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  • イギリス演劇50本総まとめ

    イギリス演劇50本総まとめ

    配信も含め50のミュージカルや演劇を観ました。基本的に、劇場に楽しみに行くというよりは、インスピレーションを得たり、観客の反応やプロデュースの方向を探るような感覚で通っているので、あまりワクワクしないというか、身もふたもない感想が多いことをお許しください

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    1 Frozen the Musical ★★★★☆

    ハンスやクリストフとの愛欲より、エルサとアナの愛や、エルサのアイデンティに焦点が当たっているように感じて、クィアな演出に感動。

    2 The Burnt City by Punchdrunk ★★☆☆☆

    前回ロンドンに来たときに衝撃を受けたイマーシブ劇団Punchdrunkの新作だったが、大味になり、観客の楽しみ方が偏り始めてきていること、俳優が観客に絡む演出など、苦手だった。

    3 Hamilton ★★★☆☆

    正直物語は、ホモソーシャルだし、決闘はするな、都合よく女性を描くな。なんだけど、パフォーマンスが凄すぎて(しかもロタリーで最前列が当たって)前半40分くらいずっと泣いてた。You’ll be backでも泣いてたので、キングジョージに怪訝な目をされるファンサ貰った。

    4 Sunset Boulevard ★★★★★

    Jamie Lloydのカメラを大胆に使ったモダンな演出。「この作品って既にオールドスクールだし、ハリウッドの資本主義ってねぇ」を逆手にとって、老いとかエゴの輪郭をビシッと描いていて最高でした。

    5 My Neighbor Totoro ★★☆☆☆

    家族で観れる新作演劇があまり成功していなかった中で、多くのアジア人キャストを集め、組織的な人種差別から立ち上がろうとするバービカンが創った意義は大きい(が、しかし…)。プロダクションとして評価をするが、そもそもとなりのトトロを演劇にする際にセリフが必要なのかとか、芝居の流れとムーブメントの断絶、突然の歌唱シーンなど、美しくなかった。

    6 Crazy for you ★★☆☆☆

    1992年のブロードウェイミュージカルで、コメディの手数が多いし、パフォーマンスは洗練されていたが、女性がモノとして消費されている感が凄くて、92年ってこんな感じだったのかと驚いた。「踊りがあれば幸せ」ではないというか、踊れる環境自体、どれだけ恵まれてるかみたいな批判的視点が欲しい。

    7 DEAR ENGLAND ★★★☆☆

    スラングや、アクセントが分かり切らないことも多く結構悔しかった。テッドラッソを観た後だと既視感を覚えてしまうが、会社帰りに同僚と来るような新規層も獲得したらしく、素直にすごいと思った。サッカーの演出は、2.5次元でもっと高度な演出を観ている。

    8 Show Stopper ★★★☆☆

    即興のミュージカルショー、休演日の月曜日にマチルダの劇場を借りて上演されている二毛作が面白い。ミュージカルの教育やcommon senceがあれば、こういうことが可能なのかと爆笑したし、なんか近しいことはいつもやっている気がする。しかし、パフォーマンスとして成立している実力とシステムが凄い。笑い転げた。

    9 Pacific Overture ★★☆☆☆

    太平洋序曲は、高校生の頃に大好きなミュージカルだったが、今はこれをどうやって観れば良いのか、兎に角、植民地支配への批判が足らず、目新しさも無く、ステレオタイプを助長する、多くの課題を残すミュージカルだった。しかし、どうやったら演出できるのかと言われたら、新作ミュージカルにしちゃだめですか。と答えたい。

    10 Cold War ★★★☆☆

    映画が原作の舞台。ステージングがスムーズで美しかったが、映画の印象を超えない。音楽も映画のほうが多様だった。この舞台の上演がいつ決まったのかによるが、イスラエルやロシアによる戦争がすぐ隣で起こっている中で、演劇の意義がぼやけた。

    11 Cabaret at the Kit Kat Club ★★★★★

    唸らされた新演出のキャバレー。ブロードウェイにトランスファーもしましたが、物語と歴史、その新解釈と、衣装の美しさ、キャストの個性、劇場に入った瞬間に始まるイマーシブな経験から、照明までが複雑に絡み合った総合演出が見事。友人が「あんなにクィアだった人たちが社会主義に飲み込まれる。社会主義側からはある種のハッピーエンド」と言っていて、それを目の前で体感させる威力が半端ない。

    12 Six The Musical ★★★★☆

    キャストレコーディングを何百回も聴いているので、ライブに行く位の感覚でしたが、会場全体で「We’re SIX!」となれる時代・場所に生まれて良かったと思うし、じゃあその次の為に協力して戦わないとなと、奮い立たされた。日本版SIX行きたい。自分で訳してた歌詞について

    13 Guys & Dolls ★★★★☆

    観客が俳優と同じ場所に立つことが出来るイマーシブシアターとして作られていて、中央にあるセリによって舞台がどんどん変化します。僕はお金払って舞台に立ちたくないので席に座って観ましたが、Daniel Mays演じるネイサンの派手じゃないのに機敏なムーブメントがセクシーで、スカイがゲイと踊っているところをサラが嫉妬するなどの丁寧なアレンジが相まって完成度が高かった。

    14 The Faggots and Their Friends ★★★★☆

    カルト的な詩と物語から生まれたコンサートのようなショーのような演劇のような時間。この抽象的な作品を満杯の観客で観られた幸せ。

    15 WICKED ★★★☆☆

    感想はブログに

    16 BEFORE AFTER ★★☆☆☆

    日本で何度も上演され、今回が初めてのステージでの上演となった二人ミュージカル。美しいメロディーがたくさんあったが、単なるラブストーリーにあまり興味は無いし、演出やアレンジも冴えず、何を意図して上演したのか分からなかった。

    17 Everybody’s Talking About Jamie ★★☆☆☆

    ‘And You Don’t Even Know it‘なんて、擦り切れるほど聴いていたので楽しみにしていたのだけど、ほんとに過去のミュージカルに触れて育った人が作った作品か?と思うくらい、映像演出や、曲の導入、そしてジェイミーが学園内で権力を手にして人を傷つけるために使ってしまうストーリーが残念だった。ディーンがかわいそうすぎる。

    18 Operation Mincemeat ★★★★★

    出会ってしまった。フリンジから駆け上がって、オリヴィエ賞を受賞し、今度はブロードウェイに漕ぎ出すブリリアントな作品。正直、ナショナリズムや行ってきた植民地支配への視点が欠けていて、顔をしかめるところもあるのだが、5人の俳優が性別や年齢を超えて演じる創意工夫のある演出や、巧妙な音楽、一番「おもしろい」作品だった。

    19 INK ★★★☆☆

    パパイオアヌーの新作だったが、前作のほうが複雑で好み。

    20 King and I ★☆☆☆☆

    ステレオタイプなアジアの描き方や、植民地支配への批判のなさ、何故この作品が演出を変えずに上演されているのか、しっかりとダメな作品だった。Blueskyでの感想

    21 Shrek The Musical ★★★★☆

    ディズニー映画のミュージカルを、よく吸収した上で、アレンジを効かせた良作アダプション。シュレックのソロ曲終わりに観客が拍手したのに「ケッ」ってはけたところがかっこよかった。

    22 MJ the Musical ★★☆☆☆

    音響は最高で、パフォーマンスは上手だったけど、マイケルジャクソンの新しい側面を描いていたわけでもなく、権力を持った状態でパワハラ気質っぽいところなど、今この人をショウアップさせて、何がしたいのか。ストーリーが凡庸だった。

    23 Standing at the Sky’s Edge ★★★★☆

    60年の時を交差させながら、イギリスの郊外にある団地に住む人々を描いたミュージカル。ポップで詩的なナンバーと、繊細でパーソナルな話が好みだった。でも悲しさの中心は殺人事件にしないほうが良いと思う。

    24 The Seagull ★★★★☆

    サンセット大通りのジェイミーロイドによるかもめ。B級感を楽しみつつ、テーマ設定が巧妙。

    25 Don’t. Make. Tea. ★★★★★

    眼咽頭型筋ジストロフィー (OPMD)で足が不自由になり、視力の低下したクレアの下へ、助成金を申請できるかを審査する人が来る。ジョークを言えるくらいなら健康に問題ないはずだと、助成の基準を上回ってしまい、フルタイムジョブを紹介すると言われ、松葉杖で職員を殺してしまう。BSL(イギリスの手話)と俳優の動きを説明する音声、字幕が演劇に組み込まれていて、素晴らしい体験だった。ことあるごとにこの芝居を語っている。

    26 Operation Mincemeat [2nd]★★★★☆

    初めての2回目の観劇だよ。イギリスで。新キャストで3回目も観たけど、えぐみが減ってしまった。ハーモニーは綺麗。

    27 Two Strangers (Carry a Cake Across New York) the Musical ★★★☆☆

    二人芝居のミュージカルで、大きなストーリー展開は無いのにキャラクターの描写がユニークで引き込まれる。

    28 MOULIN ROUGE THE MUSICAL ★★★☆☆

    友達と観にいったら、誕生日祝いにワインを開けてくれて初めてミドルクラスのように芝居を観ましたが、大正解。これはワイン片手に笑って盛り上がって観る、くだらなくて面白いミュージカル。クリスチャンの歌が上手すぎて、君が歌姫。Blueskyの感想

    29 Sister Act The Musical ★★★☆☆

    キャストの歌唱力のバランスが断トツで、ダンスがしっちゃかめっちゃかでも満足度高かった。

    30 HEX ★★★☆☆

    母親のリアルな悩みがおとぎ話に組み込まれているのは良かったが、棘が無い。

    31 HADES TOWN ★★☆☆☆

    すごい楽しみにしていたんだけど、ストーリーがつまらなさ過ぎて、粗ばかり気になった。オルフェウスが中音域が綺麗な人で、彼が作曲したという設定の高音域メロディーとマッチしてなくて、音楽家の道諦めたほうが良いよ…となった。せめて、主人公カップルをレズビアンにするところから出直しておいで。

    32 Splited Away ★★★☆☆

    目を見張る美しいシーンがたくさんあるので、わざわざアニメを再現しなくても良いのにと思った。アンサンブルワークや舞台セットが美しく、バランスが良かった。でもたぶんもっと笑えるシーンが無いとBritish観客は満足しないと思う。

    33 Les Misérables ★★★☆☆

    レミゼを初めて観た。新演出(とはいえ10年くらい経つんだろうけど)っぽい1幕終わりの振り付けとか、ジャベールの浮遊には唐突と思ったけど、死んだ同志たちが蝋燭消すのはカッコよかった。進撃の巨人ミュでもやってほしい。それにしても白人男性が書いた女性像だな…。今や名作というほどじゃない。

