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  • 節約なのか、ささやかなのか、生活

    節約なのか、ささやかなのか、生活

    最近Twitterでお金の話ばっかりしてない?
    ね。ほんとうにそう。

    特にナウミュの予算組や管理、そしてきちんと大赤字。からの渡英による出費、来たら来たで円安が進み送金したくなかったので、先月なんて家賃以外の生活費は£300=54,000円で過ごした。割と節約を強いた日々でした。

    日本の贅沢方法はたくさん知っているから、あそこの飲み屋行きたいなとか、好きな古着屋さん、交際費やらスーパー銭湯、舞台、節約をしているつもりでも、なんだかんだ誘惑が多かった。でも最近、割といろんなことを手放しても大丈夫だと気が付いた。

    僕はお洒落さんで通っている。(ということにして)
    だけど、お洋服の所有欲はあまりない。
    誰かにスタイリングしてもらって、作品を作るような「衣装」は好きだけど、普段のお洒落は着心地の良さと精鋭のルーティンで大丈夫だし、何よりロンドンにはほとんど持ってこられなかった&持って帰れない。前は定期的にトークイベントとかもあって、晴れ着が欲しかったりしたけど、イベント用にはリースでもいいかもと思っちゃうし。

    ロンドンは外食費がとにかく高いので基本的に手を出さないようにしているし、栄養を満たす料理は作れてるから、食事もどうにか。舞台は惜しみなく観に行っているけど、一番安い席なら£15=2,800円で観られるから、日本より安いかも。高いのは高いけど。あとすごいのは、UKの図書館で電子書籍も借りられること。audible的なオーディオ本まで。流石に完璧に理解はできないけど、だいたいの意味はわかるから最近は「サピエンス全史」を聴いている。語り口が鮮やかで面白いけど、かなり漠然と論を繋げていたり、査読が足りていないジャンクな所もある本なので、僕には流し聴きが丁度良い。でもこういったベストセラーに染色体で分かつ「性(sex)」と社会生活を送るための「性別(gender)」は異なる。と、明確に書かれているのは助かる。とまあ、流石にもう少し余裕のある生活をしたいけど、なんというか「文化的な生活」を送れているなと感じる。

    この間の贅沢

    そんな時に竹田ダニエルさんの記事「生産性」に回収されない、ヘルシーなセルフケアとは?を読んだ。あれ、もしかしたら今の僕は、節約というよりも無理をせず、自分を大切にするためのセルフケアの一部なのではと。

    今はロンドンで時給制のウエイターをしているから、もっと多く働けばお金は手に入る。だけど、その分自分の時間が無くなってしまうから、まず多くを求めないことによって、自分の時間を確保して、思考したり学んだり、体験したり、ゆっくり寝たりできている。竹田ダニエルさんと同じく、僕もかなり寝る時間が必要で、基本的に8時間は寝たい。何度もショートスリーパーになれないか挑戦したけど、体調が悪くなるだけだった。悔しいけど、折り合いをつけるしかない。

    ただ、これは、資本主義についてや、お金を稼ぐことについて学べば、もう少しましになって、今はただ社会のシステムに組み込まれている死くずなだけかもしれないし、割と時給の高いバイトを見つけられたラッキーと肉体労働できる体力があるという特権の上での話だし、老後の資金どうすんだみたいなのを全無視している最中なので、このライフスタイルを誰にお勧めするわけでも、ずっと続けようと思わないんだけど、なんとかささやかに生きています。
    目指せ、少しは募金できる生活。あと、人間ドッグにも行きたい…歌のレッスンとかを受けようと思うとゴリッとお金が減るし、プロデュース公演やろうと思うとそれはそれでまた…うう……あれ?

  • ロンドン・オーディション奮闘記

    ロンドン・オーディション奮闘記

    俳優として仕事を得るには、選ばれなくてはならない。

    仕事として続けてゆくにあたって、かなりの負担だと思います。日本でもたくさんの、そう、本当に、数多のオーディションを受けていました。ロンドンで僕は完全なる無名で、演劇学校すら出ていないので、初心に返って、オーディションに応募しまくっています。

    日本では事務所経由でオーディションを受けることが主流ですが、イギリスではSpotlight、アメリカではactors accessBackstageなどのオーディションサイトに登録して応募することも多いです。他にも、Facebookのオーディション情報グループ(定期的に「僕はLA在住で~映画出たくて~(自撮り)」みたいな、それで仕事貰えるなら、もうゲットできてるんじゃ…?みたいな投稿がある)や、Instagramでの#opencall タグを注視、各プロダクションのサイトや劇場の募集要項を確認みたいな方法もありますし、やっぱりエージェント(芸能事務所のこと)にしか知らされないオーディションもあります。そんな中で最近受けたオーディションの話を。

    クルーズのダンサー

    オーディション終わりで汗だくの人
    オーディション終わりで汗だくの人

    クルーズというのは豪華客船のことで、大抵船内にホールや劇場があり、船上にいるので家賃を払わず、ダンサーやシンガーとしての経験を積めるメジャーな登竜門です。何故か書類が通ったので、UK到着3日目、時差ボケに悩まされながら受けたオーディション。キャスティングプロデューサーから、プロデューサーや振付師のにこやかな紹介があって、すぐにダンスの審査へ。その時点で衝撃を受けたのは、30数名のダンサーの中で、僕だけがアジア人だったこと。恐らくラテン系のダンサーも1人しかいませんでした。あくまでも推測に過ぎないですし、外見的特徴から人種を判断するのは差別の一歩目だとも思っているのですが、ロンドンの広告やドラマには、多様性のあるキャスティングを多く見かけたので、これも一つの側面なのかと驚きました。振り付けは割と簡単だったのですが、正確に振付を踊るというよりパッションに重きを置いているようで、割とバラバラで個性的でした。僕自身もしばらく踊っていなかったので、立派にバラバラの一員を担っておりました。

