしい経験になるし、お給料もバイトより良いし、アーティストビザを申請できるきっかけになったりするとも思うので、是非参加したい。という願いもあるんです。だけど、宙ぶらりんだからこそ、オーディションの結果に一喜一憂するというよりは、異なる視点での発見があったりするので、それもまた貴重だなと。これから受けたいダンスのクラスやボイトレの先生もいるので、技術も磨きつつ、オファーを断った歴史を胸に「僕だって選ぶ側なんだからね」という精神を忘れずに励んでいきたいと思います。

    イギリス生活御用達アプリ

    イギリス生活や海外生活で使うあれこれには、友達紹介ができることが多く、もし下記のリンクを使っていただけたら、お互いに特典があるのでとても嬉しいです。ちなみに、各サイトやアプリの使い方は「○○ 使い方」で素晴らしい記事たちが出てきます。

    WISE:安くて分かりやすい手数料で海外送金できる。海外生活必須なアプリ。デビットカードも作れるので、海外旅行の際にもお勧めです。 紹介リンク経由で75,000円分の送金手数料が無料になります。

    MONZO:イギリス在住者向けの無料で作れるオンラインバンクです。給料の振込口座として使うと1日早くお給料を受け取ることができます。お互いに£10もらえます。

    giffgaff:日本に無料でSIMを送ることができます。そのため現地に着いた瞬間からスマホを使えるので安心しました。このリンクからの申し込みで、お互いに£5獲得できます。

    もし、この記事書き手の天羽尚吾を知らないよ~という方がいましたら、作品をご覧いただいたり、InstagramBlueskyをフォローしてもらえたら嬉しいです!質問もいつでもお寄せください。

  • 食べる側でいさせて

    食べる側でいさせて

    ロンドンでのアルバイト先では、ウエイターやフロントスタッフの誰かが、朝ごはんを作るルーティンがある。先日、僕の番が回ってきて13人分の朝ご飯を作った。慣れていないキッチンで、それぞれの食の好みも分からず何とかこしらえた「ベーコン・パン・ゆで卵・ブロッコリーとアボカドのサラダ」を目の前にしたとき、僕は料理を提供するという事を恐れ、気が遠くなるほどのストレスを感じるんだと知った。

    10年ほど料理を続けてきた。

    冷蔵庫の中身やお店の特売から献立を考えることができるし、予算を抑えつつ栄養があり、満足感のある食事を作ることができる。ルームシェアが長かったので、手料理をふるまうことも多かったし、友達を招いてタコライスパーティーをしたこともある。けれど僕は未だに、スケールや計量カップを使って「レシピ通りに」作らないと安心できない。美味しくないものが出来上がって食べ物を粗末にしてしまう可能性、食べた人が気に入らなかったら…と考えると、震えてしまう。

    僕の作る料理は、お洒落ではなくとも「おいしい」の部類に入ると思うし、なんなら「料理は得意」と言ったこともある。でもあの朝ごはんを作った時に、料理はとても苦手な作業なんだと気が付いた。


    すごく良かったと思う。僕は割りと色々なことを「できる」と過信して、実際できるところまで努力をしてしまうから、苦手なんだ。と諦められたのは良かった。自分の信条にそんなに関係もないし。ちょっと得意だとすら思っていたから、エキサイティングさとか、彩りの良さとか、応用レベルまで手を出していたけど、これから人に料理を作る機会があったら、食べられるだろう料理くらいしか作れませんよ、と前置きしよう。

    自分一人のために作るロンドンごはんは、選択肢が少ない分、楽ちん。レタスやらトマトやらほうれん草やらで、サラダを作って、オートミールに冷凍フルーツと豆乳をぶち込むか、全粒粉のパンにフィラデルフィアのクリームチーズ(こっちでは安い)を塗って食べる。朝ごはんみたいなご飯をいつでも。日本食が恋しくなったら、お味噌汁か、何かを醤油の炒めもの、時間があればパスタや簡単な煮込み料理を作る。何ならこないだピザにお味噌汁を合わせた。なーんだ。僕にはこれでいいのか。てかそもそも手作業全般が苦手じゃん

    まんべんなくいろんな献立を考えたり、美味しそうに写真を撮るのは、僕の責務ではなかったみたい。
    とても肩の力が抜けた。しかも、10年間必死に向き合ってきたので、料理してくれる人への感謝と、味への造詣の深さ、そしてそれを表現する術は整っている。

