イギリス演劇50本総まとめ

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配信も含め50のミュージカルや演劇を観ました。基本的に、劇場に楽しみに行くというよりは、インスピレーションを得たり、観客の反応やプロデュースの方向を探るような感覚で通っているので、あまりワクワクしないというか、身もふたもない感想が多いことをお許しください

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1 Frozen the Musical ★★★★☆

ハンスやクリストフとの愛欲より、エルサとアナの愛や、エルサのアイデンティに焦点が当たっているように感じて、クィアな演出に感動。

2 The Burnt City by Punchdrunk ★★☆☆☆

前回ロンドンに来たときに衝撃を受けたイマーシブ劇団Punchdrunkの新作だったが、大味になり、観客の楽しみ方が偏り始めてきていること、俳優が観客に絡む演出など、苦手だった。

3 Hamilton ★★★☆☆

正直物語は、ホモソーシャルだし、決闘はするな、都合よく女性を描くな。なんだけど、パフォーマンスが凄すぎて(しかもロタリーで最前列が当たって)前半40分くらいずっと泣いてた。You’ll be backでも泣いてたので、キングジョージに怪訝な目をされるファンサ貰った。

4 Sunset Boulevard ★★★★★

Jamie Lloydのカメラを大胆に使ったモダンな演出。「この作品って既にオールドスクールだし、ハリウッドの資本主義ってねぇ」を逆手にとって、老いとかエゴの輪郭をビシッと描いていて最高でした。

5 My Neighbor Totoro ★★☆☆☆

家族で観れる新作演劇があまり成功していなかった中で、多くのアジア人キャストを集め、組織的な人種差別から立ち上がろうとするバービカンが創った意義は大きい(が、しかし…)。プロダクションとして評価をするが、そもそもとなりのトトロを演劇にする際にセリフが必要なのかとか、芝居の流れとムーブメントの断絶、突然の歌唱シーンなど、美しくなかった。

6 Crazy for you ★★☆☆☆

1992年のブロードウェイミュージカルで、コメディの手数が多いし、パフォーマンスは洗練されていたが、女性がモノとして消費されている感が凄くて、92年ってこんな感じだったのかと驚いた。「踊りがあれば幸せ」ではないというか、踊れる環境自体、どれだけ恵まれてるかみたいな批判的視点が欲しい。

7 DEAR ENGLAND ★★★☆☆

スラングや、アクセントが分かり切らないことも多く結構悔しかった。テッドラッソを観た後だと既視感を覚えてしまうが、会社帰りに同僚と来るような新規層も獲得したらしく、素直にすごいと思った。サッカーの演出は、2.5次元でもっと高度な演出を観ている。

8 Show Stopper ★★★☆☆

即興のミュージカルショー、休演日の月曜日にマチルダの劇場を借りて上演されている二毛作が面白い。ミュージカルの教育やcommon senceがあれば、こういうことが可能なのかと爆笑したし、なんか近しいことはいつもやっている気がする。しかし、パフォーマンスとして成立している実力とシステムが凄い。笑い転げた。

9 Pacific Overture ★★☆☆☆

太平洋序曲は、高校生の頃に大好きなミュージカルだったが、今はこれをどうやって観れば良いのか、兎に角、植民地支配への批判が足らず、目新しさも無く、ステレオタイプを助長する、多くの課題を残すミュージカルだった。しかし、どうやったら演出できるのかと言われたら、新作ミュージカルにしちゃだめですか。と答えたい。

10 Cold War ★★★☆☆

映画が原作の舞台。ステージングがスムーズで美しかったが、映画の印象を超えない。音楽も映画のほうが多様だった。この舞台の上演がいつ決まったのかによるが、イスラエルやロシアによる戦争がすぐ隣で起こっている中で、演劇の意義がぼやけた。

11 Cabaret at the Kit Kat Club ★★★★★

唸らされた新演出のキャバレー。ブロードウェイにトランスファーもしましたが、物語と歴史、その新解釈と、衣装の美しさ、キャストの個性、劇場に入った瞬間に始まるイマーシブな経験から、照明までが複雑に絡み合った総合演出が見事。友人が「あんなにクィアだった人たちが社会主義に飲み込まれる。社会主義側からはある種のハッピーエンド」と言っていて、それを目の前で体感させる威力が半端ない。