    一通り踊ったら廊下で10分くらい待ち、その場で名前を呼ばれた者だけが次の審査に進めるのですが、私の名前は呼ばれませんでした。残った人をチェックしていましたが、ダンスの技術が抜きん出ていた人というよりは、背が高い”所謂(typicalと言いたい)ハンサム”ばかり残っていて、ちょっと腑に落ちないな。と思いつつ会場を後に。でも、久しぶりに踊れて気持ちよかった。

    船上のミュージカル

    ガンを乗り越え結婚式を挙げるゲイカップルの広告
    こんな広告はいくらでも見かける

    次に書類審査が通ったのは、大手クルーズで上演されるミュージカルのアンサンブル。今度はオーディションを受けに行く前に、ビデオ審査があったので、指定された振付2つと課題曲を撮影して送付。毎度思うのですが、撮影する時のスタジオ代とかってなんなんでしょう。「金銭的不安がない人しか俳優になれないの?」「そうだよ!」と返答されている気分。でも審査側からしたら会場代って大きいだろうし、じっくり判断できるし…でも撮影環境の違いにどうしてもバイアスが…と、アレコレ思いつつスタジオを予約し、ビデオを送ったら本選へ。

    1週間後にオーディション会場へ行ったら、溢れんばかりの人。会場には200人くらい居たと思います。え、もう少しビデオオーディションで絞ろうよ。オーディション会場までの交通費もあるんだしさ(電車で3時間かけて来てるみたいな話も聞きました)

    まずは、バレエのアクロスフロアをぞろぞろと踊る。ひとりひとり撮影されるのですが、ビデオがうまく回らなかったようで、僕だけ2回挑戦させてもらい、2回目はピルエットが調子よく4回転決まってラッキーでした。数じゃない…数じゃないんだけどさ。バレエって正解がシンプルで好き。その後60人に絞られて、コンテンポラリーダンス、ジャズダンスの審査に移る。そしてまた何故か、有色人種(People of Color)は、僕と、男性アンサンブル枠で受けていたイーストアジア系の方しか居ませんでした。たまたま偶然が重なっただけかもしれないので、早合点しないようにしていますが、豪華客船という中流~富裕層向けのショウビズであることなど、通念含めて何かしらの暗黙があるのかもしれない。でもHPにはインクルーシブな会社と大々的に宣伝していたりしたんだけどな…と、そんなことばかり考えていたので、居心地悪く感じたりもしていました。

    最後のダンス審査で、あー振付間違えたなとか思いつつ、なんと名前が呼ばれ、最終歌唱審査の20人に選抜。控室に戻ると、みんながいそいそとドレスアップを始める。歌える楽譜を持ってきてねという指示はあったのですが、どうやら歌の審査の時は、ダンスの時とは違う役の雰囲気に合った・自分の違う一面を見せることができる服。で受けるのが通例らしい。知らなかったし、寒いからジャージで来ちゃったよ!

    そしてみんな、得意な曲を4~5曲ファイリングしていて“16-Bar”と呼ばれる、一番歌唱力を表せる16小節を用意していました。これからもミュージカルのオーディションを受けていくなら、雰囲気や音域の異なる曲を準備して16-Bar対策するのが、こっちのオーディション文化か。と面白かったです。日本だと課題曲があるか、1番くらいは歌い切らせてくれることが多いイメージ。でも16小節も聞けば分かるもんな。

    生ピアノで歌える~とドキドキしながら、歌い切って終了。実はその後も候補に残ったのですが、契約が1年間と長かったことと、折角UKビザあるのに海の上に?舞台も見れなくなっちゃう?家賃は無料だけど船上のWi-Fi使用料金そんなに高いの?毎日ジムに行くのが条件で、定期的に体型を測定されるだと?みたいなことが今の自分とは噛み合わず辞退しました。いつかこれを後悔するかもしれないけど、このオーディションを通過できたのは、とても自信になりました。船はさ、好きだけど、やっぱり陸の仕事がいいな…!アリエルの気持ちが更に分かってしまった。

    遂に陸のミュージカル

    楽屋口の写真
    あこがれだったStage Door(楽屋口)案外すぐに入れてしまった

    一度キャッツの書類審査が通って以降(スケジュールが合わず参加できなかった)ミュージカルの書類が通らなかったのでおずおずと応募を続けていたのですが、遂にお呼びがかかる。しかも劇場内のリハーサルスタジオでのオーディション!楽屋口から入場できるじゃん!と、喜んで出掛けました。

    同じくプロデューサーの挨拶から始まったのですが、他のオーディションよりずっと、目の前にいる僕たちにコミットしてくれている気がしました。特に振付師の女性が、個人の良さを引き出せるように、振付中にもそれぞれにアドバイスをしていたり、本審査の時に僕含め全員が床が滑って転んでしまった回があったのですが、すぐに止めてモップ掛けをして、セカンドチャンスをくれたり。とても良い空気だった。5種類のダンス審査があり、振付を覚えるのがあまり得意ではない僕はなかなかに苦労しながら挑みましたが、最終ダンス審査で落選してしまいました。しかし、本当に周りのダンサーたちのダイナミクスさやパワフルさが素晴らしくて「いやいや、この役は君たちがやってくれよ。僕は観てたい!」とすら思っていたので割と満足。それこそ「この後ソワレの公演があって」みたいな人たちも居たので、肩を並べてオーディションを受けられたことも誇らしい。