    ということで、反応の薄い人や、食事を残す人に作るのに飽きた、そこのあなた。
    僕に食べさせてください。とても辛いものと、スイカとメロン以外は大体好きです。それに、美味しく食べるために間食は我慢しますよん。

  • 悩みへの身支度

    悩みへの身支度

    何が僕の専門たるのか。
    やっとここ数年で考え始めるようになった。多分それは、自分にはできないこと。が見えてきたからもある。

    僕がコロナ禍に立ち上げたプロジェクト、アクターズコミックというYouTubeチャンネルがある。パンデミック禍での持続可能な舞台俳優の活躍の場と、草の根的なメディアミックスのあり方を探った映像作品だ。原作者の方に喜んでいただけた掛け替えのない経験や、コロナ禍でアーティストたちの雇用の機会を産むことができたこと、そして作品を楽しんでくれた人たちが居たこと、動画編集のスキルアップができたこと、事務作業に慣れたことなど、本当に立ち上げてよかったと思っている。そして僕はこの作品群が好きだし、宝物だ。

    しかし、興行的には成功しなかった。人件費や経費の多くは助成金で賄えたものの、チャンネル登録者が1000人に達さなかったので私の手元には1円も到達しなかった。もちろん改善の余地もたくさんあるのだが、とにかく僕は収益を上げることが苦手だと気が付いた。ディレクションもできる、現場のプロデュースもできる。だが、プロモーターや経営者的な立ち位置には、今は就けないと感じた。しかも学ぶ意欲も薄め。とはいえ、各漫画のその後のヒットやドラマ化など、目の付け所の良さには我ながら驚いた。

    初めて神奈川県出身が生きた気がする作品。でもたまに東京出身って言います。はい。

    そしてダンス。
    僕は4歳のころからジャズダンスを始めて、テーマパークやらミュージカルのダンサーになるものだとばかり思っていた。けれど、もしかしたら、自分への祈りのための踊りが好きなのであって、批評の場に提出したり、正確に踊りたいわけでは無いのかもしれないと気が付いてきた。
    もちろん身体表現は大事なスキルなので、いつでも躰と技術を捧げるし、そもそも染み付いてしまっているが、多分「ダンサー」という道を歩むべきではないだろうなと。

    祈りに近い踊り

    2019年に製作した自主制作映画「クローゼットのお姫様」あたりから、演出を務めたり、脚本や詩を書くことが増え、自分が感覚的に大切にしている倫理観をよりロジカルに学びたい。身の回り・遠くで起きている様々な社会問題の知識や歴史を身につけたかった。大切な人たちを、自分を、傷つけるようなことをしたくない。そう強く願った。その頃から、小説だけではなく、社会学や歴史についての書を読むように。

    渡英した理由は100あるが、そのうちの1つは「ちょっと、迷わせてください」だった。

    芸能界で活動してゆくにはたくさんの努力と時間が必要だし、色んな事に手を出しがちだし、生きているだけでお金は減ってゆくので何故か働かないとならないし。しかしそろそろ、自分の人生の軸を決めたい。運に身を任せてえいや、と決めたくはないし、適量の孤独を手に入れて自分と向き合いたい。イギリスで観劇するときには、セリフよりも全体的な空気感やら表現にも目が向く。ちょっと(時に全然)英語が分からないというのもいっそ一つのアドバンテージだ。日本語は29年間も使ってきて「わかりすぎる」時がある。(日本語でも全然わからないときもある。あ、かっこが増えてきた。補足したいことたくさんありすぎる。でも僕の人生、ほぼ注釈と補足で構成されているようなものなので…このブログ自体、補足事項の塊のような見方もできるし……)

    Young Vic の円形舞台
    円形舞台ってだけでドキドキする。でもオペレーションは本当に難しい

    その他にも数多の挫折や解釈違いをたくさん踏み越えて、僕の専門はなんなのだろう。と十二分に考えられている今日この頃。さみしさも孤独もうまくいかなさも、本当に今ここにいるべきなのか、そんな不安も全部ありつつ、それらを抱きしめて、良く寝て栄養のあるものを食べつつ悩もう。今日も。多分研究がしたいというよりは、学んでそれを自分の芝居だったり、演出だったり、創作に取り入れてかつ少しは生活できるようにしていきたい。そんな願いな気がする。