12 Six The Musical ★★★★☆

キャストレコーディングを何百回も聴いているので、ライブに行く位の感覚でしたが、会場全体で「We’re SIX!」となれる時代・場所に生まれて良かったと思うし、じゃあその次の為に協力して戦わないとなと、奮い立たされた。日本版SIX行きたい。自分で訳してた歌詞について

13 Guys & Dolls ★★★★☆

観客が俳優と同じ場所に立つことが出来るイマーシブシアターとして作られていて、中央にあるセリによって舞台がどんどん変化します。僕はお金払って舞台に立ちたくないので席に座って観ましたが、Daniel Mays演じるネイサンの派手じゃないのに機敏なムーブメントがセクシーで、スカイがゲイと踊っているところをサラが嫉妬するなどの丁寧なアレンジが相まって完成度が高かった。

14 The Faggots and Their Friends ★★★★☆

カルト的な詩と物語から生まれたコンサートのようなショーのような演劇のような時間。この抽象的な作品を満杯の観客で観られた幸せ。

15 WICKED ★★★☆☆

感想はブログに

16 BEFORE AFTER ★★☆☆☆

日本で何度も上演され、今回が初めてのステージでの上演となった二人ミュージカル。美しいメロディーがたくさんあったが、単なるラブストーリーにあまり興味は無いし、演出やアレンジも冴えず、何を意図して上演したのか分からなかった。

17 Everybody’s Talking About Jamie ★★☆☆☆

‘And You Don’t Even Know it‘なんて、擦り切れるほど聴いていたので楽しみにしていたのだけど、ほんとに過去のミュージカルに触れて育った人が作った作品か?と思うくらい、映像演出や、曲の導入、そしてジェイミーが学園内で権力を手にして人を傷つけるために使ってしまうストーリーが残念だった。ディーンがかわいそうすぎる。

18 Operation Mincemeat ★★★★★

出会ってしまった。フリンジから駆け上がって、オリヴィエ賞を受賞し、今度はブロードウェイに漕ぎ出すブリリアントな作品。正直、ナショナリズムや行ってきた植民地支配への視点が欠けていて、顔をしかめるところもあるのだが、5人の俳優が性別や年齢を超えて演じる創意工夫のある演出や、巧妙な音楽、一番「おもしろい」作品だった。

19 INK ★★★☆☆

パパイオアヌーの新作だったが、前作のほうが複雑で好み。

20 King and I ★☆☆☆☆

ステレオタイプなアジアの描き方や、植民地支配への批判のなさ、何故この作品が演出を変えずに上演されているのか、しっかりとダメな作品だった。Blueskyでの感想

21 Shrek The Musical ★★★★☆

ディズニー映画のミュージカルを、よく吸収した上で、アレンジを効かせた良作アダプション。シュレックのソロ曲終わりに観客が拍手したのに「ケッ」ってはけたところがかっこよかった。

22 MJ the Musical ★★☆☆☆

音響は最高で、パフォーマンスは上手だったけど、マイケルジャクソンの新しい側面を描いていたわけでもなく、権力を持った状態でパワハラ気質っぽいところなど、今この人をショウアップさせて、何がしたいのか。ストーリーが凡庸だった。

23 Standing at the Sky’s Edge ★★★★☆

60年の時を交差させながら、イギリスの郊外にある団地に住む人々を描いたミュージカル。ポップで詩的なナンバーと、繊細でパーソナルな話が好みだった。でも悲しさの中心は殺人事件にしないほうが良いと思う。

24 The Seagull ★★★★☆

サンセット大通りのジェイミーロイドによるかもめ。B級感を楽しみつつ、テーマ設定が巧妙。

25 Don’t. Make. Tea. ★★★★★

眼咽頭型筋ジストロフィー (OPMD)で足が不自由になり、視力の低下したクレアの下へ、助成金を申請できるかを審査する人が来る。ジョークを言えるくらいなら健康に問題ないはずだと、助成の基準を上回ってしまい、フルタイムジョブを紹介すると言われ、松葉杖で職員を殺してしまう。BSL(イギリスの手話)と俳優の動きを説明する音声、字幕が演劇に組み込まれていて、素晴らしい体験だった。ことあるごとにこの芝居を語っている。