    この作品は元々、アフリカ系やアジアン系のキャストを起用してきた歴史もあり、オーディション会場にも色んな国・ルーツのダンサーが集まっていました。キャスティングの多様性は、社会的なイメージを変える力があり、選択肢や野心、平等なチャンスを得るために大事だと思っています。もちろんそれが、僕が役をゲットできるかどうかの未来にも関わっているという実利的な希望も含めて。著名な映画の多様性を調査した統計では「スクリーンに登場するアジア系の割合は、 2007年の3.4%から、2022年には15.9%へと上昇した」という研究結果もあり、少なくともハリウッドは変化しつつあり、ステレオタイプな性別描写の一部はイギリスの広告基準協議会によって禁止されています。だからこそ、流石にその基準があるであろうカンパニーのオーディションに参加できたのは幸せでした。

    選ぶ側

    本当に、ミュージカルの役をゲットしたいなら、ダンスや英語での歌唱にもっと打ち込んで、死ぬ気で一つ一つのチャンスを取りに行ってやっとスタートラインに立てるくらいだと思うのですが、どうしても今は「こんなに素晴らしいダンサーがいるなら、彼らを演出できるようになりたい」という思いも強くて、ちょっと宙ぶらりんです。いや勿論、仕事をゲットできたら素晴らしい経験になるし、お給料もバイトより良いし、アーティストビザを申請できるきっかけになったりするとも思うので、是非参加したい。という願いもあるんです。だけど、宙ぶらりんだからこそ、オーディションの結果に一喜一憂するというよりは、異なる視点での発見があったりするので、それもまた貴重だなと。これから受けたいダンスのクラスやボイトレの先生もいるので、技術も磨きつつ、オファーを断った歴史を胸に「僕だって選ぶ側なんだからね」という精神を忘れずに励んでいきたいと思います。

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  • 食べる側でいさせて

    食べる側でいさせて

    ロンドンでのアルバイト先では、ウエイターやフロントスタッフの誰かが、朝ごはんを作るルーティンがある。先日、僕の番が回ってきて13人分の朝ご飯を作った。慣れていないキッチンで、それぞれの食の好みも分からず何とかこしらえた「ベーコン・パン・ゆで卵・ブロッコリーとアボカドのサラダ」を目の前にしたとき、僕は料理を提供するという事を恐れ、気が遠くなるほどのストレスを感じるんだと知った。

    10年ほど料理を続けてきた。

    冷蔵庫の中身やお店の特売から献立を考えることができるし、予算を抑えつつ栄養があり、満足感のある食事を作ることができる。ルームシェアが長かったので、手料理をふるまうことも多かったし、友達を招いてタコライスパーティーをしたこともある。けれど僕は未だに、スケールや計量カップを使って「レシピ通りに」作らないと安心できない。美味しくないものが出来上がって食べ物を粗末にしてしまう可能性、食べた人が気に入らなかったら…と考えると、震えてしまう。

    僕の作る料理は、お洒落ではなくとも「おいしい」の部類に入ると思うし、なんなら「料理は得意」と言ったこともある。でもあの朝ごはんを作った時に、料理はとても苦手な作業なんだと気が付いた。


    すごく良かったと思う。僕は割りと色々なことを「できる」と過信して、実際できるところまで努力をしてしまうから、苦手なんだ。と諦められたのは良かった。自分の信条にそんなに関係もないし。ちょっと得意だとすら思っていたから、エキサイティングさとか、彩りの良さとか、応用レベルまで手を出していたけど、これから人に料理を作る機会があったら、食べられるだろう料理くらいしか作れませんよ、と前置きしよう。

    自分一人のために作るロンドンごはんは、選択肢が少ない分、楽ちん。レタスやらトマトやらほうれん草やらで、サラダを作って、オートミールに冷凍フルーツと豆乳をぶち込むか、全粒粉のパンにフィラデルフィアのクリームチーズ(こっちでは安い)を塗って食べる。朝ごはんみたいなご飯をいつでも。日本食が恋しくなったら、お味噌汁か、何かを醤油の炒めもの、時間があればパスタや簡単な煮込み料理を作る。何ならこないだピザにお味噌汁を合わせた。なーんだ。僕にはこれでいいのか。てかそもそも手作業全般が苦手じゃん

    まんべんなくいろんな献立を考えたり、美味しそうに写真を撮るのは、僕の責務ではなかったみたい。
    とても肩の力が抜けた。しかも、10年間必死に向き合ってきたので、料理してくれる人への感謝と、味への造詣の深さ、そしてそれを表現する術は整っている。

    ということで、反応の薄い人や、食事を残す人に作るのに飽きた、そこのあなた。
    僕に食べさせてください。とても辛いものと、スイカとメロン以外は大体好きです。それに、美味しく食べるために間食は我慢しますよん。

  • 悩みへの身支度

    悩みへの身支度

    何が僕の専門たるのか。
    やっとここ数年で考え始めるようになった。多分それは、自分にはできないこと。が見えてきたからもある。

    僕がコロナ禍に立ち上げたプロジェクト、アクターズコミックというYouTubeチャンネルがある。パンデミック禍での持続可能な舞台俳優の活躍の場と、草の根的なメディアミックスのあり方を探った映像作品だ。原作者の方に喜んでいただけた掛け替えのない経験や、コロナ禍でアーティストたちの雇用の機会を産むことができたこと、そして作品を楽しんでくれた人たちが居たこと、動画編集のスキルアップができたこと、事務作業に慣れたことなど、本当に立ち上げてよかったと思っている。そして僕はこの作品群が好きだし、宝物だ。

    しかし、興行的には成功しなかった。人件費や経費の多くは助成金で賄えたものの、チャンネル登録者が1000人に達さなかったので私の手元には1円も到達しなかった。もちろん改善の余地もたくさんあるのだが、とにかく僕は収益を上げることが苦手だと気が付いた。ディレクションもできる、現場のプロデュースもできる。だが、プロモーターや経営者的な立ち位置には、今は就けないと感じた。しかも学ぶ意欲も薄め。とはいえ、各漫画のその後のヒットやドラマ化など、目の付け所の良さには我ながら驚いた。