    こんな迷路のような話をまだ読んでくれてるんですか。好きだ。そして、こんな話に付き合ってくれた奇特な一人、小林弘幸というロンドンの大学院に留学中の劇団「新宿公社」の主宰とパブに行って、今日もたくさんのおすすめの本を教えてもらった。既に積読があるから、いつ読めるか…と云ったら「積読は、あればあるほど良いから。あれは、精神世界の地図だから。積んでる事に価値がある」と返してくれた。好きだ。

    小林さんに教えてもらって、これは人間と接する総ての人が抑えるべき見事な良書だと思ったのはオレリア・ミシェル「黒人と白人の世界史」、学んできたからこそ向き合えたなと思ったのは、ショーン・フェイの「トランスジェンダー問題」、孤独でも考え続けようと支えられるのはヴァージニア・ウルフ「自分だけの部屋」、今読んでいるのは、小川公代「ケアの倫理とエンパワメント」。同じ本を読んだ人を見つけるのって難しいので、もし読んで語らいたい方がいたらお話しさせてくださいね。

  • 10月8日 テレビ朝日系「仮面ライダーガッチャード」出演

    10月8日 テレビ朝日系「仮面ライダーガッチャード」出演

    テレビ朝日系「仮面ライダーガッチャード」
    第6話 鉛崎ボルト役
    2023年10月8日(日)9:00~
    https://www.tv-asahi.co.jp/gotchard/

  • 過酷なロンドン部屋探し

    過酷なロンドン部屋探し

    (2024年に再び家探しをした記事も執筆しました)

    ロンドンでのおうち見つかりました!

    いやー、本当に大変でした。現在の英国ではインフレや税制度の改革、そもそも住宅が少なすぎる。などの理由で一つのアパートに20人以上の内見希望者が集まり(The Guardian Tuesday briefing: How the housing crisis is hitting tenants hardest)、2023年5月までの1年間で5.1%も家賃が向上(Index of Private Housing Rental Prices, UK: May 2023)、例えるなら8万円の家賃が1年で84,000円になるほどです。英国人ですら家探しが大変とのこと。

    おうち探しが大変というのは聞いていたし、物価も高く円安も進んでいるので、心構えはたくさんしていたのですが、かなりきつかったです。ちなみに一人暮らしをしようとすると1Kでも軽く20万円とかかかるので、フラットシェアと呼ばれるお家の中のお部屋をお借りすることにしました。

    大変だったポイント

    • 内見して気に入ったら即日~翌日朝までには、決めて前払い金(deposit)を支払い、すぐに住み始めなくてはならない。しかも売り手市場なので選ばれる身。
    • お部屋の設備だけではなく、シェアメイトの雰囲気や周辺環境が大切なので、日本で決めてから行くことは難しい。地の利があったり、オンライン内見に対応してもらったり、紹介があれば、まだありうるかもしれないです。
    • とにかく高い。ちょっと前までは、シェアなら安ければ£450(81,000円 2023年9月現在 以下同)~£600(108,000円)で住める。という話だったのに、今は£600(108,000円)はお宝物件、£700(126,000円)なら安い、£800(144,000円)で普通みたいな相場でした。一部屋ですよ。
    • 物件情報にメッセージを送って内見の予約をするのですが、10通送って1件返信が返ってくれば良いほう。

    内見を申し込むまで

    在英の日本人向けコミュニティサイトMixbで探す方も多いのですが、日本人だからといって安心で気が合う!という保証も無いのと、そんなに良い物件が見つからなかったので、イギリスで一番ポピュラーなお部屋探しアプリSpareRoomを使用しました。仲介手数料とかは無いのですが、メッセージを早めに送ったりするための有料会員(一週間£11.99 2,100円)に登録して、事前に予約していたAirbnbの宿泊期間、一週間半以内に物件を探そうと決めました。

    良さそうな物件を見つけたら、まずはメールをします。大体僕が送っていた文章はこんな感じ。

    Dear XXX,
    ーXXX様へ

    Hello! My name is XXX, I came across your lovely flat #XXXXXX
    ーこんにちは、XXXです。あなたの素敵なお家 #XXXXX(物件管理番号) が目に留まりました。
    I’m staying in London with a working visa for 2 years from 9 SEP 2023.
    ーロンドンに就労ビザを持って2年間滞在します。
    Could you arrange a viewing?
    ー内見の予定を決めさせていただけますか?