    34 Viola’s room ★★☆☆☆

    イマーシブ劇団Punchdrunkの新作は、ヘッドホンを装着し、セットの中を歩いてゆくプロダクションだったが、アトラクションのQラインみたいな感じで、人の息吹が感じられず演劇とは感じられなかった。新しい手法を実験したのは面白いけど、演劇の歴史を変えたような劇団もこんなに分かりやすく迷走する事実のほうが面白い。これなら美術館でオーディオコメンタリーを聞いていたい。

    35 Marie curie ★★★★☆

    韓国で作られたアダプション。非常にバランスが良かった。韓国がイギリスの伝記ミュージカルを創って持ってくるってすごい切込みで、私はとても好き。Blueskyの感想

    36 The little big things ★★★☆☆

    disableになった自分は自分自身を受け入れてて、ableだった自分が受け入れられないという構成が、良く練られていたミュージカル。感動するし、周りのサポートが強く、ポジティブな気持ちになれる。ただ良く出来ているからこそ、白人の割と裕福な中流家庭ありきな人生に、疎外感も覚える。

    37 Next to Normal ★★★★☆

    双極性障害に苦しめられる女性とその周囲を描いた作品で、その象徴として登場する息子の幻影が恐ろしくてグロテスクで、心を抉られた。2幕の怒涛のリプリーズや、ラストの現実的な終着点含め、素晴らしかった。キャストのバランスも良く、映像収録されていたので、配信でも見れないかなと期待。

    38 Harry Potter and the Cursed Child Act 1 ★★☆☆☆
    39 Harry Potter and the Cursed Child Act 2 ★☆☆☆☆

    あれだけトランス差別を繰り返している著者が青年同士の愛を描くって、どうしようもないなと思いながら、長い鑑賞に耐えた。色んな特殊効果はあるものの、それらが日常なのがハリポタの面白いところで、演劇鑑賞としての快感にはつながらない。デスイーターと、ケンタウロスのみ、美しかった。

    40 Kathy and Stella Solve a Murder! ★★★★☆

    殺人事件オタクの2人がポッドキャストを始めたら、本当の殺人事件に巻き込まれて…?!というヘンテコでミニマムな世界で、アンサンブルワークやマイノリティへのコミュニティ感が温かかった。「犯人はあいつだ」以降が全く盛り上がらず、ミステリーの難しさも感じる。

    41 Instant luv noodle ♥♥♥♥♥

    友達の宮野つくりさんが書いた作品で、ドタバタコメディと、心情に迫るギャップが愛おしい作品。

    42 Slave Play ★★★☆☆

    アメリカの初演では上演中止署名運動が起きるほどの問題作。しかし、今、ロンドンで観るとパンチが薄れてしまっている。Get Outが上映された翌年にアメリカでこれを見ていたらもっと印象が違うのは分かる。社会のありようは急速に変わっている。

    43 Why am I so single? ★★★☆☆

    SIXのクリエイター陣による新作が、まさか面白くないなんて思いもしなかった。パジャマパーティーをのぞき見しているような作品で、パフォーマンスは圧巻、曲も良い。だけど、大きい劇場で観るミュージカルとしての満足度が低く、ストーリーの吸引力が弱かった。クィアの中でも一部の人しか巻き込めていないような気がする。

    44 Kiss me kate ★★★★☆

    流石に古い作品なので、展開はゆるく退屈なシーンもあるが、回転式の舞台と元の脚本にあるミソジニーを皮肉り、メインではないものの圧巻のダンスシーンで同性同士のペアダンスがあったり、画期的ではないが良質なリバイバル。

    45 Mean Girls ★★★★☆

    学校の序列に参加しないクィアがクールな語り手となって、誰がMeanなのかを突き止めるのではなく、構造を解体することに着目しているのも良かった。Caseyの振り付けは、音楽との一体感を生むでも、新しい解釈を与えるでもなく、終始ごちゃごちゃしてて酷かった。(去年トニー賞獲ってましたけど)

    46 One Small Step ★☆☆☆☆

    俳優の緊張感のある芝居と、セットデザインは良かったが、意図の汲み取れない演出、退屈なのに意義もない物語が残念だった。日本語の脚本で観たら異なるかもしれないが、女性が子供を産む・産まないという話に、何故職場が絡んでくるのかはイギリスでは理解されないだろうし、日本だとしてもそれを問題にすべきで、夫婦喧嘩として見せるものではないのではないか。

    47 LOVE BEYOND ★★★★☆

    この芝居を観るためだけに飛行機に乗り、スコットランドのGlasgowへ。手話使用者で認知症になった男を描く。パントマイムや鏡を使った舞台でしか味わえない演出が素晴らしくて、緊張感、慈しみ、エキサイトメントのバランスが上品、ストーリー自体はややオールドスクール。そして、この劇団がKAATと共同制作する『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』が11月に神奈川で上演。イギリスで観るためにはもう一度グラスゴーに行かなくちゃいけないのか…。

    48 The Lefman Trirogy ★★★★☆

    今更私が語らなくても…上の方の席で観ると、舞台セットの天井によって何も見えない時間があります。

    49 The Curious Case Of Benjamin Button ★★★☆☆

    映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」と同じ原作をミュージカルにした作品。出演者全員が演奏家でもあり、臨場感のある音楽経験が楽しい。このミュージカルがBESTになる人もいるだろうが、個人的には佳作の域を超えない。この設定ならもっと面白い演出や物語の展開があるはず。

    50 Macbeth ★★★☆☆

    観客はヘッドホンを付けて、バイノーラルサウンドを使った演出を目撃するマクベス。魔女が耳元にいるような感覚、策謀するささやき声が、映画と演劇の中間のような緊張感を生む。これまで、シェイクスピアは英国アクセントでないと。と考えていた節があったが、マクベス夫人を演じた俳優のCush Jumboによるナイジェリアアクセントもまた素晴らしく、戯曲読解や言葉の意味の知識は必要だろうが、どんなアクセントでも魅力的になりうると確信。


    UKの演劇界を知れば知るほど、自分のスタンスも変わってくるし、何より良かったのは別にロンドンの舞台だからって全部面白いわけじゃないというのが確信できたこと。NTliveを観ていたときは、もっと崇高なものだという心構えの上で観ていたかもしれないし、なんならただ戯曲が面白い(字幕を読むだけで楽しい)だけだったものもある。演劇やオペラをもっと観劇したいなと思いつつ、こんな身もふたもない批評に付き合ってくれる友達はいつでも探しています。もし、もっと詳しく感想を聞きたい作品などありましたら、お申し付けください。

  • 1年経って

    1年経って

    どれくらいロンドンに居るのと聞かれ ‘just over a year’ と答えるたびに、その割には目立った成果無くない?とか、英語下手だなって思われたらどうしよう。なんて脳裏によぎりつつ、まあ私は私の時間を生きているので…と心を落ち着かせています。1年前に渡英前に不安に感じていたことを記していたので、振り返りつつ答え合わせなんぞしようと思います。

    東京で一緒に暮らしていた猫のうらと離れているのは、やっぱりきつくて一時帰国の時は再開に涙したし、ご飯あげる時の遊びを覚えててくれたのには泣いた、食意地が果てしないと言えばそれまでだけど。彼とはフィジカルな関係を築いているので、ビデオ通話などは成立しないし。たまにクッションを抱いて寝てます。でも、引っ越しが多かったこともあって、無理に連れてこなくて良かったなとは思っています。猫への愛で記事が終わってしまいそうだから、次、次。

    不安なことは色々あったようだけど、今見返すと「慣れた」「趣向が変わった」ものが殆ど。そもそもあんまり物を買ったりレストランで食事をしようと思わないし、こっちのバイトをしているから、物価は高いなと思いつつ、なんとかなっている。移民としての、非ネイティブとしての生活はそりゃ大変だけど、それは自分の選択だし、その大変さこそが大きな経験だよなと感じています。

    ランキングに無くて、てこずったのは家探し。生活の拠点が揺らぐのは相当なストレスだし、イギリスはテナントの権利が弱いので難易度が高い。ただこれは、日本において、海外から来た人や、会社勤めをしていない人、同性カップルが賃貸の審査に通りづらいという事実も噛み締めておきたい。

    仕事を獲得しやすいのは日本だと思う。それはありがたいことに日本で色々活動を積めたから、そしてそれを評価してくれる環境がある特権でもある。例えば演劇団体の事務や、照明家のアシスタントとか、俳優や創作活動として演劇に関わり続けながら手に職を。というのは、こちらの俳優のロールモデルだし、羨ましいんだけど、確固たる経験もなければ、言語力も無いので、なかなか厳しそうでもある。というか、まず応募する勇気がちょっとでない。いや、そろそろ応募してみればいいのか。


    そして聞かれるのは、この後、ロンドンに残りたいか東京に帰りたいか。現実的な指標で言えば、食べていけるだけの仕事があって、創作し続けられる国に住みたいけど、それがどちらなのかは分からない。確かに日本は政府による文化支出額がイギリスや韓国と比べると低いし、ミュージカルを育てるシステムがあるかと言われたら難しいなと思うけど、イギリスで助成金を得るのも、ユーモアのセンスを飛び越えて創作するのももちろん難しい。

    安い席を選べば気軽に演劇に行けることや、ドラフトでもとりあえず発表する機会があることには、助かってる。でも、実は日本で創作する機会にお誘いいただいていたり、これを日本で創りたいなーと思っている(ただ思っている)作品もあったりするので、ロンドンで学んだことを活かして帰るのも楽しみ。なので超半々です。どっちも好きで、どっちも難しい。できたらどっちも。でもそれがVISA的に難しいのも分かってる。

    もし日本に帰るとしたら、多少洒落臭くても、ロンドン帰りのブランドを掲げて、「あいつ変わってんな…でもイギリス帰りだからしかたないか。まあ悪い奴じゃないし」って思ってもらう作戦を練っています。なんかその、頑張って日本社会に馴染もうとしたりもしたんですが、それより分かりやすく社会からちょっと浮き出ておくことによって、余計なことはスルーしてもらい、仕事っぷりとかにフォーカスしてもらえたらなって。

    こうやって思い返すと、随分地に足がついたなと思う。落ち込むことも苛つくこともあるけど、なるようにしかならないのを理解できたし、こっちでできた友達とのおしゃべりや、日本に住む友達とのビデオ通話にもたくさん助けられている。東京に帰ってもまたシェアハウスしたいな。そんな気持ちで10℃の街に繰り出します。

