これまでの人生、ずっと自転車操業をしていて、総残高が増えることは無かった。バイトをしては生活費に消え、俳優としてのギャランティが出たら、観劇費用や自主製作の作品に消え、スマホが壊れては、買い直した。ロンドンに渡るときは、ビザ申請や航空券、今も続く円安が相まって、銀行を覗くのが怖かったけど、生活の基盤となるバイト先や家を見つけてからは、何とか落ち着いた。家は何度か失いましたが…。
とにもかくにも、普通に働きつつ全然贅沢をしなかったことで、1年で10,000ポンドが貯まった。190万円くらい。ヨーロッパ旅行に一切行っていないし、出来る限り外食はしない。持って帰るのが大変だからと服も買わず、交通費節約のためによく歩く。観劇は一番安い席を買い、幕間のアイスクリームも我慢している。お金を使うことに慣れなければ、憧れるものを変えれば、意外と成立するんだな。と、ある種の実験でもあったけど、全然おススメはしません。ひもじい。
初めの頃は、週に35時間程度働いていたが、昇給したのもあって、30時間に減らし、先月から20時間に減らした。流石に週20時間では生きていけないので、貯めた1万ポンドを切り崩す所存だ。というのもまあ、2025年の夏にはビザが切れるし、バイトする為ロンドンに来たわけじゃないから、家計簿と睨めっこして、創作と勉強のために勇気を出して得た時間。正直、ちょっと怖い。今後も安定してお金が入ってくる予定は日本にもUKにもないし、右肩上がりの銀行口座を見るのは初めてだった。
よく、こっちで活動している日系の演劇人とも話す。あわよくば、演劇系の仕事をロンドンでゲットできたらと思ってはいるけれど、ポッと来て、英語もまだ勉強しているような自分が、複数のアクセントを使い分け、言語の奥底にあるニュアンスを理解し、かつ演劇の英才教育を受けてきているアスリートのような人たちと肩を並べるのがどれほど難しいか実感する。
ただ、東アジア人を探しているオーディションなら審査に残りやすいし、信じられないほど歌がうまかったり、ダンサーやフィジカルシアターの技術、衣装や照明のようなスキルと経験、もしくはそういった大学に行っていれば、話は違うだろう。ただ、グローバルタレンテッドビザというアーティストとして、こちらに残るビザを申請しようとするなら、UK以外での活動実績も必要なので日本でキャリアを積んで来て良かったとも言える。けれどそれは、運というかタイミングというか、特権というか、どこで生まれ育って、どんな環境に身を置くかまで人生をコントロールするのは難しいし、個人の努力でなんとかできる範疇を超えているとも思う。

先日、NOW LOADINGを演劇プロデューサーたちにプレゼンテーションする機会に恵まれた。300作品との熾烈な競争に残れたら、今度は劇場で短いパフォーマンスができる。そこでプロデューサーや劇場とコネクションを作れたら、小さなスタジオでワークショップ公演してみるか。みたいな話になるかもしれない。お客さんを集めて公演を主催する前に、試演して、フィードバックを貰いながら、創作が出来るシステムがあるのは、こちらの演劇業界の気に入っているところ。しかし、英国人にウケる舞台という大きな壁にもすでにぶち当たっている。まあ、現実はいつも想像を超えるので「We’ll see.(さて、どうなるかね)」ですね。
それに比べると、本を読んだり、演劇を見て学んだり、ブログを書いたり、日々健康に過ごそうとすることって、地味だけど一つ一つ積み上げて、世界が広がってゆく、もしくは感覚が研ぎ澄まされてゆくような感覚があるし、どういう道にたどり着いても、私を形成するものになるだろうから「確固」って感じがする。
そんなこんなで余裕のある時間を始めてみたら、大学院やWSの情報をきちんと探す時間ができて、受講したくなってきたけど、突然18,000ポンド(360万円くらい)の授業料でーす。ビザ費用と生活費はもちろん別でーす。とか言われるので、1万ポンドでも、切りつめ生活でも、太刀打ちできないのでありました。
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