    A little bit about me: I am a XX, Japanese, working in the 〇〇 industry. Tidy, friendly and a non-smoker. I am currently looking for a room near by XXX.
    ーちょっと僕のことを。XX歳の日本人で〇〇業界で働いています。きちんとしててフレンドリーでタバコは吸わず、XXX周辺で物件を探しています。

    Thank you.
    Name XXXXX-XXXXXX
    ref#XXXXXX
    ーありがとう。名前 電話番号 自分のプロフィール番号

    物件紹介にこういうことを教えて欲しいとか、ちょっと面白い住人紹介とかをしている物件もあったので、それには追加でメッセージを足したり、自己紹介を変えたりしました。あと、銀行預金残高証明書を提出できますとか。すでにフルタイムジョブが決まっていたり、学生なら、もう少し返信率高いかもとも思います。とにかくあちらも死ぬほどメッセージを受け取っているので、特に個人の大家さんには興味を持ってもらえそうな文面を心掛けました。自動送信(bot)お断り。みたいな記述も見かけました。

    多くを望んでられないのと、仕事先が決まってるわけじゃないので、アクセスのよい Zone 1~Zone 2(東京23区内くらいのイメージ)で、ベッドと机があって、キッチンや適切な数の洗濯機があること、同居人いい人そう、ある程度清潔、変なハウスルールが無い、最低契約期間が6カ月以下(暮らしてみないとわかんないことも多いので)、くらいで探しました。語学学校に通う人とかだったら、ロンドンよりも南に一時間行ったBrightonや、ManchesterやCardiffなど、ロンドン以外でまずは落ち着くのもありだと思います。

    内見歴

    まあそんなこんなで、ロンドン到着早々、時差ボケしつつ次々とメッセージを送ってみるわけですよ。でも一向に返信が来ない。来たと思ったら自動送信のお祈りメール。結局内見に行ったのは4件。内見希望を出したお家は51件でした。6日で。

    2日目 最低な大家に遭遇

    お部屋は必要十分。都心へのアクセスも良い。でもリビングとかから感じる負のオーラ。
    大家と話していると「XXX人は嫌いだ。でも日本人は良い。さっき内見に来た日本人はXXX(セクハラ)だった」とか「ゲイやレズビアンはこの家に入れたくない」みたいな差別発言を当たり前のように繰り返してきたので、絶対にここには住まないと決め、物件を後にしました。さすがに酷すぎてSpareRoomに報告しましたが、証拠がない。録音でもしておくべきだったか。初っ端から、かなり折れました。同じアジア人の中でも特に差別や迫害を受けやすい地域の人とそうでない人がいるという現実にも直面しました。生まれる国なんて選べないだろうが!(とても強い怒り)しかし、こんな人は本当に少ないし、イギリス内でも嫌われているので、安心?してくださいね。

    4日目 エージェントってどうなんよ

    イギリスの住宅ローンの金利が上がってしまったことで、投資目的で個人が所有していた物件が手放され、不動産エージェントが買い占める。みたいなことが起きているようです。リビングルームも一部屋として貸し出し、最低限の家具だけ揃えて、雑に貸し出す。みたいな物件もあります。もちろん良いエージェントもいると思うのですが、全部屋空いた状態だから誰と住むかもわからないし、値段のつり上げを仄めすし、契約期間は長いしで、これ以降は避けることにしました。しかも土曜日の深夜3時とかにメール送ってくる英国エージェントなんて信じられない(笑)

    この頃は内見のために1日10kmとか歩いていて、地形を知るには良かったけど精神的にすっきりしなかったので、どんよりしてました。そして、予算を£700から£800に吊り上げました。現実的だったと思う。

    5日目 やっと素敵な内見

    小さいけれど、綺麗で可愛いお部屋だった。ようやく安心できるような内見ができてウキウキしつつ、前途多難だったので、すごい緊張していて「あなたずっと笑顔で素敵ね」と言われ「いや、日本人の一部は緊張すると笑うんです」みたいな和やかな話ができたりもした。ただ、シェアフラットというよりはホームステイに近いような感覚で、3人の姉妹とそのパートナーや子供、彼氏と同居するお家。5ちゃいの子供と一緒に住んだこと無いもんなぁ…と思い、ちょっと考えたいと返信。帰りがけに「きっとまた会える気がする」って声をかけてもらえて、印象的でした。