  • 帰ってきた!過酷なロンドン部屋探し2024

    帰ってきた!過酷なロンドン部屋探し2024

    あれから、引っ越しして、引っ越しして、引っ越ししました。最終的には強運に恵まれてしまったので、あまり参考にはならないかもしれませんが、ほんっっとに、大変だった。

    7人家族との生活は賑やかで良い人たちだったのですが、家族同士は英語ではない母国語で話しますし、どうしても疎外感を感じることも多かったので、ゆったりとmixbで物件を探し、ベッドシットと呼ばれる小さなキッチン付きで、バスルームとシャワーのみ共同の日本人フラットに引っ越しました。

    日本人フラット

    この窓(道路はうるさい)に座って本を読んだり、ぼーっとしたりするのが大好きでした。

    電気代はめちゃくちゃ高いし、洗濯機が無かったのでコインランドリーに行ったりと、難は多かったのですが、自分のペースで生活ができるので気にいっていました。が、イギリスあるある「突然大家に追い出される」が僕のもとにも。周りでも何十件と起きているので、もうこれは法律の所為ですが、「リタイアするの」とか「家を売ることにした!」と、突然言いだし、テナント(借主)は血眼で次のお家を探すことが多々あります。仮ぐらしであることを忘れてはならないのがこの国。でも日本で俳優としてフリーランスで活動しているときも、審査に通るのが難しかった。

    先日一時帰国をしたのですが、その前日に大家に一応長期で家を空けることを連絡したら、一カ月後までに出て行ってくれと言われました。え、ここから2週間日本に帰って、その後2週間演劇のWS+本番があるんですけど…と、いっても梨のつぶて。突如無くなる家に動揺するも、いま悩んでも仕方ないと、とりあえず日本とWSを満喫し、家が見つかるまで、知り合いの家に居候させてもらうことに。

    UKの全荷物がこちら。一時帰国で日本食を買いまくったのでそれを運ぶのが一番大変でした

    フラット探し2024年事情

    さてさて、Spare Roomで探し始めたのですが、去年と比較しても、部屋が少ない、そして£100くらい家賃が上がっている。60件ほどメールを送り、10件ほど内見に行くも、徒歩20分圏内には森しかない、大家との二人暮らし(週末には大家の家族が集まってご飯を食べる)、写真と違ってど汚い、なんか雰囲気がイヤ!と、できればこれ以上引っ越ししたくないし、かなりどんよりとした日々でした。「本来£1,100だけど、君が友達以上の関係になってくれるなら£800に値下げをしてあげるよ」という連絡も来たりして、お前のこと知らんし、値下げしても別に普通の家賃じゃねえかよ!みたいなブちぎれ案件もありました。

    新しく利用したのは、Openrentというエージェント管理物件が主に掲載されているサイト(返信率良かったです)と、イケてる友達に教えてもらったFriends of Friendsというインスタグラムアカウント。信用できるサービスではないですが、家主の趣味や人柄がInstagramの投稿の雰囲気からも分かるので、割と利用している人が多いそう。大家側も、知らない人に貸すには勇気がいるので、友達の友達の紹介とかは安心みたいです。僕もずっと「家探してます~」と周りに言い続けたので、みんなが心配と耳寄り情報を集めてくれました。これはやっぱり1年間ロンドンで過ごしたからこそできることだなと思ったり。

    品川と呼んでいるCanary Wharf近くの物件もいったけど、なんか人工的過ぎる。という人の家に居候している奴とは思えない理由でピンと来なかった。

    なにが譲れない条件か

    気分を変えようと、美容室に髪を切りに行ったら、いつもと違う美容師さんにお願いすることに。家探しを愚痴っていたら、何が譲れない条件か。という話題になり、改めて考え直す。

    ・近くにカフェがあっても自分でコーヒーを淹れることが分かったので、スーパーがあればいい
    ・セルフテープを撮るから、広めの壁があるところがいい
    ・お休みに引きこもってブログ書いてたり勉強したりしてても気にしない家
    ・£700くらいで探していただけど、良いお家なら£800、それでも見つからなければ£900までは上げる決意をした
    ・どうしても合わなかったら引っ越したいから、契約期間が短いところがいい

    1年で積み重ねた住宅経験により、どんどん具体的かつ複雑になってるなと話していたら、「そういえば、うち一部屋余ってるんですけど、見に来てみます?」と聞かれ、次の日に内見に行くことに。

    えっ。

    まさかそんなことがあると思っていなかったので、セルフテープ撮るなんてうるさそうな条件も言っちゃったのに。ゲストルームとして一部屋あったけど、人を泊めることも多くないから、誰かに貸そうか。でも、どうしようかな~と考えていたところだったそうです。

    ライティングビューローのあるお部屋は心地よく、ガーデンが広く温室で野菜を育てていて、おばあちゃん犬が居て、隣の猫がよく遊びに来る、そしてなんと、これはロンドン在住の人にだけ使えるマウントなんですが……

    ソフターという水道水を軟水にする機械を導入していて、シャワーから飲み水まで、全部軟水なんです。つまり、ライムスケール(水垢)に悩まされないし、肌には優しいし、お腹にも優しいし、出汁が美味しく出るという、なんともまあ幸せな偶然。先日の一時帰国でも、如何に軟水が身体に合っているかを実感したので、日々感謝しながら生きています。

    これまでも色々あったように、これからもやっぱりこの家を売ることになったり、大喧嘩したり、なにがあるかは分からないのですが、まずはこの仮ぐらしを楽しみます。

    我が物顔で隣家から来るシシさん。
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    もし、この記事書き手の天羽尚吾を知らないよ~という方がいましたら、作品をご覧いただいたり、InstagramBlueskyをフォローしてもらえたら嬉しいです!質問もいつでもお寄せください。

  • Why Am I So Single? review: why am I so exception.

    Why Am I So Single? review: why am I so exception.

    Dazzling performance in a safe pyjama party. The show is billed as the most relatable, but for sure, I found myself as an exception.

    One of the reasons I fled Japan was to see more QUEER musicals, and many theatre productions have amused me. The revival of Kiss Me, Kate includes an energetic same-sex dance that made me Too Darn Hot. Londoners and New Yorkers may be used to these elements but still felt refreshing to me. So I was thrilled to see this musical but unfortunately, I felt out of place, like walking into a club party alone and trying to sip a half pint at the corner of the wall.

    I’ve seen great new musicals with catchy music and a fresh approach to storytelling, such as Operation Mincemeat and Kathy And Stella Solve A Murder. But, this musical stands out for its even more magnificent dance scenes, including tap and cabaret-style jazz, even when they’re just chatting in the tiny flat. The trailer for this show is sure to be gorgeous and stand out from other West End shows. I was impressed by the ensemble cast—each actor was skilled and charismatic, making it easy to remember their faces and individual talents. I admire how they’ve pooled their creativity and expression into this musical, and I hope they’re enjoying performing as much as we enjoy watching.

    We can exist together with the lovely characters in the fourth-wall-breaking moment, and it affects the audience to become this safe queer and ally space. I thought it would be fascinating if they had a dress-down night as opposed to a dress-up.

    I (or should I say we?) have tried to find ‘Over the Rainbow’ in the many plays, musicals and films—sometimes even heterosexual love or alien depictions have been interpreted in a queer way. Eventually, I reach two lonely friends who are fighting with a bee (literally they have a song just about a bee and it was hilarious) and don’t settle for the typical magical queer or a tragic dying gay. Which is amazing but also I couldn’t find what they expected us to take home, and hand over to the next generation.

    I really enjoyed this show and may go again but it also made me reflect on how to create next queer production, if I consider a broader spectrum of minority communities. I believe the only way to represent minorities isn’t to leave others out. I can’t wait to read other reviews and listen to the cast recording soon.

    ★★★

    Why Am I So Single? is now playing at the Garrick Theatre Until 13 Feb.

  • どんな異人として住み着くか

    どんな異人として住み着くか

    「一時帰国」という経験がはじめてだった。

    もし予定通り来年の8月に日本に戻ってくるのなら、これが人生で最後の一時帰国になるかもしれない。そんなドキドキを詰め込んで日本に来たら、ロックが掛かっていたSuica、増えた〇〇ペイ、注意書きの張り紙。実は複雑な仕組みと生きていたことを思い出す。

    ロンドンで聞こえる日本語は、誰かが聞いているという前提じゃない会話だったりするので(自分も気を付けよう)、聞こえないふりをしているのだけど、東京では多くの人が日本語で話すから、すこしたじろぐ。それにしても電車内が静か。

    広告にアジア人が多いことを新鮮に、目に見えるクィアや障害者の起用は少ないと感じた。撮影現場で何を求められているのかが瞬時に理解出来て自信を持てたし、ビデオ通話でしか話していなかった友人たちと実際に会うと、一緒に移動をしたり、他者が隣に居たり、同じ匂いを嗅いだりできることが尊い。そして日本語なら、もっと幅広い選択肢の中から話すことができる。と実感。

    楽しかった、美味しかった、便利だった。でもほんの少し居心地が悪かった。じゃあ日本から出てけやって簡単に追い出さないでね。ロンドンだって居心地が最高なわけじゃあない。

    13,000円もスーパーで使った。一番の豪遊かもしれない。シェイクスピアは電子が出てなくて取り寄せた本。

    東京は、野菜の価格が結構高い、それと比べてインスタント食品やスナック菓子は安い。スーパーやコンビニでの丁寧な接客は、人間同士というよりは、スタッフ・客という線引きがしっかりあって、あ、商品買う時に小話とかしないんだ(しなくていいんだ)と思った。もちろんロンドンでも全然喋らない時もあるし、南のBrightonに行ったときは更にフレンドリーで、ロンドンの人って冷た!って思ったりもしたからいろいろだけど。

    逗子で現実逃避行with海老原恒和

    前まで居場所だと思っていた場所が、あれ、そうでもないなとなったり、逆もしかり。日本に帰ってきたらどんな場所に住もうか思いを巡らせた。友達と行った逗子がとても気持ちよくて、那須や横浜から通っている友人もいたなと思い出した。交通の便の良さは、長めに寝たい僕の重要条件だけど、ちょっと街から外れて、でもファミリー層過ぎないところ。みたいな場所を見つけたい。


    ロンドンは、とにかく家賃や授業料が高いし、移民の立場がいつどうなるかは分からないし、やりたい仕事に就くのは難しいし、いろいろ雑だし、どうやっても「英語の下手なイーストアジア人」が僕の名詞になるんだけど、その異星人感は、今の僕には悪くない。ふとしたところで、移民たちと繋がりを感じたり、クィアなコミュニティが力強かったり、色んな面で僕をサポートしようと手を貸してくれる人たちもいる。