    初めて神奈川県出身が生きた気がする作品。でもたまに東京出身って言います。はい。

    そしてダンス。
    僕は4歳のころからジャズダンスを始めて、テーマパークやらミュージカルのダンサーになるものだとばかり思っていた。けれど、もしかしたら、自分への祈りのための踊りが好きなのであって、批評の場に提出したり、正確に踊りたいわけでは無いのかもしれないと気が付いてきた。
    もちろん身体表現は大事なスキルなので、いつでも躰と技術を捧げるし、そもそも染み付いてしまっているが、多分「ダンサー」という道を歩むべきではないだろうなと。

    祈りに近い踊り

    2019年に製作した自主制作映画「クローゼットのお姫様」あたりから、演出を務めたり、脚本や詩を書くことが増え、自分が感覚的に大切にしている倫理観をよりロジカルに学びたい。身の回り・遠くで起きている様々な社会問題の知識や歴史を身につけたかった。大切な人たちを、自分を、傷つけるようなことをしたくない。そう強く願った。その頃から、小説だけではなく、社会学や歴史についての書を読むように。

    渡英した理由は100あるが、そのうちの1つは「ちょっと、迷わせてください」だった。

    芸能界で活動してゆくにはたくさんの努力と時間が必要だし、色んな事に手を出しがちだし、生きているだけでお金は減ってゆくので何故か働かないとならないし。しかしそろそろ、自分の人生の軸を決めたい。運に身を任せてえいや、と決めたくはないし、適量の孤独を手に入れて自分と向き合いたい。イギリスで観劇するときには、セリフよりも全体的な空気感やら表現にも目が向く。ちょっと(時に全然)英語が分からないというのもいっそ一つのアドバンテージだ。日本語は29年間も使ってきて「わかりすぎる」時がある。(日本語でも全然わからないときもある。あ、かっこが増えてきた。補足したいことたくさんありすぎる。でも僕の人生、ほぼ注釈と補足で構成されているようなものなので…このブログ自体、補足事項の塊のような見方もできるし……)

    Young Vic の円形舞台
    円形舞台ってだけでドキドキする。でもオペレーションは本当に難しい

    その他にも数多の挫折や解釈違いをたくさん踏み越えて、僕の専門はなんなのだろう。と十二分に考えられている今日この頃。さみしさも孤独もうまくいかなさも、本当に今ここにいるべきなのか、そんな不安も全部ありつつ、それらを抱きしめて、良く寝て栄養のあるものを食べつつ悩もう。今日も。多分研究がしたいというよりは、学んでそれを自分の芝居だったり、演出だったり、創作に取り入れてかつ少しは生活できるようにしていきたい。そんな願いな気がする。

    こんな迷路のような話をまだ読んでくれてるんですか。好きだ。そして、こんな話に付き合ってくれた奇特な一人、小林弘幸というロンドンの大学院に留学中の劇団「新宿公社」の主宰とパブに行って、今日もたくさんのおすすめの本を教えてもらった。既に積読があるから、いつ読めるか…と云ったら「積読は、あればあるほど良いから。あれは、精神世界の地図だから。積んでる事に価値がある」と返してくれた。好きだ。

    小林さんに教えてもらって、これは人間と接する総ての人が抑えるべき見事な良書だと思ったのはオレリア・ミシェル「黒人と白人の世界史」、学んできたからこそ向き合えたなと思ったのは、ショーン・フェイの「トランスジェンダー問題」、孤独でも考え続けようと支えられるのはヴァージニア・ウルフ「自分だけの部屋」、今読んでいるのは、小川公代「ケアの倫理とエンパワメント」。同じ本を読んだ人を見つけるのって難しいので、もし読んで語らいたい方がいたらお話しさせてくださいね。

  • 10月8日 テレビ朝日系「仮面ライダーガッチャード」出演

    10月8日 テレビ朝日系「仮面ライダーガッチャード」出演

    テレビ朝日系「仮面ライダーガッチャード」
    第6話 鉛崎ボルト役
    2023年10月8日(日)9:00~
    https://www.tv-asahi.co.jp/gotchard/

  • 過酷なロンドン部屋探し

    過酷なロンドン部屋探し

    ロンドンでのおうち見つかりました!

    いやー、本当に大変でした。現在の英国ではインフレや税制度の改革、そもそも住宅が少なすぎる。などの理由で一つのアパートに20人以上の内見希望者が集まり(The Guardian Tuesday briefing: How the housing crisis is hitting tenants hardest)、2023年5月までの1年間で5.1%も家賃が向上(Index of Private Housing Rental Prices, UK: May 2023)、例えるなら8万円の家賃が1年で84,000円になるほどです。英国人ですら家探しが大変とのこと。

    おうち探しが大変というのは聞いていたし、物価も高く円安も進んでいるので、心構えはたくさんしていたのですが、かなりきつかったです。ちなみに一人暮らしをしようとすると1Kでも軽く20万円とかかかるので、フラットシェアと呼ばれるお家の中のお部屋をお借りすることにしました。

    大変だったポイント

    • 内見して気に入ったら即日~翌日朝までには、決めて前払い金(deposit)を支払い、すぐに住み始めなくてはならない。しかも売り手市場なので選ばれる身。
    • お部屋の設備だけではなく、シェアメイトの雰囲気や周辺環境が大切なので、日本で決めてから行くことは難しい。地の利があったり、オンライン内見に対応してもらったり、紹介があれば、まだありうるかもしれないです。
    • とにかく高い。ちょっと前までは、シェアなら安ければ£450(81,000円 2023年9月現在 以下同)~£600(108,000円)で住める。という話だったのに、今は£600(108,000円)はお宝物件、£700(126,000円)なら安い、£800(144,000円)で普通みたいな相場でした。一部屋ですよ。
    • 物件情報にメッセージを送って内見の予約をするのですが、10通送って1件返信が返ってくれば良いほう。