26 Operation Mincemeat [2nd]★★★★☆

初めての2回目の観劇だよ。イギリスで。新キャストで3回目も観たけど、えぐみが減ってしまった。ハーモニーは綺麗。

27 Two Strangers (Carry a Cake Across New York) the Musical ★★★☆☆

二人芝居のミュージカルで、大きなストーリー展開は無いのにキャラクターの描写がユニークで引き込まれる。

28 MOULIN ROUGE THE MUSICAL ★★★☆☆

友達と観にいったら、誕生日祝いにワインを開けてくれて初めてミドルクラスのように芝居を観ましたが、大正解。これはワイン片手に笑って盛り上がって観る、くだらなくて面白いミュージカル。クリスチャンの歌が上手すぎて、君が歌姫。Blueskyの感想

29 Sister Act The Musical ★★★☆☆

キャストの歌唱力のバランスが断トツで、ダンスがしっちゃかめっちゃかでも満足度高かった。

30 HEX ★★★☆☆

母親のリアルな悩みがおとぎ話に組み込まれているのは良かったが、棘が無い。

31 HADES TOWN ★★☆☆☆

すごい楽しみにしていたんだけど、ストーリーがつまらなさ過ぎて、粗ばかり気になった。オルフェウスが中音域が綺麗な人で、彼が作曲したという設定の高音域メロディーとマッチしてなくて、音楽家の道諦めたほうが良いよ…となった。せめて、主人公カップルをレズビアンにするところから出直しておいで。

32 Splited Away ★★★☆☆

目を見張る美しいシーンがたくさんあるので、わざわざアニメを再現しなくても良いのにと思った。アンサンブルワークや舞台セットが美しく、バランスが良かった。でもたぶんもっと笑えるシーンが無いとBritish観客は満足しないと思う。

33 Les Misérables ★★★☆☆

レミゼを初めて観た。新演出(とはいえ10年くらい経つんだろうけど)っぽい1幕終わりの振り付けとか、ジャベールの浮遊には唐突と思ったけど、死んだ同志たちが蝋燭消すのはカッコよかった。進撃の巨人ミュでもやってほしい。それにしても白人男性が書いた女性像だな…。今や名作というほどじゃない。

34 Viola’s room ★★☆☆☆

イマーシブ劇団Punchdrunkの新作は、ヘッドホンを装着し、セットの中を歩いてゆくプロダクションだったが、アトラクションのQラインみたいな感じで、人の息吹が感じられず演劇とは感じられなかった。新しい手法を実験したのは面白いけど、演劇の歴史を変えたような劇団もこんなに分かりやすく迷走する事実のほうが面白い。これなら美術館でオーディオコメンタリーを聞いていたい。

35 Marie curie ★★★★☆

韓国で作られたアダプション。非常にバランスが良かった。韓国がイギリスの伝記ミュージカルを創って持ってくるってすごい切込みで、私はとても好き。Blueskyの感想

36 The little big things ★★★☆☆

disableになった自分は自分自身を受け入れてて、ableだった自分が受け入れられないという構成が、良く練られていたミュージカル。感動するし、周りのサポートが強く、ポジティブな気持ちになれる。ただ良く出来ているからこそ、白人の割と裕福な中流家庭ありきな人生に、疎外感も覚える。

37 Next to Normal ★★★★☆

双極性障害に苦しめられる女性とその周囲を描いた作品で、その象徴として登場する息子の幻影が恐ろしくてグロテスクで、心を抉られた。2幕の怒涛のリプリーズや、ラストの現実的な終着点含め、素晴らしかった。キャストのバランスも良く、映像収録されていたので、配信でも見れないかなと期待。

38 Harry Potter and the Cursed Child Act 1 ★★☆☆☆
39 Harry Potter and the Cursed Child Act 2 ★☆☆☆☆

あれだけトランス差別を繰り返している著者が青年同士の愛を描くって、どうしようもないなと思いながら、長い鑑賞に耐えた。色んな特殊効果はあるものの、それらが日常なのがハリポタの面白いところで、演劇鑑賞としての快感にはつながらない。デスイーターと、ケンタウロスのみ、美しかった。

40 Kathy and Stella Solve a Murder! ★★★★☆

殺人事件オタクの2人がポッドキャストを始めたら、本当の殺人事件に巻き込まれて…?!というヘンテコでミニマムな世界で、アンサンブルワークやマイノリティへのコミュニティ感が温かかった。「犯人はあいつだ」以降が全く盛り上がらず、ミステリーの難しさも感じる。