    日本では、これからも浮き続けるだろうけど、ひとり分の居場所は手に入りそう、とにかく国が文化や芸術を大事にしないなと思うけど、違う仕組みで操業され続けている。やる気と気合いな風潮からは一歩引きたくなるけど、僕の経歴を評価してくれたり、ロンドンに行く僕を励ましてくれたり、創作や出演のオファーをくれるような人たちもいる。

    どんな場所で生きるかは、経済や社会、国際情勢によって変わるし、おおよそ自由じゃないんだけど、どんな場所で、どんな異人として生きてゆくかが、人生のひとつの指標となりそうだなと考えながら、帰りの飛行機でSaltburnを観て、流石にこんな地球外生命体みたいなやつにはならんぞ。と決心。

  • ロンドン演劇修行:New Earth Academy

    ロンドン演劇修行:New Earth Academy

    無料で受講できる演技WSに選抜され、ショーケースに出演しました。New Earthは、UK在住の東・東南アジアの舞台人たちを支え、活動を発展させることを目的とし、My Neighbor TotoroのAssociate Directorを務めたAilin Conantが新しい芸術監督になるなど、注目を集める団体です。

    演劇人はもちろん、アジア人表象の一つの形としても、色んな方に興味を持っていただけたらと、WSの様子を紹介します。

    ワークショップの概要

    僕が受けたのは「Performers Academy Plus London」というコースで、他にも、照明や舞台監督などのクリエイティブ向けの「Off Stage Academy Plus」、脚本家向けの「Writers Academy Plus」などのコースがあります。

    まずセルフテープを提出する必要があり、今年は食に関する一人芝居が課題でした。Veganの友達ができたときに、あれ、海藻ってOKだったか、と調べたことを思い出し、短いシーンを作りました。

    実際のセルフテープ(日本語字幕もあります)

    パフォーマー向けのコースは、一週間のAcademyと、二週間のPlusがあり、前者は経験に関係なく誰でも参加でき、後者は演劇学校卒業後や、これからキャリアを伸ばしていきたい人向けのコースとされています。Plusの場合は、セルフテープ専攻の後にWSオーディションがあり、そこでも選出される必要があります。

    WSオーディションは、自己紹介やムーブメントワーク(空間が均等になるように歩き周ったり、ペアになって押し引きするような馴染みのあるもの)と事前に渡された戯曲を使ってのシーンワークがあり、もっといろんなトライがしたいなと思える気持ちの良いWSでした。

    ‘familiarize yourself with the material(戯曲に慣れておいてください)’とメールに書いてあって、「でも別に暗記はしなくていいってことだよね…?」みたいな会話を始まる前にしました。何度か読みつつ、分からない意味とかは調べて、手持ち台本でのアクティングに支障がない程度に。という雰囲気でしたが、場所によって違うんだろうな。

    スケジュールと内容

    9 – 10 AM:Warm-up

    ムーブメントのAmi Nagano(Photos: Zhiyue Hu)

    今日の気分をムーブメントで表わしたり、呼吸ベースのストレッチなど

    10 – 11 AM:Actor’s Movement

    身体の構造から発想を得て動いたり、ペアでのムーブメントなど。魅せるためのものというよりは、身体感覚と表現を繋げるようなインプロのワークが多め。Laban Effortの「重い・軽い(heavy-light)」「突然・継続(sudden-sustain)」「意図的・非意図的(direct-indirect)」を用いた動きの発掘。

    11 – 12 AM:Voice

    戯曲を読むときの発声法。というよりは、いかにリラックスして声を出すか、どうやってウォーミングアップをするか、身体と声を繋げる練習やシアターゲームなど。

    ボトルにお水を入れて喉に負担を掛けずにストローでボコボコするウォームアップがお気に入りに。

    これは進研ゼミでやったやつ!って再確認だけど、絶対的な演出家がいるというよりはクリエイティブチームも分業して、自分の仕事じゃないところには手を出さないという基礎があるのは、やはり日本と異なる。

    12 – 1 PM:Lunch Time Talk

    インティマシーと俳優の安全についての講義(Photos: Zhiyue Hu)

    業界の方や俳優として活動しながらも創作活動もしている人たちなどによる講義。「俳優一本で活動する」という目標すらあまり聞かないこともあって、セカンドキャリアについて語る方が多かった。

    自己紹介の時に自分の代名詞を言うのが当たり前になったように、インティマシーコーディネーターによる講義以降、ペアワークをするときに「ここはYES、ここはNO」と言い合う習慣が確立されて、安心だし便利だなと感じた。

    1 – 2 PM:Lunch Break

    そろそろお気づきかもしれないが、とにかく持っている服が少ない。

    よくテラスに集まってランチをしてました。WSについての詳細メールに、NEW EARTHがサステイナビリティを如何に重要視しているかの記載があって、水筒やランチの持参や、できる限りリユースできる素材の利用が推奨されていたことが印象的。そして同意。

    2 – 3 PM:Acting and Attention

    Photos: Zhiyue Hu

    今回のテーマの一つが「アンサンブルワーク」だったので、演技と言えど身体表現ベース。自分の意識や重心を身体のどのパーツに置くかによって、歩き方や感情が変化することを捉えようとしたり、ペアの相手による動きを真似して覚えて、ペアが舞台上から消えても真似し続けるワークなど。

    普段かかとから足をついている歩き方を、つま先からつく歩き方に変えるだけで、身体からパーソナリティが変化したりするので、普段の演技にも取り入れたいなと思いつつ、パフォーマンス用の美しい型もあるから、実際の現場では忘れがち。逆に演出家の指示として面白いのかも。

    3 – 5 PM:Acting and Text

    後述のムーブと台詞のワーク Photos: Zhiyue Hu

    ジャック・ルコックのSEVEN TENSION(最小限のエネルギー~興味津々~爆発的~硬直)を用いた即興や、Statusというそれぞれに階級が振り分けられてのシーン作りなど。

    戯曲の途中から即興に移り、もう一度戯曲に戻ってくるというワークがあり、英語で即興なんてできるのかと恐る恐る試してみたけど、出てくる言葉がどんなにシンプルだったとしても、間や言い方、表情や身体表現、相手との関係性などで、いくらでも密度の濃いもの出来るんだと実感。とはいえ、アクセントなどによってバックグラウンドやカルチャーを語るのも特に英語圏では大事なスキルなので、課題は山積み。

    ペアでムーブメントを作る課題があり、完成したら、「この二人用の台詞を、ムーブメントをつづけながら言ってください」という指示があって、これまでの試みとは全く異なるシーンが出来上がった。その後もそれを応用して、コンタクト(身体の接触)があったムーブを、距離を置いて行うことによって、空虚な感覚を生み出すなど、コンテンポラリーではあるが、観客の想像力が広がって感覚的に何かを掴めるようなシーンに。創作の過程含めて面白い。みたいな表現をどうやったら観客と共有できるのかは、最近の課題。

    何故か演出家みたいな立ち位置にいる

    ここまでは一週目のスケジュールで、ショーケース用の脚本が完成し、役が振り分けられた二週目はウォームアップは残りつつ、ガッツリとシーン稽古とリハーサルに。自分が出演していないシーンは別に見学する必要もなく、なんならボイスコーチとムーブメントコーチによる30分の個人レッスンなんていう贅沢な時間も。発音矯正や第二言語での演技に慣れる練習を実施。

    ショーケース「cousins」

    Photo: Harry Elletson

    アンサンブルシーンもあったので正直かなり切羽詰まった本番でしたが、UKに来てから1年経つ前に舞台に出演できたことが感慨深かったです。ナウミュに出演した時に、正直これが最後の舞台出演になるかもと覚悟を決めていましたが、5歳のころから毎年1作品はステージに出演し続けている、恵まれたライフワークが途切れなかったのは、素直に嬉しかったです。

    ショーケースは、NEW EARTHのメンバーでありドラマターグを務めたYuyu Wangによる書き下ろし戯曲「cousins(いとこたち)」で、食にまつわる物語で繋がる一時間のオムニバス。本当の家族ではないけど、どこか君たちを「cousins」だと思っているよ。という東南アジア・東アジアのコミュニティを祝福するものでもありました。僕は「アジア人なのに魚嫌い」を言い出せないクィアな子や、母を亡くしてから暫く会っていなかった父と再会する息子の役を演じました。

    Photo: Harry Elletson

    ゲネプロの際に舞台写真を撮影してもらったんですが、写真家がガンガン舞台上に入ってきて超至近距離で撮影したりするので、驚きました。UKの舞台写真好きなんですが、確かにこうやらないと撮れない画角あるもんな…と納得。

    感想

    Photo: Harry Elletson

    演出家の一人であるRebeca Pereira-Gonzalezと、打ち上げで演劇語りをしてたら、「ミュージカルで活躍できる身体表現を持っているのは分かるけど、繊細な芝居や素直な身体性が素晴らしいから、そういう活動もして欲しい。本当に魅力的な俳優だと思う。ただの個人的な意見だから何の責任も持てないけど」と言われ、励みになりました。自己肯定感は高いのですが、それはそうと力不足やチャンス獲得の難しさも実感していたので、とても。

    毎年、変化し続けていますし、オリジナル脚本で上演したのは今回が初めてとのことなので、あくまで一つの参考に…という経験談ですが、こんなに充実したコースを無料で受けられることなんて滅多にないと思うので、気になった方は是非NEW EARTHの情報を調べてみてください。来年にもまた募集を予定しているそうです。

    また、こんなところから出会いがあったり、俳優が学んだり、何かの作品が生まれたりするんですよ。と、ご紹介できていたら幸いです。

    さて。これで堂々と「ロンドンでの舞台出演経験のある俳優」と経歴に書けるぞー。やったね。

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    もし、この記事書き手の天羽尚吾を知らないよ~という方がいましたら、作品をご覧いただいたり、InstagramBlueskyをフォローしてもらえたら嬉しいです!質問もいつでもお寄せください。

  • 天羽尚吾のジェンダーについて

    天羽尚吾のジェンダーについて

    6月は「水無月」とも呼ばれます。また、1969年6月27日(28日未明)にニューヨークで起こったストーンウォールの反乱をきっかけに、LGBTQ+の人々の平等な権利や文化を祝福し、今も続く差別への認識を高める「プライドマンス」としても知られています。