    内見を申し込むまで

    在英の日本人向けコミュニティサイトMixbで探す方も多いのですが、日本人だからといって安心で気が合う!という保証も無いのと、そんなに良い物件が見つからなかったので、イギリスで一番ポピュラーなお部屋探しアプリSpareRoomを使用しました。仲介手数料とかは無いのですが、メッセージを早めに送ったりするための有料会員(一週間£11.99 2,100円)に登録して、事前に予約していたAirbnbの宿泊期間、一週間半以内に物件を探そうと決めました。

    良さそうな物件を見つけたら、まずはメールをします。大体僕が送っていた文章はこんな感じ。

    Dear XXX,
    ーXXX様へ

    Hello! My name is XXX, I came across your lovely flat #XXXXXX
    ーこんにちは、XXXです。あなたの素敵なお家 #XXXXX(物件管理番号) が目に留まりました。
    I’m staying in London with a working visa for 2 years from 9 SEP 2023.
    ーロンドンに就労ビザを持って2年間滞在します。
    Could you arrange a viewing?
    ー内見の予定を決めさせていただけますか?

    A little bit about me: I am a XX, Japanese, working in the 〇〇 industry. Tidy, friendly and a non-smoker. I am currently looking for a room near by XXX.
    ーちょっと僕のことを。XX歳の日本人で〇〇業界で働いています。きちんとしててフレンドリーでタバコは吸わず、XXX周辺で物件を探しています。

    Thank you.
    Name XXXXX-XXXXXX
    ref#XXXXXX
    ーありがとう。名前 電話番号 自分のプロフィール番号

    物件紹介にこういうことを教えて欲しいとか、ちょっと面白い住人紹介とかをしている物件もあったので、それには追加でメッセージを足したり、自己紹介を変えたりしました。あと、銀行預金残高証明書を提出できますとか。すでにフルタイムジョブが決まっていたり、学生なら、もう少し返信率高いかもとも思います。とにかくあちらも死ぬほどメッセージを受け取っているので、特に個人の大家さんには興味を持ってもらえそうな文面を心掛けました。自動送信(bot)お断り。みたいな記述も見かけました。

    多くを望んでられないのと、仕事先が決まってるわけじゃないので、アクセスのよい Zone 1~Zone 2(東京23区内くらいのイメージ)で、ベッドと机があって、キッチンや適切な数の洗濯機があること、同居人いい人そう、ある程度清潔、変なハウスルールが無い、最低契約期間が6カ月以下(暮らしてみないとわかんないことも多いので)、くらいで探しました。語学学校に通う人とかだったら、ロンドンよりも南に一時間行ったBrightonや、ManchesterやCardiffなど、ロンドン以外でまずは落ち着くのもありだと思います。

    内見歴

    まあそんなこんなで、ロンドン到着早々、時差ボケしつつ次々とメッセージを送ってみるわけですよ。でも一向に返信が来ない。来たと思ったら自動送信のお祈りメール。結局内見に行ったのは4件。内見希望を出したお家は51件でした。6日で。

    2日目 最低な大家に遭遇

    お部屋は必要十分。都心へのアクセスも良い。でもリビングとかから感じる負のオーラ。
    大家と話していると「XXX人は嫌いだ。でも日本人は良い。さっき内見に来た日本人はXXX(セクハラ)だった」とか「ゲイやレズビアンはこの家に入れたくない」みたいな差別発言を当たり前のように繰り返してきたので、絶対にここには住まないと決め、物件を後にしました。さすがに酷すぎてSpareRoomに報告しましたが、証拠がない。録音でもしておくべきだったか。初っ端から、かなり折れました。同じアジア人の中でも特に差別や迫害を受けやすい地域の人とそうでない人がいるという現実にも直面しました。生まれる国なんて選べないだろうが!(とても強い怒り)しかし、こんな人は本当に少ないし、イギリス内でも嫌われているので、安心?してくださいね。

    4日目 エージェントってどうなんよ

    イギリスの住宅ローンの金利が上がってしまったことで、投資目的で個人が所有していた物件が手放され、不動産エージェントが買い占める。みたいなことが起きているようです。リビングルームも一部屋として貸し出し、最低限の家具だけ揃えて、雑に貸し出す。みたいな物件もあります。もちろん良いエージェントもいると思うのですが、全部屋空いた状態だから誰と住むかもわからないし、値段のつり上げを仄めすし、契約期間は長いしで、これ以降は避けることにしました。しかも土曜日の深夜3時とかにメール送ってくる英国エージェントなんて信じられない(笑)

    この頃は内見のために1日10kmとか歩いていて、地形を知るには良かったけど精神的にすっきりしなかったので、どんよりしてました。そして、予算を£700から£800に吊り上げました。現実的だったと思う。

    5日目 やっと素敵な内見

    小さいけれど、綺麗で可愛いお部屋だった。ようやく安心できるような内見ができてウキウキしつつ、前途多難だったので、すごい緊張していて「あなたずっと笑顔で素敵ね」と言われ「いや、日本人の一部は緊張すると笑うんです」みたいな和やかな話ができたりもした。ただ、シェアフラットというよりはホームステイに近いような感覚で、3人の姉妹とそのパートナーや子供、彼氏と同居するお家。5ちゃいの子供と一緒に住んだこと無いもんなぁ…と思い、ちょっと考えたいと返信。帰りがけに「きっとまた会える気がする」って声をかけてもらえて、印象的でした。

    6日目 絶対ピザ。いっつもピザ。

    日本でいう「まいばすけっと」のような、コンビニのような、TESCO EXPRESSのパスタやパンが美味しく手頃と判明して、ちょっと調子が上がってきた頃、素敵なお家の内見予約ができました。

    「大家兼同居人は役者をしていて、絶対ピザ。いっつもピザ。もう一人の同居人は、Netflixについて語ると止まりません。全部の番組。多分…アマプラとディズニープラスも」