    6日目 絶対ピザ。いっつもピザ。

    日本でいう「まいばすけっと」のような、コンビニのような、TESCO EXPRESSのパスタやパンが美味しく手頃と判明して、ちょっと調子が上がってきた頃、素敵なお家の内見予約ができました。

    「大家兼同居人は役者をしていて、絶対ピザ。いっつもピザ。もう一人の同居人は、Netflixについて語ると止まりません。全部の番組。多分…アマプラとディズニープラスも」

    こういうユニークな紹介文の物件は大体人気なので返信もらえたときは嬉しかった。ちょっと郊外だし、予算より高かったけど、自分の部屋が広く、使えないけど暖炉がある、素敵なお部屋でした。出迎えてくれた方がちょうど日本語を勉強してる。みたいなところから、話が盛り上がって、内見なのに1時間くらい喋りこんじゃいました。

    その後5人くらい内見が予定されていて、その中から選ばれることに。絶対いけるでしょこれ!って思ってましたが、僕は選ばれませんでした。けれど、とても優しいメッセージが送られてきました。まあ、候補が他にいるなら英語がきちんと話せて、固定給の仕事に就いてる人のほうが安心はできるよなぁ…。

    7日目 さて、どうするか。

    この時が一番つらかったかもしれない。ちょっと自分の思考能力や感受性が低下するのがわかりました。自分が安全に暮らす場所を見つけられないと、こんなにも苦しいものかと呼吸すら浅くなっていることを実感しました。

    返信を待っている間にもメッセージを何通も送ったけど、エージェントを避けたら返信率が低く、かつ、この後メッセージのやり取りして、内見して、決定を待つなら、泊まる場所も探さなきゃいけないし、仕事探しは遅れるし、でも住む場所は重要……。と、考えあぐねて、5日目のお部屋に打診してみました。ちょっと遅くなってしまったので、ダメもとだったのですが、なんと、待っててくれました!

    ロンドンでお部屋を手に入れた!

    そして、こんなお家に住むことに決まりました。正直、家族と暮らすことが心配で、細かくお家のことを確認したりしたのですが、誠実に返答してくれたことと「もし、質問や問題が生まれたら引っ越し後でも相談の場を設けましょう」という提案をしたら「私たちはいつも言い争いはせず、誰とでも最善の解決法を探そうとしています(We are not arguing in general, we are always trying to find the best solution for everyone)」と、返答してくれたことに信頼度がぐーーんと上がり、安心して引っ越しに取り掛かることができました。

    家が決まったってことは、仕事探さなきゃ。っていうのは、またの機会に。

    特に参考にさせてもらったサイト

    在英日本人に聞く!イギリス家賃事情【YMS】
    ロンドン 家探しで使う英語はコレだ!
    ロンドンでの部屋探しが大変すぎた 小林弘幸

    こういった情報にとても助けられたので、僕も記録を残してみました。それこそ夏目漱石が120年前にイギリス留学をして苦労したりしているという事実にすら励まされました。

    イギリス生活御用達アプリ

    イギリス生活や海外生活で使うあれこれには、友達紹介ができることが多く、もし下記のリンクを使っていただけたら、お互いに特典があるのでとても嬉しいです。ちなみに、各サイトやアプリの使い方は「○○ 使い方」で素晴らしい記事たちが出てきます。

    WISE:安くて分かりやすい手数料で海外送金できる。海外生活必須なアプリ。デビットカードも作れるので、海外旅行の際にもお勧めです。 紹介リンク経由で75,000円分の送金手数料が無料になります。

    MONZO:イギリス在住者向けの無料で作れるオンラインバンクです。給料の振込口座として使うと1日早くお給料を受け取ることができます。お互いに£10もらえます。

    giffgaff:日本に無料でSIMを送ることができます。そのため現地に着いた瞬間からスマホを使えるので安心しました。このリンクからの申し込みで、お互いに£5獲得できます。

    もし、この記事書き手の天羽尚吾を知らないよ~という方がいましたら、作品をご覧いただいたり、InstagramBlueskyをフォローしてもらえたら嬉しいです!質問もいつでもお寄せください。