    小学生のころから「男か女かどっちだよ」と聞かれ、「天羽尚吾」と検索すると「性別」がサジェストされる僕は、自分のジェンダーについては、語る言葉がみつかるまで、友人に話せるようになるまで、ロンドンで羽を伸ばすまで、演出家と名乗ってみるまでは、公にしないつもりでした。

    プライドマンスを迎えるたび、自分にも何かできないかと考えることが多かったのですが、今年は小さくてもなにかのアクションを起こそうと思い、この記事を温めていました。語るようなつもりで書きますので、ちょっと一息つきながら読んでいただけたら嬉しいです。忘れていたお茶を淹れてみたりとか、狭いけど落ち着くどこかに挟まりながらとか。

    天羽尚吾は男性です

    Photographer:宮本七生
Hair and makeup:成谷充未
Stylist:Ryouske Ootomo

    「え、じゃあ、カミングアウトも何もないじゃん」と思われるかもしれないのですが、「男性」は、今まで僕が俳優として選択してきた、そして初対面のかたに対する性表現(Gender Expression)のあり方です。

    創作ではなく、仕事の場、病院やら飛行機のような公共の場で、男性として扱われることに、今のところ戸惑いは無いし、話が早いので、一先ず「男性」を名乗ることも多いです。でもこれは、というか、この日記すべてが、「僕は」という話であり、日常でこそ性自認と社会的な対応の一致が重要な場合もあるので、「天羽が我慢できるならみんな我慢しろよ」なんて、間違っても思わないでください。

    先日、30歳になりました。「年齢を重ねるごとに自由になっている気がする」と呟こうとして、その感覚は、俳優としてのキャリアを積むことができた経験と、日常生活で男性としての特権を享受していることに由来するのではないかと気づき、反省しました。自分の特権を自覚すること、そして得てしまったパワーを使って、できる限りリソースの少ないコミュニティに貢献しようと暮らしているつもりですが、それもまた険しい道のりですね。

    天羽尚吾はノンバイナリーです

    Model: Shogo Amo
Photographer: Kurose Yuri
Hair & makeup: Karoline
Photo Assistant: 884

    今、自分に近い言葉を選ぶとするなら「ノンバイナリー(二元的な「男性」「女性」というジェンダーにあてはまらない、あてはめたくない状態)」だと思います。UKで生活をしていると、行政の書類や契約書に「SEX(性別)欄」と「GENDER(ジェンダー)欄」があり、後者ではノンバイナリーを選ぶことが多いです。ただ、なんだかこの辺りの話になると、友達と映画を観た後、コーヒー片手にたらたらと喋る必要があるような感覚的な話にもなってきたりして。

    好きな人、信頼している人からの「尚吾くん」「天羽さん」「あもちゃん」、どれもが心地よいように、僕のジェンダーの捉えられ方もそれぞれに一任したいとすら思います。けれども、それを野ざらしに出来るほど、社会はまだ安全な環境ではないと感じるので、その理想は次の世代で求めた人が実現できればいいかなと考えるようになりました。そう、これは過程のひとつ。

    だから、私が「ノンバイナリーです」という時は
    「男性でも女性でもないジェンダーがある」を示す活動の一環だったり
    「どのような性別でもキャスティングしてくれ」という意思表示だったり
    「この言葉も分からないようだったら不用意なことは言わないでくれ」と一線を引くためだったり
    「最低限ノンバイナリーという意味を知っている人間ではありますので、好む三人称がありましたら気軽に教えてくださいね~」という小さなレインボーフラッグを掲げるものだったり、いろいろなメッセージが込められています。

    実はまだしっくりする言葉ではないのですが、先日受けたオーディションで、好きな食べ物と自分の代名詞を自己紹介する際に「He/Theyです」と言ってみたとき、かなり憑き物が取れた感覚がありました。個人的にはマジで「Shogo/Amo」とかどうでしょうか…!!と思ったりもするけど、ちょっとまだトリッキーすぎる。きっとこれから代名詞をめぐる文化も変わり続けると思うので楽しみにしていたいです。

    天羽尚吾はトランス女性です

    Photographer: 金山フヒト

    ※この段落はかなり自分の中でも迷いながら推敲しましたが、トランスジェンダーの誤解を招いたり差別に加担するような表現が見受けられましたらコンタクトよりご連絡をいただけますと幸いです。傷つけるため、議論をややこしくするための質問や意見にはお答えしません。

    思春期から20代前半までは、特に性別違和(出生時に割り当てられた性別と自認する性別が一致していないという持続的な感覚)が強くて、かなり苦しみました。自分の意に反して身体の二次性徴が進む際や、男女で分かれるときに男性側に押し込められること。その積み重ねによって諦め、逃げた道も少なくありません。通った私服高校は幸いにも、自意識と迷いが爆発した僕の表現を肯定的に面白がって迎えてくれる場所だったので、かなり健康かつ快適に過ごすことができました。たくさんの黒歴史も生みましたが、今も交流の続く友人たちとも出会いました。

    俳優として働き始めてからは、また苦戦の日々が始まりました。女性として活動したいと思ったとしても、芸能界の過酷なルッキズムにひるみましたし、そもそも仕事を獲得することに必死だったので、性自認を隅に追いやったりもしていました。

    「サラ・ベルナール」~命が命を生む時~ キャスト集合写真

    いわゆる女装もいっぱいしました。そのなかでも、「サラ・ベルナール」という舞台で水夏希さん演じるサラの付き人、ルイーズという女性を演じられたのは個人的に大切な時間でした。僕が女性を演じることに誰も何の迷いがないようなカンパニーの雰囲気で、居心地が良かった。

    性自認(Gender Identity)を考えるときに「どんな性別集団に属していると安心を感じるか」みたいな指標がありますが、自分にとってそれは確実に「強かに生きようとする女性たち」だと感じます。もちろん「ちょっと変わった男性の天羽尚吾」をもてなしてくれる、可愛がって気を使ってくれている人たちと捉えることもできるのですが、彼女たちと一緒にいると、とにかく肩の力を抜いてリラックスできることが多いです。でも最近は、男性やクィアの友達も増えたし、彼らとも楽しく時間を過ごすことができるので、「要は人によるんでしょ」とも言えるかもしれませんが、そんな簡単な話ではない。

    ちなみに、思春期の一時的な迷いだったとするつもりは全くなくて、もっと自分の人生の中で性自認や性表現の優先度が高く、かつ、社会が安心・安全な環境なら、「女性です」と表現しているかもしれません。しかし、今はそう感じられないので、私は私なりのやり方で、女性やトランスジェンダー、LGBTQ+、社会的マイノリティへの平等な権利・機会を実現するため、学び、尽力しようとする道を選びました。

    天羽尚吾は……

    Photographer: kazuto yamagishi 
Hair & makeup: 成谷充未 
Stylist: Kumiko Sueyoshi

    なんなんでしょうね。ここまで来てくれた人には「天羽尚吾は天羽尚吾だよ」と言えるかもしれないのですが、そこまでの過程がめちゃめちゃ大事なので、しばらくは色んなジャブを入れ続ける生活を送ることでしょう。

    でもどれも嘘ではない。そしてゼロイチではない、立体的で流動的なグラデーションが天羽のジェンダーを反射します。

    初対面の人と染色体の数を確認しあったり、性器を見せ合ったりすることが少ないように「生まれた時に割り当てられた性」を検証することって、実はそんなに無いじゃないですか。だから人はそれぞれ色んな形で自分のジェンダーを表現しています。特に僕の本拠地は演劇で、突然目の前がサバンナになったり、近未来になったり、ゲーム配信者の家になったりする想像力を持ち寄る場所です。

    役者を軸に活動していたときは、自分の性自認や性表現によって、役の解釈に影響を及ぼしたくないとか、ノンバイナリーを名乗ることによってスーツを着た男性のCMが決まらなくなったらどうしよう。と、公にする迷いがありました。けれど、創作を一本の軸にしている今、ジェンダーに対する根本的な考えを示しておくのは僕なりに筋が通るなと思ったので書いてみました。

    僕がどういったジェンダーであったとしても、当事者のすべての想いを汲むことや代弁をできるわけではないし、抜けのない完璧な作品が作れるわけでもない。

    その現実を噛み締め、学び続けながら、知人の、女の子の服を着るのが好きだという子どもから相談を受けたときに「うんうん」って聞きながら、彼ら/彼女らの未来のために何ができるか、一歩ずつ行動を積み重ねていきたいなと6月を祝福するのでありました。

    参考リンク

    Tinder | Let’s Talk Gender : スタイリッシュに分かりやすく、ジェンダーの基礎がまとまっています

    はじめてのトランスジェンダー│トランスアライにできること : 遠藤まめたさんの編集するサイトです。Q&Aも充実

    トランスジェンダー問題——議論は正義のために : より知識を深めたいときに。高井ゆと里さんによる指摘にも注目

    愛と差別と友情とLGBTQ+ 言葉で闘うアメリカの記録と内在する私たちの正体:表現の移ろいや冒頭のストーンウォールの反乱などがジャーナリストの北丸さんの視点から語られます。

    謝辞

    平野鈴
    久保豊

    この記事の推敲にご協力いただきましたことに感謝申し上げます。謝礼を申し出たところ、お二方とも、まるで示し合わせたかのように、その分を募金やクィアの子どもたちの支援に充てることをご提案くださいました。そのご意向に従い、イギリス北部を中心にLGBTQ+の子どもや青少年をサポートするThe Proud Trustと、LGBTQI+への包括的なケアを掲げている国境なき医師団にそれぞれ寄付いたしました。

  • 舞台は神聖な場所かという仮説

    舞台は神聖な場所かという仮説

    ※この記事はずっと曖昧です。何も解決しません。

    会場10分前、舞台上でアップやストレッチをしていた俳優たちが神棚に礼をしたり、客席に手を合わせて祈る。
    上演中は、おしゃべりは厳禁、のどが乾かないように開演前にこそっと飴を頬張る。

    日本の劇場でよく目にした光景で、観客の集中力には出演者としても驚くことすらある。逆にロンドンの劇場では、まずロビーにバーがあるので多くの人がお酒やスナックを購入し飲みながら観劇する(ちなみにその売り上げがかなり下支えしているそう)なんとなくカーテンコールになれば録画・撮影していい雰囲気だし、上演中にスマホを観たりお喋りしてしまう人も多い

    勿論僕は作品に集中したいので、いちいちキーっとなったり、これだから観光客は治安が悪い。とか思ったりしそうになったのだけど、ブリティッシュアクセントでお喋りする人たちも居たし、ロンドンにおいての演劇は、肩ひじ張るものじゃないのかも。そもそも「まずは私」という国民性の人たちからお金を貰って、お酒と娯楽(演劇)を提供するのだから、逆に日本の緊張感あふれる客席が特異とも言える。パパイオアヌ―もワールドツアーで日本の客席が一番集中してたと言ってた。僕はちょっと寝てたけど。