    こういうユニークな紹介文の物件は大体人気なので返信もらえたときは嬉しかった。ちょっと郊外だし、予算より高かったけど、自分の部屋が広く、使えないけど暖炉がある、素敵なお部屋でした。出迎えてくれた方がちょうど日本語を勉強してる。みたいなところから、話が盛り上がって、内見なのに1時間くらい喋りこんじゃいました。

    その後5人くらい内見が予定されていて、その中から選ばれることに。絶対いけるでしょこれ!って思ってましたが、僕は選ばれませんでした。けれど、とても優しいメッセージが送られてきました。まあ、候補が他にいるなら英語がきちんと話せて、固定給の仕事に就いてる人のほうが安心はできるよなぁ…。

    7日目 さて、どうするか。

    この時が一番つらかったかもしれない。ちょっと自分の思考能力や感受性が低下するのがわかりました。自分が安全に暮らす場所を見つけられないと、こんなにも苦しいものかと呼吸すら浅くなっていることを実感しました。

    返信を待っている間にもメッセージを何通も送ったけど、エージェントを避けたら返信率が低く、かつ、この後メッセージのやり取りして、内見して、決定を待つなら、泊まる場所も探さなきゃいけないし、仕事探しは遅れるし、でも住む場所は重要……。と、考えあぐねて、5日目のお部屋に打診してみました。ちょっと遅くなってしまったので、ダメもとだったのですが、なんと、待っててくれました!

    ロンドンでお部屋を手に入れた!

    そして、こんなお家に住むことに決まりました。正直、家族と暮らすことが心配で、細かくお家のことを確認したりしたのですが、誠実に返答してくれたことと「もし、質問や問題が生まれたら引っ越し後でも相談の場を設けましょう」という提案をしたら「私たちはいつも言い争いはせず、誰とでも最善の解決法を探そうとしています(We are not arguing in general, we are always trying to find the best solution for everyone)」と、返答してくれたことに信頼度がぐーーんと上がり、安心して引っ越しに取り掛かることができました。

    家が決まったってことは、仕事探さなきゃ。っていうのは、またの機会に。

    (2024年に再び家探しをした記事も執筆しました)

    特に参考にさせてもらったサイト

    在英日本人に聞く!イギリス家賃事情【YMS】
    ロンドン 家探しで使う英語はコレだ!
    ロンドンでの部屋探しが大変すぎた 小林弘幸

    こういった情報にとても助けられたので、僕も記録を残してみました。それこそ夏目漱石が120年前にイギリス留学をして苦労したりしているという事実にすら励まされました。

    イギリス生活御用達アプリ

    イギリス生活や海外生活で使うあれこれには、友達紹介でもらえる特典が多いので、もし下記のリンクを使っていただけたら、僕もあなたも特典があるので生活が潤います。ちなみに、各サイトやアプリの使い方は「○○ 使い方」で素晴らしい記事たちが出てきます。

    WISE:とても安いレートで海外送金できる。ちょっと複雑だけど海外生活や旅行に必須なアプリ。デビットカードも作れるので、海外旅行の際にもお勧めです。 紹介リンク経由で75,000円分の送金手数料が無料になります。

    MONZO:イギリス在住者向けの無料で作れるオンラインバンクです。給料の振込口座として使うと1日早くお給料を受け取ることができます。お互いに£5もらえます。

    giffgaff:日本に無料でSIMを送ることができます。そのため現地に着いた瞬間からスマホを使えるのでとても安心しました。このリンクからの申し込みで、お互いに£5獲得できます。

    もし、この記事書き手の天羽尚吾を知らないよ~という方がいましたら、作品をご覧いただいたり、Instagramをフォローしてもらえたら嬉しいです!

  • 父が十万くれた。

    父が十万くれた。

    あまり家族の話はしてこなかったし、意図的に避けていた。
    僕にとって「家族」という価値観がよくわからなくて。別に自分の家のことだけじゃなくて。だけど、無条件で愛したい人たちもいるから、気分を害したくないなと思っていたのもある。でもちょっと話したいことができた。

    実家はかなり貧乏だった。

    とはいえ一人っ子だし共働きだから、ありがたいことに、ダンスを習ったり、映画や芝居を見る機会は得られた。ただ、ちょっと浮き世離れした人たちだし、お金を稼ぐことにプライオリティを置いていない人たちだったから、子どもの頃から貧乏を肌で感じていた。そしてそれは当時の僕には結構辛かった。ないものねだりでもあるかもしれないけど。

    父は、木か人かで言うと、だいぶ木よりの存在。
    あんまり父からとやかく言われたことも無いし、送り迎えとかたくさんお世話にはなったが、辞書に載っているような愛情を感じることは少なかった。それでも、適度な距離感が心地良かったし、面白い人だなと思っていた。

    そんな父はあまり会社勤めや対人関係を深めることが得意ではなく、僕が生まれる前に会社を辞めてからは母の自営業の手伝いをしていた。だか、その商いも縮小し、今ではアルバイトをしている。

    いくつかの怪我と病気が相まって、あまり遠出もできなくなったし、趣味だったバードウォッチングも写真のデータが事故で消えてしまったからはあまり行ってないらしい。最近の空いている時間は、ずっとスプラトゥーンとポケモンGO、録画したアニメやドラマを見ている。老後のために運動とか脳トレしてよって思うけど、無責任に言えない。彼はもしかしたら、思っているよりも調子が悪いのかもしれない。

    なんでこんな長々と彼を語っているかというと

    私はなんでこの人が10万円をくれたかが理解できないのだ。

    家も古いんだから、そのお金でお風呂を直したり、アイスが溶ける冷凍庫を買い直したりしてほしい。僕は、自分で手一杯なので仕送りもしていない。正直介護を考えると気が遠くなる。

    父からプレゼントをもらったことは殆どないし、お小遣いをもらったこともなかった。そして彼にとって簡単に稼げるお金じゃないこともよく知っている。

    なのになんで?