41 Instant luv noodle ♥♥♥♥♥

友達の宮野つくりさんが書いた作品で、ドタバタコメディと、心情に迫るギャップが愛おしい作品。

42 Slave Play ★★★☆☆

アメリカの初演では上演中止署名運動が起きるほどの問題作。しかし、今、ロンドンで観るとパンチが薄れてしまっている。Get Outが上映された翌年にアメリカでこれを見ていたらもっと印象が違うのは分かる。社会のありようは急速に変わっている。

43 Why am I so single? ★★★☆☆

SIXのクリエイター陣による新作が、まさか面白くないなんて思いもしなかった。パジャマパーティーをのぞき見しているような作品で、パフォーマンスは圧巻、曲も良い。だけど、大きい劇場で観るミュージカルとしての満足度が低く、ストーリーの吸引力が弱かった。クィアの中でも一部の人しか巻き込めていないような気がする。

44 Kiss me kate ★★★★☆

流石に古い作品なので、展開はゆるく退屈なシーンもあるが、回転式の舞台と元の脚本にあるミソジニーを皮肉り、メインではないものの圧巻のダンスシーンで同性同士のペアダンスがあったり、画期的ではないが良質なリバイバル。

45 Mean Girls ★★★★☆

学校の序列に参加しないクィアがクールな語り手となって、誰がMeanなのかを突き止めるのではなく、構造を解体することに着目しているのも良かった。Caseyの振り付けは、音楽との一体感を生むでも、新しい解釈を与えるでもなく、終始ごちゃごちゃしてて酷かった。(去年トニー賞獲ってましたけど)

46 One Small Step ★☆☆☆☆

俳優の緊張感のある芝居と、セットデザインは良かったが、意図の汲み取れない演出、退屈なのに意義もない物語が残念だった。日本語の脚本で観たら異なるかもしれないが、女性が子供を産む・産まないという話に、何故職場が絡んでくるのかはイギリスでは理解されないだろうし、日本だとしてもそれを問題にすべきで、夫婦喧嘩として見せるものではないのではないか。

47 LOVE BEYOND ★★★★☆

この芝居を観るためだけに飛行機に乗り、スコットランドのGlasgowへ。手話使用者で認知症になった男を描く。パントマイムや鏡を使った舞台でしか味わえない演出が素晴らしくて、緊張感、慈しみ、エキサイトメントのバランスが上品、ストーリー自体はややオールドスクール。そして、この劇団がKAATと共同制作する『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』が11月に神奈川で上演。イギリスで観るためにはもう一度グラスゴーに行かなくちゃいけないのか…。

48 The Lefman Trirogy ★★★★☆

今更私が語らなくても…上の方の席で観ると、舞台セットの天井によって何も見えない時間があります。

49 The Curious Case Of Benjamin Button ★★★☆☆

映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」と同じ原作をミュージカルにした作品。出演者全員が演奏家でもあり、臨場感のある音楽経験が楽しい。このミュージカルがBESTになる人もいるだろうが、個人的には佳作の域を超えない。この設定ならもっと面白い演出や物語の展開があるはず。

50 Macbeth ★★★☆☆

観客はヘッドホンを付けて、バイノーラルサウンドを使った演出を目撃するマクベス。魔女が耳元にいるような感覚、策謀するささやき声が、映画と演劇の中間のような緊張感を生む。これまで、シェイクスピアは英国アクセントでないと。と考えていた節があったが、マクベス夫人を演じた俳優のCush Jumboによるナイジェリアアクセントもまた素晴らしく、戯曲読解や言葉の意味の知識は必要だろうが、どんなアクセントでも魅力的になりうると確信。


UKの演劇界を知れば知るほど、自分のスタンスも変わってくるし、何より良かったのは別にロンドンの舞台だからって全部面白いわけじゃないというのが確信できたこと。NTliveを観ていたときは、もっと崇高なものだという心構えの上で観ていたかもしれないし、なんならただ戯曲が面白い(字幕を読むだけで楽しい)だけだったものもある。演劇やオペラをもっと観劇したいなと思いつつ、こんな身もふたもない批評に付き合ってくれる友達はいつでも探しています。もし、もっと詳しく感想を聞きたい作品などありましたら、お申し付けください。

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  1. 真奈美

    沢山観ておいでですね。
    私は可憐なメイドさん役の天羽さんを観て女性だと思っていました。演技力の賜物ですね。

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