    パパイオアヌー@彩の国さいたま芸術劇場 この劇場の雰囲気本当に好き。もう少し駅と近ければと思ういつも。KAATにも。

    演劇の原点は、能楽にしろ、キリストの受難劇、ギリシア悲劇にしろ、神への祈りを捧げたり、劇的空間に「神を存在させる」場所であったから、この仮説は多かれ少なかれ正しいのだろうけど、そこから何を経て今の客席空間が生まれたのかが気になる。恐らく「シェイクスピア時代の読者と観客」「シェイクスピア時代の演劇世界──演劇研究とデジタルアーカイヴズ──」で当時のUKの空気感を学びつつ「〈要点〉日本演劇史 年表 – 新国立劇場」で全体勘を掴み「コーラー(chora) : 神聖な演技空間(研究課題:韓国と日本伝統芸能の比較美学,I 共同研究)」を先行研究の一つとして辿ってゆけば、見えてくるものがあるんじゃないかなと思うんですが、ちょっと今は英語の勉強とプロデュースに忙しく潜れない。そもそも神に対する向き合い方も日本と欧州ではかなり差がある。

    どこの国でも、演劇が上流階級向けだった歴史があったり、のちに禁止されたり、庶民が楽しむためにコソコソ行われ始めたりみたいな歴史はあるので、単に日本の演劇は能楽や歌舞伎が転じた物なので!と、西洋の影響をガン無視して語ることはできない。けれど、そもそも歌舞伎のように「語り」で演技を受け継いできた文化は、シェイクスピアの脚本のように勝手に改変することや、勝手に自分で解釈することは責任と周囲の目が伴うし、秘されていることが神聖さに繋がるのは想像にたやすい。


    なんでこの仮説が今の自分にとって大切かというと、多分この空気感の違いを理解していないとUKの観客たちに自分の作品を受け入れてもらえなさそうだからだ。トトロと千と千尋がロンドンで上演されて、どちらもチケットが高騰し人気の舞台なのだが、批評家たちのレビューはトトロのほうが高い。アンサンブルの身体表現の自由さや、ジブリの持つ静と動のギャップの表現は、千尋のほうが、質が高かったと思うが、英語字幕での上演だったこと(没頭しづらい)、観客に視点が向いているような笑えるシーンが少ない。ことが原因の一つなんじゃないかと思っている。トトロは、トトロってこんな雰囲気だっけと思うほどジョークが多くて、観客もよく笑っていたが、千と千尋の神隠しの舞台が持つ怪しさや「巧みだ…」となる演出の表現は、日本で育った観客が満足するのは分かるが、UKの観客が求めていたものとは違うかもしれない。ここまでくると宮崎駿の宗教観とかの話にもなってくるけど。でもどちらもイギリスの演出家なので、その違いが生まれたこともオモシロイ。やっぱりプロデューサーとかプロダクションの差って大きいんだな。

    https://bsky.app/profile/shogoamo.bsky.social/post/3kuc44lgzpc24
    ムーランルージュではしゃぐ人(そしてその後オーディションを受け、落ちることになる)

    逆も気になる。帝国劇場で上演されているムーラン・ルージュは、どんな気概で観に行っているんだろう。ロンドンで観た時は、友達が誕生日プレゼントとしてワイン買ってくれたのもあって、初めてお酒を飲みながら観たんだけど「くだらなくてB級だけど、歌やダンスが豪華でおもしれーー!」と、かなり雑多な楽しみ方をしたのですが、18,500円払ってのムーランルージュには、もうちょっと高尚なものを期待してしまうかもしれない。しかもやっぱり輸入ミュージカルって、プロデュース側も「こんなすごい舞台です!」って広告するわけで。

    これと関連して思うのが、メソッドにしろスタニスラフスキーにしろ日本で有名な演劇メソッドは西洋で、主に白人男性向けのテクニックでもあると言えて、それこそ僕個人としてはマイズナーは性に合っていたけど、宗教観や感情表現がかなり異なる日本で無批判に取り入れるのはどうなんだろうとも思っていて、やっぱその辺も含めて「演劇の開国」があった戦後の演劇界において、何が変わって何が残ったのかというのは、文化の違いを理解した上でプロデュースをするいい礎になりそう。

    一番最悪だった普通に座っているとシャンデリアを眺めることしかできない席

    あと日本の劇場がなんで横に広くて四角いのかっていうのも気になる。パッと考えると能楽堂が基となっている&建築基準法かなと思うけど、客席が弧を描いているので舞台に近いと感じる席が多く、わりと舞台が小さめなのでアンサンブルが少なくても埋まっているように感じられるロンドンやNYCの舞台も結構好き。そこっ?ってところに柱があったり、まじで天井しか見えない席とかもあったりするけど…

    という何の裏付けもされていないドラフトな仮説でした。おすすめの本があれば教えてください。

  • イギリスのバイト探し

    イギリスのバイト探し

    慣れない&物価の高い街で、仕事を探すのなんて不安だし、僕もようやったなと思います。3週間にわたる仕事探しはこんな感じでした。

    英語に自信を持つ、何かしらの経験を活かす、もしくはコミュニケーションお化けになれば、きっと何とかなります。そして仕事を見つけたうえで労働は嫌だ。仕事行きたくない。と一緒に嘆きましょ。ちなみにフルタイムや正社員としての雇用を考えている人には全く参考になりません。

    CVは書きよう

    基本的にテンプレートが無いので、自分で作ります。なので正解もありません。正直飲食店に応募する人のCVなんて誰が見てるんだろうと思いましたが「一応こういう資料を英語で作れる程度の常識人です」ということの証明には必要。面白いなと思ったのは、自分で経歴を説明できること。俳優や演出家としての経験だって、言いようによっては飲食へのアピールポイントになること。ちなみにカバーレターと呼ばれる「こういう理由で応募しました。CV添付しますね!」という手紙形式の書類も何通か書きましたが、バイトにそこまで求めて無いと思います。一応ネイティブにチェックしてもらった際に、情報スカスカだけどよく書けてるねって言われて喜びました。

    下書きだけでも日本で作ることをお勧めします。僕は現地で書きました…ダメな例。CV-LibraryなどのCV作りと応募がセットになっているサイトを利用するのもありです。ここで作成したCVを他で使うのもOK

    仕事探しは予想を裏切る

    日本食レストランは沢山ある

    物件探しにも出てきた在英日本人向けサイトmixbはやはり定番で、主に日本食レストラン(通称ジャパレス)や日本の現地企業の情報が載っていますが、中にはクリーンじゃない環境もあるそうです。注意喚起の投稿もありますが、お店の場合はGoogleレビューを読むのも大切です。ここからもたくさん応募したのですが、返信が来たのは一件だけでした。微妙に縁がない…賄いお寿司の夢が消えた。

    結局僕が職を見つけたのはCV-Libraryからの応募で、他にもIndeedを利用したり、チェーン店のサイトの求人に直接問い合わせたり(例:GAIL’s)しました。お店の外に求人情報を貼ってあるところもありますが、個人店や、よほどそこで働きたい理由がない限り直接CVを持ち込む文化は廃れつつあるようです。

    ①日本食レストラン:面接だけさせて貰って、この仕事に取り組むなら本腰入れなきゃなと思う敷居だったので辞退
    ②日本語講師:面接と模擬授業を行い、オファーを貰うも、かなり先までスケジュールが決まってしまうので断念
    ③現地カフェ:トライアル後「来週から来てください」と言われた後に連絡を3カ月間無視されるという無情な対応をされる
    ④現地レストラン:突然電話が来てトライアルに進むことに。応募しすぎてどのレストランだったか全く覚えていなかったので、テンパりました。再びダメな例。

    2024年4月からのUK最低時給は21歳以上なら£11.44です。その他労働条件は要確認。

    トライアルでこっちも選ぶ

    仕事探しに疲れた日に観に行ったFROZEN

    採用の前に2~3時間無給で(ちょっとご飯くれたりすることもある)働いて、お互いにジャッジし合う「トライアル」というシステムが一般的です。いきなりお客さんとプロフェッショナルとして接しなくてはならないので緊張はしますが、予行練習にもなります。僕は確実に言語能力が低いので、メニューを予習したり、「レストラン 英会話」と検索してフレーズを覚えたり、当日はとにかく元気に、分からないことはガンガン聞く。をモットーに行いました。

    緊張すると喉が渇くので、お水のボトルを持参するのは個人的にかなりおススメです。お店によって求められる人物像も異なるので、やれた・やれないは気にせず、思いつめずに参りましょ。パートタイムの仕事に不義理も何もないと思うので、どんどん応募して、自分の中で一番納得できる職場を探したほうが良いと思います。

    トライアル後にマネージャーと少し面談があって、週にどれくらい働きたいかや、何故ここに応募してきたかなどを軽く話します。質問はあるかと聞かれるので、シフトが何週間前に決まるかや「私にどんなスキルを付けることを望みますか?」みたいなしゃらくさい質問を一つくらいはするようにしていました。一応、前のめり感をアピール。

    ホスピタリティ業界の経験と、コミュニケーション能力があることはプラスになりました。どこも即戦力を求めているので、これまでの職歴は大切です。やる気のないネイティブに勝てるのは必死さと信じて進みました。

    試用期間の開始

    お客さんが書いてくれた天羽

    仕事が決まるまでは、日々何をするにもお金が擦り減っていくだけのように感じられて、相当きつかったので、やっぱり貯金は大事だし、こういう時にどうすれば自分が元気になれるのかを習得しておく大切さが身に沁みました。あとは「もし3か月もいて全然職が見つからないようだったら向いてないから遊んで帰る!」と腹をくくっていたのも良かったかもしれません。

    僕は10月に雇用されて、そこから3カ月はprobation periodと呼ばれる試用期間でした。もう8か月目になって、大変は大変ですが気に入っています。せっかくUKに来るのなら、現地の企業で働いて文化の違いを体感したかったし、ありがたいことにインクルーシブを掲げ、働く人を大事にしようとする環境です。忙しいけどメンバーが協力的で、友達もできたこと、舞台仕込みの笑顔を振りまいて僕について書かれた★5レビューを10個集めてちょっと昇給したこと、本業の予定に合わせてシフトを組めることなど、リストアップすると恵まれたSurvival Job(生きるための仕事)を見つけられたなと思います。