    もしかして
    この人もしかして、僕を応援していたのか?
    彼なりに愛していたのか?
    気にかけてくれていたのか?

    まだ僕には理解できない。

    親と子だから。みたいな事で済ませたくないし、木に尋ねても何も返ってこないだろう。
    真意なんて特にないのかもしれない。
    多分僕に何かを求めてるわけでもないと思う。

    だから何。
    この十万円はなんなんだ。
    彼が働いた時間を分けてくれたこのお金は何なんだ。

    僕にはまだわからない。

  • 家の裏で拾ったから、うら。

    家の裏で拾ったから、うら。

    ロンドンへ行くことが決まってから、100回以上泣いているのは、愛猫のうらと離れることについて。

    とはいえ僕がどんなに泣いても、説明しても、二年会えないことは通じないだろう。えぐ…

    猫と暮らしている人は、それぞれの愛の形があると思う。僕は、認識と、言葉が通じないけどコミュニケーションはとれることに、深く安心する。

    多くの人間は、知らぬ間に他者をジャッジしカテゴライズしたり、されたりしている。出来得る限り先入観なく人と触れたいと願っていても、まだ。

    しかもそれが、国籍、体型、貧富、性別や年齢、自分じゃどうしようもできないことや、世間のカテゴリーに当て嵌りたくないときさえも作用してしまうことがある。そしてその価値観は、お互いの思いや歴史に作用される。どんなに好きな人とでも残酷にすれ違うこともある。

    だけどうらは、メシを出す、毛を梳かす、痒いところをかく、冬は暖かく、夏は涼しい奴、くらいとしてしか認識していないだろう。それが大変ありがたく、心地良い。

    別にうらは僕がどんな格好をしていようが、肌が荒れてようが、オーディションに落ちようが、貧乏だろうが、英語が思うように話せなかろうが、世界中の人から嫌われようが、どーでもいいのだ。それをジャッジする価値観がない。

    だけど今夜も、外敵に襲われづらいだろうし、撫でるし、いい枕であるという理由、もしくはなんとなくで寝るときに側に来てくれる。

    僕は自分勝手に、その信頼を愛と呼ぶ

    おやすみなさい。

  • メメント・不安

    メメント・不安

    ジェットコースターって怖いじゃないですか。

    でもどうしても乗りたい時があって、その昔「どうやったらジェットコースターが怖くならないか」という研究をしていました。前から3番目くらいに乗るとか、落ちるときは体の力を抜くとか、なるほどと思ったのが、人間っていきなりテンションが上がったり驚いたりすると、恐怖に拍車がかかるんですって。だからジェットコースターが昇っているときに、落ち着こうと深呼吸をして過ごすよりも、その段階から恐怖を予測して「怖いー!」と叫んでテンションをあげていたほうが、落下した時の恐怖に驚きが加算されないそうです。

    その頃から僕の人生は常に不安の予測とともにありました。起こり得る災厄を前もって想定することで、実際起きても「想定内…想定内だから…」と、自分を落ち着かせることができる。後ろ向きなんだか前向きなんだかわからないけど、当たったり外れたりしながら、今もそうやって生きています。

    ということで、今、僕が一番不安なのは、もちろんロンドンでの生活です!イエイ!
    僕の不安ランキングを作ったので、それが1年後、2024年8月の天羽尚吾さん的に予測が合っていたのか、講評いただこうと思います。お願いします。(もしかしたら帰ってきているという可能性も含めつつ)

    ロンドン生活の不安ランキング

    ↑最もキツイ
    うら(愛猫)と離れること
    物価の高さ
    日本語が通じない
    サバイバルジョブ
    オーディション
    冬の日照時間の少なさ
    日本の友達と離れる
    知らない人とのルームシェア
    レイシズムとの直面
    病院とか役所関係のシステム
    歯医者が高い
    移民としての暮らし
    公共交通機関の利便性
    演劇や映画への理解が追いつかなさ
    銭湯や浸かれるバスタブがない
    見知ったお店や場所に行けない
    日用品のクォリティ
    治安
    暑さと寒さ
    日本食が遠い
    硬水
    街にトイレが少ない
    ↓意外とヘーキ

    先日、同じYMSビザで2年間ロンドンに滞在した方とお会いする経験があったのですが、耳年増になっていて、既に多少のロンドンあるあるについていけてしまったので、割とリアリティのある不安ランキングじゃないかなと予想しております。ちなみにロンドン滞在が決まった時に一番最初に不安になったのは硬水で、肌が荒れたり髪がガサガサになったりする恐怖にしばらく怯え、軟水の町カーディフに住むか?まで考えていたのですが、もちろん硬水に対応したシャンプーや美容法(ふき取り化粧水のビオデルマとか)があるし、コーヒーや紅茶は軟水より美味しく出るらしいし(意外と出汁も硬水にあうらしい)やっぱり演劇の本拠地はロンドンなので、ロンドンに暮らす予定です。

  • 肌に黒線

    肌に黒線

    この間、海の近くのプールに行ってトランスジェンダー問題を熟読するという日があって、大変良かったのですが、その日に友達が撮ってくれた「水着でプールサイドにいる写真」をインスタのストーリーにアップしました。特段反応もなく穏やかに消えていったのですが、自分にはちょっと革命で。

    僕は人に肌を見せるということがあまり得意じゃなかったんです。それは学校のプールの時間とかもそうだったけど、役者になった後は、どこまでがプライベートな肌で、どこからがパブリックな肌なんだろう。と考えることもあって。自分の身体への自信のほかに、もしかしたら「裸=ポルノ」という価値観に対する違和感があったのかもしれない。セクシーな裸やポルノな肌があって全然いいんだけど、あまりに裸というものがセンセーショナル過ぎると齟齬があるなと。

    でもディミトリス・パパイオアヌーが示す裸とか、舞台『3×3−(1)ポリグラフ 嘘発見器』とか、Sex Educationの表現とか


    性的ではあったりするけど、興奮を煽るような提示ではなかったりして、徐々に自分の中で折り合いがついてきた。

    んですが。

    決意はできた割に、あんまり俳優としても肌を露出するような機会ってなくて。いやなくてもいいんだけどさ。だからあの投稿は、自分の今の思考と、パブリック感とのギャップを埋めるため、自分の折り合いのために投稿したんです。上半身だとしても突然僕の肌色がワッて出てきたら嫌な気持になっちゃう人とかいたら…という悩みに結論は出なかったのですが、僕のSNSだし…

    とはいえコミュニティガイドラインはきちんと守りたいと思って規約を改めて読んでいたんですが

    芸術的・創造的なヌード画像をシェアしたい場合があることも理解していますが、Instagramではさまざまな理由からヌード画像を許可していません。これには、性行為や性器、衣服を着けていない臀部のアップの写真、動画、デジタル処理で作成されたコンテンツなどが含まれます。女性の乳首の写真も対象となりますが、授乳、出産時や出産後、医療関連の状況(乳房切除手術後、乳がんの認知喚起、性別適合手術など)、または抗議活動に関する写真は許可されます。ヌードの絵画や彫刻の写真も許可されています。

    Instagramコミュニティガイドライン

    と書いてあって。なんでそこに男女の性差が?!てか、それをどうやって判断するの?(アップにすれば誰の乳首か分からないでしょうという抗議活動をしているアカウントもある:@genderless_nipples)

    じゃあ、ここで上半身の写真を上げるということは「男性に見える」という特権を乱用しているということでは…?胸に黒線でも入れる…?とかもいろいろ考えたんですが、ごめんなさい。特権を利用しました。はい。僕にとっての大事なクイアネスの表明でもあるところもあって…それを盾にしていいものでは無いとも思うんですが…

    そしてこれも、やっぱり僕が抱えた問題の根幹に繋がると思うんです。
    自分の身体をどう受け止められるかというのが、あまりに世間によって舵取りされていると。

    僕は、僕の表現道具としての肌も、セクシーさの表現としての肌も、猫を抱くための肌も、全部自分のものにしていたいし、自分が決定したいよ。公開したものの受け取り方はある程度委ねるけど、肌の上にも肌の下にも精神が宿っていることを忘れないでほしい。特に大切な人たちには。

  • どこで誰に向かって呟くか

    どこで誰に向かって呟くか

    ブログ書くのなんて何年ぶりだろう。

    そもそも、僕はデジタルネイティブの申し子で、6歳のころに自分のHPを立ち上げたところから僕とインターネットの歴史は始まる。そのあと、ハンゲームとかCafestaとかCURURUといったサイトを転々としながら(誰かとすれ違ったことあるかな)、mixiが18歳未満の利用を解禁してから、初めてリアルとインターネットを行き来するようなコミュニケーションを経験した。mixiの日記なんて、本当に恥ずかしくて消してしまいたいけど、こんな恥ずかしさは逆に貴重だ。と、下書きを残しているのでたまに見に行く。そして、寝込む。

    俳優として活動を始めたころから、本名でのTwitterを始動させたが、使い方は大いに悩んだ。なんどもなんども下書きを繰り返して投稿したり(そして大体そういう呟きは伸びない)、間違ってファボってしまったり、当時のマネージャーからリプを禁止され、ちょっと拗ねたこともあった。あと、所謂’誤爆’も何度かして、叱られたり、落ち込んだり、悩んだり、自分の発言の責任について、とても反省した。あと、多分当時はもっと仮面や装備をたくさん付けていたから、自分でも自分の運用が難しかったのだと思う。

    ここは役に立つことを書くブログではないので、経緯は他を参照して欲しいが、10年以上使ってきたTwitterが安心できる場所ではなくなってきた。まあ、その兆候はもともとあったし、そもそもSNS離れも考えてた。だけど、せっかくチマチマと増やして減らした5000人へ向かって呟ける場所が、どんどん空虚になっていくのは正直結構つらかった。システムだけじゃなくてあそこにしかなかった出会いやらコミュニケーションやらが奪われてゆくのは辛いね。

    で、いろんな新SNSに移ったりSNSを辞めたりする人を横目に、ちょっと前からはじめたInstagramをメインに動かしつつ、やっぱ文字を打つところじゃないな…と感じた時に、あ、そういえばHPがあった。と思い出した。サーバーを自分で借りてるから、広告は出ないし、自分が壊さなければ壊れることもない。誰かと繋がったり何かのきっかけで、何万人もの人から見られる!みたいなシステムはないけど、ここには、トランスヘイターや陰謀論を信じる書き手は居ないし、それを擁護するような管理人もいない。

    全然続かないかもしれないけれど、ちょっとお試しです。

    去年、NOW LOADINGの制作風景を話すポッドキャスト「バックステージ」を配信していたのだけど、それも「ここまでわざわざ来てくれた人達へのお話」というコンセプトがあった。このブログもちょっと不便なところにあるからこそ、話せることがあるのかも。ちなみにポッドキャストをまたやることも考えたのですが、結構編集とかが時間かかるの…ホントに…半日潰れるんよ…なので保留です。

  • TVCM トメダインコーワフィルム「歩かず走らず」篇出演

    TVCM トメダインコーワフィルム「歩かず走らず」篇出演

    TVCM トメダインコーワフィルム「歩かず走らず」篇に出演しております。
    軽やかなスキップがお気に入りです。お見逃しなきよう、ぜひご覧ください!
    https://hc.kowa.co.jp/tomedain/

    https://youtu.be/k6s20gv7tkc