    本物のFluentな英語力や、制作会社での職務経験があれば現地の舞台プロダクションに応募することも可能だったと思うので、その力不足は悔しいです。他にも美容師、歯科医、ソムリエ、エンジニア、建築家、大工、看護師など、需要がある技術を持っている人たちは確実に見える世界が違うことでしょう。UKで俳優や演出家として活動し続けるとしても副業は必要なので、その場合は更なる壁があるでしょうが、それはまた別のお話。

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    もし、この記事書き手の天羽尚吾を知らないよ~という方がいましたら、作品をご覧いただいたり、InstagramBlueskyをフォローしてもらえたら嬉しいです!質問もいつでもお寄せください。

  • 芸事以外の道

    芸事以外の道

    俳優活動を辞めると発表した友人が何人かいた。
    特に毎年四月あたりに発表される「ご報告」に心穏やかじゃないファンの方たちもいると思う。

    俳優っていうのは、何が正しいのか、いや正解なんてないんだけど、とにかくどの状態においても安定した生活を送ることが厳しいと思うし、彼らが過去に演じた作品や一緒に触れ合えた時間は消えないのだから、それらに感謝して、ただ幸福を祈っている。応援する力が足りないからだなんて思わないで欲しいし、仮にそうだったとしたら芸能界のシステムが間違っていると思うし、実際間違っている。

    僕は俄然、芸事を続けていきたいけど、生きてゆくのにお金は必要で、かつ生活の見通しが立たないと、どれ程傷つき、健康な思考を保てなくなるかは身をもって知っているから、もしUK2年間の滞在のうちに創作し続ける目途が立たなさそうだったら、一度生活が安定しそうな道を整えた上で演劇と関わる道を探したいなと思っている。


    「大学も出ずに、就職もしたこと無いような人が社会人になんてなれるわけ…」といじけたりもしていたんだけど、演じる能力や相手の台詞をきちんと受け止め解釈する能力は、仕事上のコミュニケーションに活きるし、制作・運営した経験はめちゃくちゃ応用が利くことが最近分かった。CVを書いているときに「クリエイティブチームを結集し劇場と交渉を進めながら、プロジェクトをマネージメント」と言える事に気が付き、書きながら驚いた。

    ちょっと勇気いること言うけど、誰かをサポートしたり、社会的に力の弱い方たちの手助けをできるようなことをして生きていきたいと思う。人から助けられるとありがたいし、人を助けられたかもと思えると、それもそれでありがたい。死に際に孤独になっても「でも、あの時手を差し伸べることできたのは良かったよな」と思い出したい。自分のために。

    そんなこんなで今のところ考えているのは、まずはキャリアコンサルタントか行政書士の資格を取ること。どちらも国家資格で、難関なのは百も承知なのだけど、英語の勉強をきついと思いながら楽しめているのもあって、意欲もある。すぐに抜本的な改革を起こしたくなってしまうので、恐らく長期的な会社員よりは個人事業主でいるほうが向いている。日本はフリーランスに厳しい国だけどさ。

    一度就職をしたり、他の資格を取ったりする必要もあるだろうけど、落ち着けば独立して働ける。そのうえ上手くいけば、創作活動との両立も。どちらにせよ、それ単品で仕事をするというよりは、その中でも自分の専門を見つけたり、他のスキルと掛け合わせるのが大事っぽくて、それにはエンターテイメント周りの知識やら、ロンドンでの生活も活きるだろう。もし、行政書士になれたらいつか、入管業務の透明性を高めるために尽力できるかもしれない。

    と、一応計画を立てることによって、少し気持ちが楽になった。もちろん試験の難しさとか、案件獲得の困難など、私が視えていないことはたくさんあるだろうけど「俳優としての仕事が無くなったら・創作したものが世間に認められなかったら、もうおしまいだ」と考えなくて良いのは、ホッとする。何を隠そう昔の日記はそんな記述で埋まっている。でもその必要はないことが今は分かる。


    Amazonのアフィリエイトを試してみたけど、ヴァージニアウルフの「自分だけの部屋」が一冊売れた(それはサイコーすぎる)以外は、売り上げがなく「うちらの基準を満たしていないのでアカウント停止すんね」と言われたので、辞めました。そもそもAmazon下の労働環境やら、小売店を脅かしつづける姿勢、物を売るという資本主義にも疑問があったので、ちょっとスッキリ。

    しかも先日読者の方から、広告が無くて読みやすいと言ってもらい、こんな記事を読んでくれる人がいる。という豊かさを広告なんかで邪魔したくないと思ったので、ロンドン生活の紹介コード以外はやらないつもり。また依頼されて記事を書いたりもできますように。

  • 髪の毛に包まれたなら。

    髪の毛に包まれたなら。

    歯医者に行くのは好き。口を開けているだけで、口内が健康になるのが王族にでもなった気分。

    だけど、髪を切るのは少し気が重い。

    東京ではずっとお世話になっている美容師の方がいて、彼の手さばきやこだわりが好きだから、自分の髪を利用した匠の技を鑑賞しに行くようなつもりで行ってたし、ずっと通ってるもんだから他のスタイリストやアシスタントのみんなとも顔見知りになって、ひと月一度、チリツモする世間話で、お互いの歴史をちょっとずつ交換するのが好き。ヤな感じの常連になってないかな。馴れ馴れしくないかなと、いつも気を付けているけど。

    だから美容院に行くのはすごい好きなのに、髪を切るのがなんかさみしく感じてしまう。大昔から。なんでだろ。ヒッピーなの…?確かにHairを観て育ったけど。

    小さい頃から隙があれば髪を伸ばしていた。プールでアタマジラミをうつされたときと、高校受験のために担任教師から髪を切った方がいいと言われたとき(僕を想ってのことだけど、今思うとなんじゃそりゃだな。制服自由の学校を受けたのに)は、泣きながらロングヘアを切ったのを覚えてる。特にあの頃は性別違和が強かったのもあるのかも。とはいえ、長髪とジェンダーは必ずしも結び付くわけでは無い。

    人生最長は20代前半の頃で「仕事の依頼があったら切る」と思ってたんだけど、舞台では大体ウィッグで、全然地毛を使わなかったから、映画「金色」で人生初のブリーチをした後は、緑にしたり、グレーにしたり、いろんな色を楽しんでいた。でも「君は女の子になりたいんだよね?」と聞かれることも一番多くて、それは、違うような~~違わないような~~~というか、かなりパーソナルな質問ですよねそれ~~。と思いながら、テキトーにあしらっていた。

    頭を立体的にとらえたときに、顔があるのってほんの一部だけで、伸ばしていれば多くを髪が覆っている。だから髪型って人のイメージを大きく左右すると思うんだけど、やっぱり髪が長いと所謂青年の役とかが回ってこなかったりしたのもあって、ボブを挟んで、映画「歩く魚」の時に「仕事の依頼」でカットすることになったので、そこからショートヘアに。

    俳優には、宣材写真というものがあって、ある程度その写真とイメージが近いことが求められることが多いので、ショートヘアで撮影してからは、だいたいその長さを保っている。唯一遊んだのは、パンデミック禍。まだそこまでリバイバルが来てなかったウルフショートにして、先述の美容師と試行錯誤を重ね「ウルフにもなるし、小さく纏めて隠せば、ショートヘアにも見える」スタイルを生み出した。映像の仕事が増えていたころだったので、仕舞っちゃえばサラリーマン風にもなるし、出せば個性的な髪型にもできるし重宝していた。

    ただこの髪型は、超絶技巧パーマが必要だし、維持が大変なので、渡英前には割と短くした。短い髪をウィッグで表わすのは技術が必要だけど、長い髪はウィッグを被っちゃえばいい。という心もある。ドライヤーは楽だし、ナチュラルなヘアスタイルのお陰で、多少だらしがなかろうが、眉毛を書かなかろうが、フィットするので日々は生きやすい。

    重力に逆らってウルフショートの髪がふわっとしている。フィルムの淡い質感。枯れた紫のニットに、白い背景。
    photographer:大木慎太郎

    色んな髪型を街で見かけるけど、それが本人の自由であるかを考えずに、その人の性自認やアイデンティティを決めつける人や社会があるし、間違った規律や先入観は学んで早急に訂正していただきたいと、特にブラックヘアについても思う。流行を知る中で、文化の盗用ではないかという視点も常に持ち続けたい。でもどうして、個人として、髪を切ることにこんなにも気合がいるんだろう。

    例えばもっと演出家として活動することになった時とか、ウィッグを被る舞台公演が続くときとか、また髪を伸ばしてみようか。ウルフ部分だけ際限なく伸ばすとかもありだな。別にショートヘアが嫌いなわけじゃないから、ちょっとずつ色んな髪型を試してみよう。前髪重めなブリティッシュ風のショートヘアとか、柔らかそうなベリーショートとか。ゆうて人はそんなに気にしない気もするし。うん…美容院に電話しよう。

  • ロンドンのギリギリ生活

    ロンドンのギリギリ生活

    2025年版の記事も公開しました!

    一体いくらあれば生きていけるのか。渡英前に目を皿にして調べましたが、インフレの進行もあるし、個人差もかなりあると思うので、母数は一つでも多いほうがいいだろうと、僕もここに記しておきます。ちなみに上の写真は友達の家なので僕はこんな生活を送っていません。残念。ビンボー生活です。

    物価の高いロンドンでも、こんな過ごし方もあるんだ~くらいに思っていただけたらいいかなと思います。そして、まったくロンドンで生活する予定がない方も、日本と比べてどんな感じかな~と楽しんでいただけたら幸いです。東京にいる時も生活費としては20万円前後くらいだった人です。

    2024年2月総支出

    CategoryBudgetSpend円換算(£1=190円)
    家賃・光熱費£700£700133,000円
    食費£120£72.5213,778円
    交通費£140£105.9620,132円
    健康・美容費£80£397,410円
    通信費£20£101,900円
    外食費£100£69.5413,213円
    芸術・教育£200£24746,930円
    雑費£100£12.982,466円
    合計£1,500£1,257238,930円

    家賃・光熱費:£700

    白い樹脂の窓から見えるキジトラの猫が横切っている様子。その向こうにはギザギザした植物。
    前の家はよく猫が通り過ぎて行った

    以前家探しの記事は書いたのですが、そこから引っ越しました。荷物が少なければ、家具は備え付けだし、デポジット(保証金)はいるけど、基本的に礼金や仲介手数料が無いので、Notice(引っ越しの申告期限)やContract(最低契約期間)が緩やかなら、引っ越ししやすいのがロンドンの良いところ。僕は、まず多少高くても契約期間の少ない安心できる家を見つけてから、ゆっくり次の引っ越し先を見つけるのをお勧めします。

    ただし、家賃に関しては本当に個人差があると思います。ネパールから来た友達は、同郷の子たちとフラットを借りているから一人当たり£450と聞くし、綺麗な部屋に住みたかったという台湾の子は£850くらいらしいし、£700くらいで自分のよく行く場所に1時間以内に行けて何かが壊れていなければ(大家がうるさいとか、汚さ過ぎるとか)「良い物件見つけたね!」となります。ちなみに全部フラットという住宅の中の一部屋を借りる時の話で、一人暮らしをしようもんなら最低でも£1,200はかかると思います。

    新しい家は、光熱費(電気代だけ別)・家賃をざっくり合わせて£700くらいです。ヒーターを使うともう少し高くなる時もあります。すべては家賃次第といっても過言ではなく、企業ではなく個人が住宅を貸しているので、値段の平均値も当てになりません。マジで、時期と運(嫌いな言葉だ……)

    食費:£72.52

    スーパーで買ったトマトや卵、ニンジンや豆乳が並んでいる。英語で書かれた包装紙
    だいたいこれで£15くらい。「MACKEREL FILLETS」は鯖缶。

    多分激安だと思います。ちょっとこれはチートを使っているので弁解させてください。というのも、レストランで働いているので仕事に行く日はまかないが出るんですよ。更に、自宅での料理はペスキタリアン(魚や野菜、卵・乳製品は食べるけど、お肉は食べない)を実践しているので肉代がかかりません。お肉は割と高めで、UKで手に入りづらい薄切り肉を求めようもんなら…ひぃー。

    ただ、スーパーの価格が比較的良心的なのはUKの良いところだなと思っていて、Sainsubry’s・TESCO(中堅スーパー)やALDI・Lidl(ドイツ系お安めスーパー)で買えばこんな感じです。

    ・バナナ5本:78p(148円)
    ・オーガニックニンジン1kg:£1.3(247円)
    ・豆乳1L:69p(131円)
    ・中トマト6個:95p(181円)
    ・全粒粉の食パン800g(二斤くらい):£1.3(228円)

    この5カ月でも豆乳が50pから69pに値上がりしたりしているので、侮れませんが、他の物価を考えると割と優しい価格帯です。醤油やら味噌やらの調味料はこちらで調達しつつ、日本食材はあまり買っていません。食費を抑えるつもりなら、自炊できるのは勿論のこと、渡英前からオートミールやパン中心の生活でも大丈夫か慣らしておくと良いかもしれません。でも節約だけしてても仕方ないので、マーケットでチーズを買ったり、M&S(成城石井みたいな)でちょっと美味しいお茶を探したりして気は抜いてます。そして肉の代わりにプロテイン。

    交通費:£105.96

    地上駅のプラットフォーム等間隔に「BARBICAN」と書かれたサインがあり、壁はレンガ造り。夜の風景。
    なんかこの駅、京王線を思い出してまったりした。

    Suicaみたいな交通系カードOyster Cardというのがあって、それに£95チャージしたのと、引っ越しの時のUberが£8.69、レンタルサイクルが二回で£2です。

    ロンドンの電車賃は(今から複雑なことを早口で言うのでしっかり読まなくて大丈夫です)、Zoneと呼ばれる区画があって、イメージとしては、東京23区内の中心:Zone1・区の外れ:Zone2・区外:Zone3・近隣県:Zone4…のように定められており、それをまたぐかどうかによって電車賃が変わり、更にピークタイムとオフピークタイムで価格が異なり、その上、30歳以下ならRailcardという30%オフになるカードを紐づけることができるとお得……みたいなシステムなのですが、ピーク時間に電車に乗るとちょっと錦糸町から新宿に行こうかな(イメージ)にも、£3.40(646円)かかったりするので、本当に勘弁して欲しい。ずっと横浜市営地下鉄に乗っている気持ち(おわりです。おつかれさま。)

    でも、バスはどこまで行っても£1.75(332円)なので、時間を気にしなければバスに乗っている人も多い。僕は兎に角、先述のピークタイムを避けて、歩けるところは歩きで行く。という節約をしていますが、時間をお金で買うと思って、交通費は気にしない。ってするのもありかと思います。バスは遅れるのと酔うのが苦手であんまり好きくない…。

    健康・美容費:£39

    髪を切った後に自撮りをしている天羽と美容師さん
    今お世話になっている美容師さん

    最近は日常のメイクもしないので、基礎化粧品くらいしか買ってないし、UKの医療費は無料(薬代は掛かる)なので、£80も予算にたてなくてもいいかなと思いつつ、一応人前に出る仕事なので、美容院(£50くらい)に行ったり、歯の定期健診(NHSで£25.80)には気兼ねなく行けるように設定しています。ネイルとか、まつ毛パーマ、エステあたりに当たり前のようにいくと大変なことになると思うけど、それは日本も同じか。お任せできる美容師さんが見つからない(&高い)から、適当に伸ばして、帰国の時に切るって派と、アジア系美容室でカラーも定期的に…っていう二流派に分かれているイメージ。僕は信頼できる美容師さんが見つかってホッとしてます。

    通信費:£10

    月20GBまで使えて、通話とSMSし放題のgiffgaffを、£10(1,900円)で使っています。これは数少ない日本より安いものだと思うけど、地下鉄では基本使えないし、街中でも電波悪いことあってそんなに信用なりません。たまにNetflixやNtliveのサブスクに入ろうかなと思いつつ、まだその時間が取れてないので、ちょっと予算が浮いています。

    外食費:£69.54

    バルサミコ酢がかかった薄めの一切れのピザ。後ろにはピザ屋の看板が見える。
    日本のフードコートにもある、突然ビーッと鳴る心臓に悪い例のブツを持たされることが多いです。

    ちょっとご飯を食べてお酒を飲めば£50は当たり前の都市、それがロンドンです。レストランで働いているからこそ、マジで外食費は高いなと思います(それでも来てくれる層、ありがとう…「価格が高い」って低評価レビューを見て、わかる…って思ってるよ)

    でもやっぱり友達と会うときは、ご飯食べたいので、そんな時は、ホームパーティーするか、フードコートのように色んなお店が出店しているところでご飯を食べることが多いです。そうすると£8~15(1,520~2,850円)で食べられます。あとは、パブでビールを飲んでもハーフパイントにしたら£4くらい(760円)お酒強くなくてよかった。

    でもそろそろいろんな国の料理とかも食べたくなってきたので、予算までは使い切っていいかな~とも思っています。日本食は…帰国してから食うか、家で作るかな…。あるにはあるんだけど、結構な額を払って微妙だったら泣いちゃうという理由で敬遠してます。日本でもかなりこだわってた人なので……。

    芸術・教育:£247

    装飾と豪華なカーテンが施された劇場のボックス席
    ハミルトンが上演されているVictoria Palace Theatre

    ひとつだけ予算越えしてる項目ですが、僕がロンドンに来た大きな理由の一つは観劇なので、これだけは糸目をつけないと決めていました。いつも最後尾に近いけど。

    例えば、ロンドンに稼ぎに来た!って人は、ガッツリ削れるかと思いますし、語学学校やアンティーク、パブやらフットボール、旅行資金など、趣味や勉強に使う人もいると思います。僕の場合、ボイストレーニングが£85(16,150円)で後は全部ミュージカルや演劇のチケット代です。ダンスのレッスン(£15くらい)とかも行きたいなと思いつつ。

    チケット内訳(何か月後かのチケットを先に買ったりもしています)
    ・Don’t. Make.Tea.:£13
    ・Hadestown:£20
    ・Before After:£10
    ・Why Am I So Single?:£20
    ・Operation Mincemeat:£28.80
    ・Moulin Rouge! :£41
    ・The King and I:£30

    雑費:£12.98

    生活必需品とか、服とかもこの予算から買うようにしています。基本的に日本に持って帰るのがめんどくさいので、あまり新規の服は買うつもりはないのですが、お洒落したくなったら変わるのかなぁ…。この月は、耳栓と、洗剤、靴下を買いました。来月はIKEAへ行って水筒を買いたい。

    合計:£1,255

    青い空に5分咲きの桜
    ロンドンにも桜はある。というか結構多い。

    それぞれの項目が多少超過することはあっても、他で補える範囲なので今のところ予算超過したことはなく、仕事に忙しかった(=芝居行ったり、友達と遊ぶことが少なかった)12月は£1,050ほどで生活したりもしていました。

    外食費なんて、東京に住んでいたころのほうが使っているし、日本でスマホやPCを買い替えてきたので、そのあたりを考えなくていいのも助かってます(どうか壊れないで……)YMSや留学でロンドンにいらっしゃる方の目的はそれぞれだと思いますが、一応僕はこんな予算でも、日々を楽しんで生きています。ロンドン生活についてのブログはコメント欄を解放してみたので、質問があったら、お気軽に~!

    浮いたお金は、定期預金(6%も利息が付く!)に入れて、旅行したくなったり、演出のワークショップに通いたくなったり、体調を崩して働けない時に備えて貯金しています。ただ4.2%のインフレが進んでいるので、単純計算すると同じ生活しても来年には£1,305になります。バクバク。

    たくさん消費しなければ、その分働く時間を減らせて、勉強や読書、そしてこうやってブログを書く時間が作れるので幸せです。そんな気持ちが気になる方は、よかったらこちらの記事も読んでみてください。

    イギリス生活御用達アプリ

    イギリス生活や海外生活で使うあれこれには、友達紹介でもらえる特典が多いので、もし下記のリンクを使っていただけたら、僕もあなたも特典があるので生活が潤います。ちなみに、各サイトやアプリの使い方は「○○ 使い方」で素晴らしい記事たちが出てきます。

    WISE:とても安いレートで海外送金できる。ちょっと複雑だけど海外生活や旅行に必須なアプリ。デビットカードも作れるので、海外旅行の際にもお勧めです。 紹介リンク経由で75,000円分の送金手数料が無料になります。

    MONZO:イギリス在住者向けの無料で作れるオンラインバンクです。給料の振込口座として使うと1日早くお給料を受け取ることができます。お互いに£5もらえます。

    giffgaff:日本に無料でSIMを送ることができます。そのため現地に着いた瞬間からスマホを使えるのでとても安心しました。このリンクからの申し込みで、お互いに£5獲得できます。

    もし、この記事書き手の天羽尚吾を知らないよ~という方がいましたら、作品をご覧いただいたり、Instagramをフォローしてもらえたら嬉しいです!